zames_makiのブログ

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原爆の子(1952)抑えた語りの原爆映画

英語題名:Chidren of Hiroshima 英国公開:1953年 アメリカ公開:2011年
メディア:映画 上映時間:100分 製作:近代映画協会=民芸 配給:北星映画社 公開:1952/08/06
監督:新藤兼人 製作:吉村公三郎、山田典吾 脚本:新藤兼人 音楽:伊福部昭
出演:
乙羽信子(石川孝子)5年ぶりに広島の教え子と再会する厳島の小学校の先生、自身も被曝、父母を失う、当時は幼稚園の先生
滝沢修(岩吉爺さん)孝子の昔の家の使用人、顔半分にケロイドをおう、被爆で盲人になり乞食で食べている、城跡でバラックに住む
北林谷栄(おとよ婆さん)岩吉の隣人、親切
伊東隆(太郎)岩吉の孫、岩吉の家族でたった一人残る、孤児院にいる
山内明(孤児院の所長)孤児院の状況を話す

斎藤美和 (森川夏江)孝子の幼稚園時代の同僚、広島で孝子が泊る、被爆で子供が産めない
下元勉(夏江の夫)陽気な夫、養子の相談をしている
佐伯一幸(芳夫)孝子の教え子1、父の危篤の報にあう
鳩尾謙之助(三平)その兄、靴磨き、父の危篤の報にあう
伊達信(その父、早吉)危篤から死ぬ
高野由美(その妻、千代)その妻、怒る
山岸敏子(山中ツネ子)孝子の教え子2、父母を亡くし教会で暮らす、原爆病で病の床にある
小夜福子(教会のシスター)
大藤真哉(平太)孝子の教え子3、元気に川で遊んでいる
宇野重吉 (平太の兄、孝司)孝子を銭湯に誘う、話す
奈良岡朋子(平太の姉、咲枝)結婚する、被爆で足が悪い

殿山泰司(船長)帰りの船の船長
東野英治郎 (馬喰)船で乗り合わせる
細川ちか子 (孝子の母、せつ)原爆投下の場面のみ、死ぬ
清水将夫 (孝子の父、利明)原爆投下の場面のみ、死ぬ

感想

記念碑的な日本最初の原爆の被害を訴えた原爆映画。大部分は戦後7年目の原爆病に苦しむ被曝者、家族を失い健康を失い精神的にも実生活でも苦しむ被曝者の姿が描かれる。原爆投下直後の惨状は再現する金がないため(監督談)短い象徴的映像で示されるだけだ。主人公も家族を失った被曝者だが映画内では観察者の立場で被曝者の苦しみを見るだけであり、5つの被曝者のエピソードを順番に提示するだけでいささかドラマ性に欠け、細かい恐怖や悲しみなどは表現されていない。主人公が関わるドラマは原爆孤児のエピソードだが、孤児院の所長のインタビュー場面があり問題が強調される一方、映画内の物語はひどく感情的なもので、原爆問題、被曝者の問題全体をうまく表現できていない。
 事実上最初の原爆であり、公開当時は原爆被害自体が知られておらず、多くの観客が感銘を受け、大ヒットし、多くの賞賛を受けた。占領下では原爆被害はGHQに禁止されており、当時においては原爆をとりあげること自体が勇気がいた、また悲惨な話出あり興行的に不利であり、その点でも製作しただけでも賞賛すべきだろう。
 テーマや描写に多少の内容があっても歴史的経緯を見れば日本映画史に残る賞賛すべき映画である事には変りはないだろう。