zames_makiのブログ

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天狗倒し(1944)娯楽性による国策映画

英米を悪人とした娯楽&国策劇だが、細部なく完全な失敗作
複数の鞍馬天狗が登場する異色作。複数といっても、最後に顔が大写しされることで明らかになる本物の鞍馬天狗は一人で、あとは偽物という設定。斎藤達雄、南光明らが外国人に扮する。また、桑野通子の妹役を演じるのは京マチ子で、これが映画デビューである。
(67分・35mm・白黒)'44(松竹下加茂)(監)井上金太郎、小坂哲人(原)大佛次郎(脚)比佐芳武、秋篠珊次郎(撮)齋藤正夫(美)中大路義一(音)東重郎(出)佐分利信細川俊夫、酒井猛、澤村國太郎、尾上菊太郎、坂本武、外松良一、齋藤達雄、南光明、桑野通子、山元智恵子(桃園かぐや)、矢野元子(京マチ子

感想

鞍馬天狗を題材に悪人を英米オランダ悪徳商人に設定、それに虐げられている奴隷や雇い人に中国人を設定、日本人の鞍馬天狗がこれを倒すという、娯楽による国策宣伝を行ったもの。だが、幾人もの天狗が現れ、あっちこっちでいきなり乱闘する筋立てがうまく演出できておらず、筋立て不明、意味不明、英米がどれだけ悪いかも不明、従ってラストで勝利しても開放感・高揚感・英米への憎悪なし。あー終わったなんてもので、ただの下手な三流娯楽映画である。
 当初の齋藤達雄の悪徳オランダ商人の際立ち度合いなどよいので、きちんとした物語あれば面白いのでは?なぜ中国人が奴隷なのか?なんで日本で奴隷集めるのか?奴隷の悲哀とか虐げられた者の描写まったくなく、意味不明なり。
 天狗が何人も現れるのも同じか否か自体が不明であり効果薄い。ラスト中国人雇用人が天狗見送るシーンはそれなりによい。
 「悪人を英米に設定する」アイデアのみでそれを実際に展開する物語の創造性と演出に欠けた失敗作。だがこれをもってこうした娯楽性と政治性の融合自体の失敗ととるべきではない、成功作「阿片戦争」を見習うべし。

上映 NFC

2/26(水) 4:00pm 3/8(土) 11:00am 3/14(金) 4:00pm