zames_makiのブログ

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激闘の地平線(1960)自衛隊宣伝映画

東宝 公開:1960年10月15日 91分
監督:小森白 脚本:七条門 音楽:松村禎三
出演:
松原緑郎(主人公)暴走族から自衛隊に入る、厳しいレンジャー訓練を経て立派な自衛官=人間になる
三ツ矢歌子(女性自衛官)主人公があこがれる女、恋愛対象であり求婚するが拒否するが、最後はOK
沼田曜一自衛官)レンジャー訓練の教官、三ツ矢歌子の婚約者でもある

感想

東宝による自衛隊宣伝映画、物語構成に失敗しており、又娯楽的にすぎ自衛隊の宣伝としては失敗してる可能性がある、乱暴な主人公が訓練で人間的に目覚めるという大枠より、目先の葛藤や勝利に気を取られただの若者の逸脱や冒険に見える。目玉である崖を降りるレンジャー訓練はあまり派手さはなく面白みに欠ける、中の下。
 自堕落な若者が自衛隊の訓練で人間的に成長し立派な自衛官になる、という大枠を目指しているが、動機が物語で説明されていない。暴走族(ビート族)の主人公の自衛隊入隊動機がきちんと説明されておらず、好きになった女性自衛官目当に見える、更に自衛隊には入っても人間的変化はなく、むしろ退職金目当ての同僚と麻薬を盗もうとし、目当ての女を強姦しようとするなど、むしろ堕落していく。更により厳しい訓練であるレンジャー訓練を行う動機はまったく説明されず、最大のポイントであるクライマックスでの実地訓練中での崖の降下にいたる物語は、説明が欠落しており話がつながらない。この為崖降下で失敗しても、教官による救出の意味も不明で、最後に教官から一人前の自衛官に認められる大団円へ至る筋が追えない。最後では主人公は目当ての女性自衛官を手に入れるが人間的成長より単なる悪人の成り行きに見える。
 初期の自衛隊宣伝映画であり、自衛隊はレンジャー訓練の場を提供し、新東宝側は訓練の場面を撮影したが、合目的脚本を作るのに失敗したと推測される。物語や主人公の性格設定は新東宝の一連の娯楽映画と同じで、犯罪者の自堕落な没落に見える。注目すべきは、退職金目当ての先輩自衛官が登場し主人公を自衛隊内での窃盗や強姦犯罪に誘う展開がある点で、社会から認知されていない自衛隊の大きな譲歩により映画が製作されている。その他の場面でも自衛隊への共感や支持の雰囲気はなく、小森白など新東宝製作陣にも、自衛隊に対し特別な感情はなかったのではないだろうか?