zames_makiのブログ

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ハイドリヒを撃て!(2016チェコ)真実の戦争の苦しさ

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦(2016)
原題:ANTHROPOID 120分 製作:チェコ/イギリス/フランス 公開:2017/08/12
監督:ショーン・エリス
脚本:ショーン・エリス、アンソニー・フルーウィン 音楽:ロビン・フォスター
出演:キリアン・マーフィアイルランド人(ヨゼフ・ガブチーク7人の潜入者の1人=主人公)
ジェイミー・ドーナン(ヤン・クビシュヨゼフ・ガブチーク7人の潜入者の1人)
シャルロット・ル・ボン(マリー・コヴァルニコヴァー=かわいい女協力者)
アンナ・ガイスレロヴァーチェコ人(レンカ・ファフコヴァー=いかつい女協力者)

感想

1941年チェコでおきたドイツ軍による過酷な市民圧政を描いた戦争映画。描写が生々しく被害を切々と訴えるもので迫力がある、星3つ。監督や主演俳優は英米系だが、チェコの人々の被害がテーマであり、実質的にはチェコ映画と思われる。これは2007年のエストニア映画「バトル・オブ・リガ」(DEFENDERS OF RIGA)以降の英米以外の欧州小国(デンマークフィンランドエストニア、オランダなど)に続く、”欧州小国の戦争”を描いたその国目線による戦争の映画と思われる。この映画の場合、題材は有名なドイツ軍の指揮官暗殺事件であり、過去にも「死刑執行人もまた死す」(1943年)で映画化されているようだが、けして娯楽的でない事、あくまで殺されるチェコ人の様子を真面目に描く事、物語的な盛り上げをせぬ脚本などがそれを示している。こういった映画は日本の戦争映画や戦争ドラマでよく見られるスタイルであり、なんらかの理由で欧州の小国も自国目線の映像ドラマを作れる力がついたであろう。(力=心理的な戦後状態からの回復、経済的余裕、ある種の流行など)この映画の場合特にナチ高官を暗殺する話であり、容易に娯楽的な盛り上がる物語になりうるものを、「遠地亡命政府からの一方的な命令でなぜ危険を冒さねばならないのか?」「目的は亡命政府を英米に認めさせる事=圧政への抵抗ではなく政治という矛盾」「ナチ高官を殺せばよりチェコ人への虐殺が広がる事への恐怖」「裏切り者への恐怖」「神父さえもレジスタンスをかくまうことを拒否する現実」などが少なくとも台詞では述べられており、チェコ人の目線(対語は英米人の興味本位・娯楽本位の目線)の映画である事を示している。例えばこの映画は明らかに潜入して殺された7人のレジスタンスを記念追悼しているが、同じ文句を決定的娯楽戦争映画「大脱走」ではラスト字幕で「50人に捧ぐ」(50人はドイツ軍収容所から脱走して殺された英米兵)と示す、しかし画面には景気の良いマーチ風音楽が流れとても真面目に50人を追悼しているとは思えない。チェコに潜入したレジスタンスがいきなりチェコ人によってドイツ軍に売られそうになるシーン、レジスタンス同士が相手が本当にレジスタンスか疑う場面、弱々しい音楽少年がドイツ軍の拷問で口を割る残酷な場面、神聖な教会がドイツ軍により問答無用に無残に破壊されていく場面など心が痛む場面が多く、戦争の真実をよく描写していると感じられる。原題はレジスタンスの作戦名=「類人猿」でありそっけない。