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鳩山VS麻生の党首討論をテレビはどう伝えたか(続)

これは2009年5月27日行われた鳩山VS麻生の党首討論をテレビの報道番組がどう伝え方の前回記事(http://d.hatena.ne.jp/zames_maki/20090528#c1244037562)の続きです。本項では討論が行われた5/27および5/28の毎日放送されているニュース番組ではなく、週末の1週間の事件をまとめて伝える番組、討論番組などの状況を示す。


党首討論を扱った次の報道番組・情報ワイドショーについて述べる。情報ライブ ミヤネ屋(NTV)、みのもんたのサタデーずばッと(TBS)、田勢康弘週刊ニュース新書(TX)、時事放談(TBS)、サンデーモーニング(TBS)、サンデー・ジャポン(TBS)、サンデースクランブル(EX)、サキヨミLIVE(CX)、新報道2001(CX)、日曜討論NHK)、サンデープロジェクト(EX)、朝まで生テレビ(EX)、ビートたけしのTVタックル(EX)、

概要

 番組の内容は全般に5/27の討論直後の報道番組・ニュース番組と同様の傾向だ。編集VTRで討論のやりとりを紹介し、党首討論が激しい対立だったと紹介し、西松問題での激しいやりとりを示す、一方討論の政治的内容についてはほとんど触れない。ナレーションや字幕で対立が強調され、特に野次が激しかった事を伝えている。スタジオコメンテーターのつけるコメントも同様であり、主に野次について注目しうるさい・子供に見せられないとして批判的に述べる事がほとんど(英国も同様だなど例外もある)。コメンテーターが討論内容について正面から論評するものはほとんどない。
 討論直後の報道番組・ニュース番組との違いは、(1)抜粋VTRが短い。これは討論の内容をそのまま伝えるよりも、最初から討論への番組の見方を伝えるためだろう。それは内容がなくて野次がうるさいというもの、(2)討論内容より野次への注目がずっと大きい、(3)スタジオコメントで討論議題について議論する場合がある、などである。
 なお週末に北朝鮮の核実験があったので討論番組ではそれがテーマとなり党首討論が小さな扱いとなったという一般的でない状況がある。

党首討論を報じたテレビ各局各番組の紹介・短評

(1)5/28午後・6/1夜の情報ワイドショー:

  • 情報ライブ ミヤネ屋(NTV):鳩山は理念・麻生は具体論だとまとめ、政治と金の問題で激しく対立したとした。採点は木原誠二自民党)、渡部恒三民主党)、鳩山邦夫ら政治家によるものを紹介。評論家コメントは歳川隆雄の鳩山は60点、麻生は40点で鳩山に軍配を上げたが鳩山は、西松問題で惑いの表情を示し麻生の攻撃は効果的だったと評価した。岩田公雄読売テレビ解説委員)はこれでは結論は出せない、崔洋一(映画監督)は鳩山の惑いの表情は逆に国民に支持されるだろう、飯星景子は西松問題は関心事ではないと強く言った。全体によくないが何回もやればよくなるとの雰囲気だった。〜この番組の話題は芸能や社会事件が中心であり、政治の扱いは頻度は低く短い、しかしその扱いは自民党にやや優しい態度だ。これらの特徴は政治報道への日本テレビの姿勢をよく反映しているように思われる。
  • ビートたけしのTVタックル(EX):党首討論は鳩山氏の友愛か麻生氏の対立路線の対決だったと紹介。屋山太郎(政治評論家)は友愛は武士道の真髄だとして鳩山を応援するVTRコメント。長島昭久民主党)が友愛を説明、関西局ではかなり自民党よりのコメントをする勝谷誠彦(評論家)も支持した。三宅久之(政治評論家)はどっちもダメ、ビートたけしは貶しあいをしただけとした。屋山太郎は西松問題は国民の関心ではないと言っている。全般に討論内容には触れず批判的放言を投げ出すだけの印象だ。〜与野党の政治家が出演・議論し、時に非常に激しく喧嘩腰になる最も「小泉劇場」的な番組。しかし構成として議論の決着を見せるものではなく、ただの放談に近い。他局ではかなり自民党よりのコメントをする三宅、勝谷がここではそうしたそぶりを示さないのはコメンテーターと番組の関係を考える上で興味深い。全体印象は2008年夏以降は自民党側が劣勢である。


(2)週末の週間ニュース番組:

  • ウェークアップ!ぷらす(土曜、NTV、 8:00より):未見(言及あり)
  • NHK週刊ニュース(土曜、NHK、8:30より):未見(言及あり)
  • 情報7days ニュースキャスター(土曜、TBS、22:00より):抜粋VTRで政権交代での対立部分を強調して示す。討論自体よりも祖父(吉田茂×鳩山一郎)の対立を長くVTRで紹介。4人の政治が専門でないコメンテーターは内容はない野次が煩いとコメント。ビートたけし西松建設問題は関心事ではないとした。〜週末にその1週間の主な事件を伝える番組だが、事件を正面からは扱わず、ビートたけしが極端に茶化すなどして斜めに面白おかしく伝えるもの。この党首討論についても討論内容には一切触れなかった。
  • 時事放談(日曜、TBS、6:00より):長老格の政治家2者の意見を聞く番組。野中広務(元自民党)は勝ち負けなし、民主の驕りが出ている、小沢一郎は引退すべきだ、小沢院政が続くのは悲しい、民主内でも不協和音が出るだろうとした。増田寛也(政府関係者)は、1回限りでは判断つかない、毎週やってほしい、小沢一郎党首討論を無視するのはおかしい、選挙の戦術だけじゃだめとした。〜純粋に引退した政治家の意見を聞くだけの番組であり出演者によりその内容は変わる。
  • サンデーモーニング(日曜、TBS、8:00より):抜粋VTRで野次がうるさい、鳩山氏は官僚批判したとナレーションで細かく討論内容を説明。浅井慎平は麻生は軽い・レベルが低い、国民不在だ、田中優子は麻生がしてるのは人気取りだけだと厳しく批判、選挙でましな方を選びたい、中西哲生は論理でなく感情が表にでた発言で残念、岸井成格毎日新聞)は北朝鮮問題などトップが本来すべき議論をしていない、すれ違いで酷いと批判した。麻生への批判が集中し、多くの情報番組で最も自民党批判の強いものになった。〜1週間の事件をVTRで紹介しそれにスタジオからコメントを加えるだけという明快な形式のもの。
  • サンデー・ジャポン(日曜、TBS、10:00より):抜粋VTRで内容を紹介、西松建設問題が主だったとまとめた。タレントや芸能人が野次が煩い、毎週やれとコメント。東国原英夫(タレント兼宮崎県知事)が政策論争ない、テリー伊藤は麻生が真面目に討論していないと批判した。〜タレントだけが出演し楽しみのために政治事件をネタに面白おかしくコメントする番組。しかしコメント内容はひどく逸脱しないよう慎重に配慮されているように思える。政治の娯楽化番組の最たるものだろう。
  • サンデースクランブル(日曜、EX、12:00から):言及なし〜テリー伊藤黒鉄ヒロシなどの政治が専門でないタレントコメンテーターがその1週間の事件に大胆に意見を言うもの。だが週刊誌的なものにすぎず真面目に受け取られていないのではないか。最初から独特で極端な意見を言うのが予想されており、意見は強いが単なる言葉に終わり、実質の影響力は低いのではないだろうか。
  • サキヨミLIVE(日曜、CX、22:00より):言及なし〜毎回その週の政治事件について視聴者の賛否を電話などでオンタイムで集計、VTRやコメンテーターの意見である見方を明確に伝える番組。伝える意見は政治関係では政府自民党よりであることが多い。コメンテーターに若い俳優(ウエンツ瑛士)や野球選手(長嶋一茂)を使うなどのわかりやすい娯楽性と明快さが特徴だ。政治に関心がなく知識の乏しい視聴者に大きな影響を持つと考えられる番組。


(3)週末の討論番組:

  • みのもんたのサタデーずばッと(土曜、TBS、5:45より):討論をVTRで紹介するも野次が煩い以外の直接の言及なかった。しかし自民(世耕弘成)、民主(福山哲郎)、公明(高木陽介)、共産(小池晃)の国会議員に党首討論での論点についてこまかく議論させ、、みのもんた民主党よりの意見で厳しく締めくくった。これは毎週行われているこの番組のスタイルであり特別ではない。〜毎回現役国会議員が激しい討論をし、みのもんたの介在で明確に結論的なものを示す、最も明快で激しい政治討論番組NHK日曜討論との違いは与野党とも党の方針を決定する責任者は出演せず、どんな意見であっても結局その政治家個人の意見でしかなく党の方針に反映されない事。司会者の態度は公正とは言えないが、与野党議員が十分に意見が表明される点では最も内容豊富な討論番組と言える。2008年夏以降自民党の劣勢は明らかである。
  • 新報道2001(日曜、CX、7:30より):言及なし〜与野党の現役政治家をスタジオに招き意見を聞いたり、討論させる討論番組。日曜朝に討論番組が並存しているため出演する政治家はフジテレビ、NHKテレビ朝日に連続して出演し討論する事がよくおこる。聞き手の黒岩祐治キャスター(フジテレビ解説委員)の姿勢は攻撃的でかつ、かなり自民党よりである。しかし質問内容はNHKよりずっと厳しく明快な説明が要求される点で番組はNHK番組での討論ものより内容のあるものになっている。
  • 日曜討論(日曜、NHK、9:00より):言及なし〜与野党の現役政治家が正面から対立し、意見を述べる典型的な討論番組。しかしNHK解説委員である司会者の進行は一つの議題に対して徹底に討論させることなく次の話題に移る形となっており、国会の答弁と似たすれ違いと誤魔化しが通用する質の低いもので、実質的な内容は豊富ではないように感じられる。司会者の問題設定、時間配分は政府自民党よりであると植草秀一氏(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/)から批判されている
  • サンデープロジェクト(日曜、EX、10:00より):言及なし〜与野党の現役政治家をスタジオに招き意見を聞いたり、討論させる討論番組。司会の田原総一朗は全テレビ中で最も厳しい司会者で田原の関心事に答えない返答は非常に厳しく追求される。このため出演者の政治家が大臣など直接責任のある場合、言質をとられて政治的に窮地に陥る事をひどく心配し、及び腰の発言に終始する者もいる(自民党総裁選での麻生太郎氏の対応が典型例)。番組の方向性はテレビ朝日の社の方針より田原総一朗の方針で決定づけられているように見え、リベラルに見えても実際はかなり自民党に近いものである。
  • 朝まで生テレビ(月1回、EX、深夜1:30より):5/29深夜に「政権交代の条件:自民VS民主」のテーマで偶然党首討論の直後に放送があったが直接言及はなかった。ただし枝野幸男民主党)は鳩山氏は「民主党政権交代したら日本はこうなる」という話をしようとしたが十分できなかったと評した。〜深夜に長時間、田原総一朗氏の強い司会で、その時々の政治問題を政治家や知識人が議論する長寿番組。田原総一朗の発言への介入が強く、彼の関心のある点は深く議論されるがそれ以外は逆に拒否される事もあり、田原の方針が右傾化している事もあり自然な自由討論とは言い難い。また招待される参加者もそれを反映し保守側論者が多くなる傾向にある。