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植草一秀ブログのメディア批判部分抜粋(1)2008年9月10日〜12月末

下記は経済評論家植草一秀氏のブログ『植草一秀の知られざる真実』から、2008年9月10日から2009年10月までの期間で、政治を扱うテレビ番組の内容に関しての批評部分を抜粋したものだ。テレビの政治報道に関する批評は非常に少なくその鋭い内容と共に貴重なものだ、また番組自体が2度と視聴できずどんな番組だったかを知る点からも参考になるだろう。筆者はこれらのテレビ番組のかなり多くを視聴しており、植草一秀氏の番組評価にはおおむね賛成だ。しかし同意できないもの多く又未見のものもあり、植草氏のメディア批判への貢献を記録し注意喚起すると共に、私見やメモを書いておく。なお抜粋は文章主旨は保存するが大胆に行われており詳細は原典を参照されたい。

植草一秀ブログ「御用マスゴミ」NHKの偏向報道」(2008年9月11日)

NHKのあからさまな自民党宣伝と、それに怒って苦情電話をかけた利用者にNHK担当者が本音をばらしてしまった事で問題化した事件、朝日新聞などでも報道された。

「御用マスゴミ」NO.1のNHKは、自民党総裁選が告示された9月10日、午後7時の定時ニュースの枠を拡大し、番組冒頭の50分間、総裁選立候補者5名による生放送を行った。民主党が複数候補による代表選を実施したとして、同様の対応を示したか。答えはNOである。
 政権を放り出した政党の後継総裁選出をNHKが国家的行事に祭り上げる姿にNHKの体質が滲み出ている。NHKが権力迎合の「御用マスゴミ」を自認するなら、視聴者のなかで「御用マスゴミ」化に賛同する者だけが受信料を支払えばよいだろう。

植草一秀ブログ「茶番の自民党総裁選」解説」(2008年9月15日)

=たしかに自民党総裁選候補者の主張は不明だった

石原伸晃氏は9月14日のNHK「日曜討論」で、小泉改革の内容を「官から民へ」と「中央から地方へ」だと説明し、「官から民へ」の民営化は成功したと発言した。石原氏にして「小泉改革」を正確に把握していない。「小泉改革」は、?「弱肉強食」を奨励し、分配の格差を著しく拡大させ、?社会保障制度のセーフティーネットを破壊して、弱者切り捨てを推進し、?官業を外国資本や大資本に払い下げた。この三つを支柱として進められた政策体系である。
 自民党が危機の本質を的確に捉えるなら、新たな政策の方針は「改革政策の否定」になるのだ。それにもかかわらず、小池氏と石原氏は「改革路線継承」を主張する。石原氏は「人に優しい心の通った改革」と発言するが、具体的な政策が示されておらず、まったく意味不明である。

植草一秀ブログ「NHK「クローズアップ現代」の偏向報道」(2008年9月19日)

NHKに政府批判の立場に立った調査報道を要求する鋭い批評。また中立の知識人が取材されても発言はあくまでNHKの側で都合よく使用される実体験を述べている。NHKが時間をかけ一見きちんとした番組を制作しているだけにそれによって視聴者が影響を受ける可能性は大きい。それをマインド・コントロールと呼ぶのは違和感があるが起きている事はそうしたことだろう。

 9月18日、薬害肝炎原告団福田衣里子さんが次期衆院選への立候補を表明した。民放各社はニュース報道したが、NHKは定時ニュースで報道しなかった。
 9月18日の参議院農林水産委員会での閉会中審査をNHKは放送しなかった。国民の生命に関わる重大事案について、国会が緊急に集中審議を行ったのだ。NHKが「公共放送」だと言うのなら、このような重要審議を中継するべきだし、ニュースでは重点的に取り上げるべきだ。
 NHKは9月16日の「クローズアップ現代」でこの問題を取り扱った。タイトルは「“コメ”不正転売の闇 手口は」だ。番組は「三笠フーズ」がいかに巧妙に不正転売したのかを強調した。農水省事務所による検査が不正を見抜けなかったのは、「三笠フーズ」の不正行為が極めて悪質で巧妙だったことを強調した。つまり、番組は農水省情状酌量の余地が大きいことを提示するものに仕上がっていた。
 ゴールデンタイムに30分の時間をかけて番組を放送するなら、昨年1月に内部告発があり、検査を重ねながら問題が表面化しなかった「闇」に光を当てなければ意味がない。NHKが本当に「公共放送」ならば、「“猛毒米”不正流通隠ぺいの闇 農水省の手口」とのタイトルで番組を制作するのが当然なのだ。しかし、NHKは「御用放送」だから、政府を擁護し、一民間業者に全責任を転嫁する番組を制作するのだ。
 1997年1月13日放送の「クローズアップ現代」は同年1月7日から10日にかけての株価急落を取り扱った。私はVTRでコメントを提供したが、発言の中核はカットされた。橋本政権の大増税予算編成が株価急落の主因であることを私は指摘したが、番組は「構造改革に逆行する新幹線予算調査費計上が株価下落の原因」と断じた。私の指摘が正しかったことは、のちの事実が証明した。
 報道を注意して見ると、さまざまな「操作」が行われていることがわかる。注意しないと気付かない。そして、気付かぬうちに「マインド・コントロール」される。テレビメディアによる「情報操作」は恐ろしい。

植草一秀ブログ「小沢一郎民主党代表VS麻生太郎自民党総裁」(2009年9月22日)

=テレビは新聞と異なり政治的な中立を規定する放送法第3条に縛られている

自公政権に支配されるマスメディアは自民党総裁選を過剰報道し、総裁選を祭り騒ぎに仕立てたが、有権者に好感されたのかどうかは疑わしい。自民党総裁選報道では、自民党総裁候補者の民主党に対する誹謗中傷の発言が垂れ流されたが、「政治的な中立」を規定する「放送法第3条」に抵触する疑いが濃厚である。

植草一秀ブログ「敵前逃亡解散と偏向「NHKスペシャル」(2008年9月29日)

NHKは9月10日の7時のニュースと同様に、自民党宣伝のためのNHKスペシャルを制作した。それが中立か否かは意見の分かれる所だろうが植草氏の見方は納得できる。しかしなぜかNHKはこの後歴史的総選挙の終了までこうした番組を制作しなかった。

「決戦の総選挙」が目前に迫るなか、NHKは9月28日夜、NHKスペシャル「決戦前夜・麻生VS小沢」を放映した。NHKの偏向報道ぶりには目に余るものがあるが、当番組も例外ではなかった。「決戦の総選挙」の争点を「中立・公正の視点」から「公平」に示さなければならない番組が、全体を「民主党が提示する政策の財源の不確実性」だけに焦点を合わせて編成されていた。「偏向報道」そのものだ
 小沢氏のインタビューでは、カメラが小沢氏を下方から映し出していた。ライトアップの加減を含めて、「こわもて」のイメージを作り出す映像手法だ。下から撮影すると被写体の映像は、必ず「上から目線」になる。

植草一秀ブログ「威風堂々の民主党小沢代表所信表明演説」(2008年10月2日)

NHKが野党政治家の発言のほんの一部しか流さない事は日常化しており、これが政治的中立性やひいては歪んだ政治状況(野党は曖昧、反対だけしている等)の認識に結びつくと思われる。

10月2日に行われた衆議院の代表質問で、小沢一郎民主党代表は、民主党が政権を担うことを踏まえた所信を表明した。偏向メディアの大半は事実を正確に伝えないが、小沢代表の演説は、民主党政権公約を明確に示すものであり、極めて内容の濃いものだった。代表質問で野党が所信を表明するのは変則的な行動だが、これは、麻生首相が所信表明で代表質問を行ったことに対する「意趣返し」であり、麻生氏が苦情を申し立てるのは筋違いである。 NHKの7時の定時ニュースは、小沢代表の代表質問での発言内容の主要部分をまったく放送しなかった
 日本の言論空間が「開かれた、自由な」ものであるなら、麻生首相所信表明演説小沢民主党代表の代表質問を、正当に評価する論評が一斉に示されるはずである。客観的に見て、横綱の小沢代表と格下の麻生首相の感は否めない。自民党に好意的な論評が存在することは順当だが、小沢代表の発言を高く評価する論評が多数提示されるのが当然と思われる。マスメディア報道の大半が、民主党に対する肯定的評価を極力抑制している点に、日本の言論空間の閉塞性、「ファッショ化」が如実に表れている。

植草一秀ブログ「国会論戦で表出する麻生政権の問題点」(2008年10月7日)

みのもんたや北野たけしへの評価は難しい

国会論戦の報道姿勢にバラツキが見られ始めている。NHK、日本テレビ、フジテレビの政権迎合姿勢は不変だが、TBSが野党の主張を従来に比べると詳しく紹介し始めた。「機を見るに敏」なみのもんた氏の発言姿勢が急変している。

フジテレビは10月7日朝の情報番組で、株価急落を理由に総選挙先延ばしを正当化する主張を全面的に展開し、麻生政権の総選挙先送りに対する援護射撃を積極的に買って出ていた。
 政権迎合番組の代表はテレビ朝日「TVタックル」と「サンデープロジェクト」だが、10月6日「TVタックル」では、MCの北野たけし氏が計算し尽くした発言を示したことを見落とすことができない。北野氏は「民主党は魅力的な若手が多いが、人気のない代表が最大の問題である」ことと、「蟹工船ブームの共産党に頑張ってもらわなくては」といった趣旨の発言をした。小沢氏のイメージを悪化させることが、「TVタックル」のメインテーマとされていると考えられる。

植草一秀ブログ「文藝春秋麻生首相解散宣言で11月23日総選挙」(2008年10月9日)

=政府自民党の主張だけを伝えるとこうなるしNHKをきけばそうなっていた、しかし視聴者の受け取り方は違っただろう

政治権力に支配されるメディアは、「選挙より景気対策」のキャンペーンを展開し始めている。

植草一秀ブログ「朝まで生テレビ田原総一郎氏の偏向」(2008年10月26日)

朝まで生テレビに対する正しい評価。田原総一郎はあまりに強引であり政治報道・政治討論として不適当だ。

10月24日深夜のテレビ朝日番組『朝まで生テレビ』が、「世界金融危機とニッポン」をテーマに設定して放映された。司会の田原総一郎氏は、「こんな時に総選挙をやっている場合ではない」と強引に論議を誘導した。

 「朝まで生テレビ」で、看過できない問題が三つあった。第一は、竹中金融行政に対する正確な論評が示されなかったことだ。森永卓郎氏がひとつの正論を懸命に主張していたが、大村秀章氏や伊藤達也氏などが大声を出して森永氏の発言を遮るなどしたため、十分な説明がなされなかった。

植草一秀ブログ「フジテレビ「サキヨミ」の偏向報道」(2008年11月3日)

=投票と議論によってはっきり視聴者の意見誘導を行う番組「サキヨミ」のおかしさをついたもの。「サキヨミ」はこうした構成を毎回行っている(た)。出演者は偏っている場合が多い。しかしフジテレビはこの番組を娯楽番組と位置づけているように見える、番組製作者は出演者のバランスを配慮しているように見えない。

11月2日のフジテレビ情報番組「サキヨミ」は、冒頭で麻生首相の消費税増税発言を取り扱った。「ついに「消費税アップ」を明言 麻生首相「よく言った」と、A:思う B:思わない」を視聴者に問いかけ、投票結果が番組時間中に集計して発表された。
 問いかけをして、視聴者が番組に対して投票を行う時間に放送された内容は、財務省所管の財政制度等審議会の委員会がまとめた消費税増税を見送った場合の将来シミュレーション結果だった。日本の財政状況が悪化するなかで、消費税増税を実施しなければ、日本の行政サービスは機能不全に陥ることを説明する内容だった。視聴者に麻生首相発言の是非を問いかけて視聴者に投票を呼び掛けている間にこのような内容の放送を行うことが、投票誘導であることは明白である。
 田崎氏は民主党が提言している選挙公約について、財源が明確でないとの発言を繰り返した。また勝間氏は民主党が子ども一人当たり月額2万6千円の子ども手当支給を公約に盛り込んでいることについて、年間4.8兆円の財源が必要で、実現可能性が乏しいとの趣旨の発言を示した。スタジオは民主党批判のオンパレードである。政治的な中立を定めた「放送法」に抵触する番組内容と言って差し支えないと思われる。

植草一秀ブログ「観客激減の大相撲九州場所NHK問題」(2008年11月日)

=NHKの報道番組に正面から警戒を呼びかける珍しい文章。NHKにおいては内容と共にニュースが提供されないことに問題がある、しかし記録の存在しないテレビでは報道されたものの内容の斟酌より、報道されない事の斟酌の方が難しい。植草氏のこの文章はそれを書いている点で貴重。NHKの中立性が犯され常に政府の発言に従う理由はその通りだろう。

NHKの報道番組、政治番組に対する監視を強めなければならない。代表的な政治番組である「日曜討論」、「NHKスペシャル」、「クローズアップ現代」、「定時ニュース」などへの監視を強化しなければならない。
 本ブログで取り上げてきた金融機能強化法改正案審議をNHKニュースがほとんど報道しないのは極めて不自然である。ニュース番組の時間配分にも注意が必要だ。
 公共放送の役割が重要になる。NHK問題については、拙著『知られざる真実』でも記述した。「政治からの独立性」という「放送の公共性」が確保されなくなった原因は、1952年の電波監理委員会廃止立法にある。

植草一秀ブログ「政局優先の麻生政権とNHK偏向報道を糺す」(2008年11月17日)

=小沢氏は「解散に追い込むため麻生に会談を申し込んだ」、こうした本来明確でない政治家の意図をはっきり表に出して報道することはNHKに限らずよく行われている。ただ民放ではその意図の推測の経緯を中立に配慮してくわしく伝えるのに、NHKの7時のニュースは短くあたかも事実のように伝えるのが問題。

 メディアは、麻生政権が政策優先を主張しながら補正予算案の国会提出を来年に先送りする国民生活無視の政策運営姿勢を厳しく糾弾して当然である。ところが、御用放送媒体に成り下がったNHKは、11月17日の午後7時定時ニュースで、またしても偏向報道を繰り返した。
 麻生首相と小沢代表による党首会談を民主党が急遽要請したのはなぜか、と問題提起した上で、麻生首相衆議院解散総選挙を来年に先送りする方針を示唆したため、揺さぶりをかけて、麻生政権を解散に追い込むためだと説明した。極めて偏った解釈をニュース原稿のなかに盛り込むのは、あまりにも異常である。客観的な事実を伝えずに、あたかも、民主党が政局優先の行動をとっているかのような報道をするのは、重大な問題である。しかも、放送ではこの問題についての麻生首相のコメントだけを放送した。麻生首相のコメントを放送するなら、民主党執行部の見解も併せて放送することが、当然の対応である。
 国民が正しい判断を下すには、事実が正確に国民に伝えられることが不可欠な前提条件になる。国民は知る権利を有する。国民の知る権利を保障する上で、メディアの担う役割は極めて大きい。そのメディアが偏向し、政治権力に迎合して、政府寄りの報道を繰り広げることは、日本の民主主義の危機を意味する。

植草一秀ブログ「麻生政権の致命傷になる補正予算提出先送り」(2008年11月20日

=未見。日本経済の見通しと重大性の認識に関わり、専門知識が必要であり専門家でないと判断できない。

11月20日、日経平均株価が8000円を割り込んだ。10月28日以来の7000円台突入である。株価が下落しているだけではない。日本経済が急激に大不況に移行していることが示唆されている。NHKの定時ニュースで、当然トップニュースで取り扱われるべき事態である。ところが、NHK午後7時の定時ニュースでは、この経済急変がまったく報道されなかった。
 理由は、日本経済がみぞうゆの経済危機に直面している現状を報道すると、それではなぜ麻生政権は景気対策を実行に移すために不可欠な補正予算の早期成立に取り組まないのかに焦点が当たってしまうからだ。

植草一秀ブログ「小沢民主党代表攻撃に躍起の偏向メディア」(2008年11月25日)

=確かに民主党への批判的論調はテレビ全体に強かった、それをどう評価するかは難しい

 日刊ゲンダイ紙はマスメディア報道の偏向を以下のように糾弾する。『大新聞は「民主 新テロ法採決拒否へ」「民主“禁じ手”戦闘モード」という見出しを大きく掲げているのだから、どうかしている。これでは国民は、民主党が暴挙に出ていると勘違いするに決まっている。しかし、公平中立に見て、麻生首相に非があることは明らかだろう。』

 11月24日のNHK日曜討論では、インタビュアーの影山日出夫氏が小沢氏のイメージを悪化させようとするピントはずれの質問を執拗に繰り返した。影山氏は以下の諸点について質問を繰り返した。?世論調査では麻生VS小沢で、2倍程度の差がついているがどう思うか。?一連の政治行動は麻生政権を追い込む政局優先の行動ではないか。?テロ特措法、金融機能強化法を人質に取るのか。11月24日のテレビ朝日番組「サンデースクランブル」では、コメンテーターのテリー伊藤氏が執拗に小沢氏を攻撃する発言を繰り返した。

 総選挙に向けての自民党の情勢は一段と厳しさを増している。総選挙で野党が勝利すれば、文句なく政権交代が実現する。これまで「天下り」を中心に利権を吸い尽くしてきた特権官僚は、政権交代実現を心の底から恐れている。形成を逆転するには、民主党代表の小沢一郎氏の影響力を低下させなければならない。小沢氏に対するマスメディアの異常なまでの攻撃モードは、こうした事情を背景にしていると思われる。

植草一秀ブログ「小沢氏批判&偽装CHANGE集団報道の深層」(2008年12月2日)

=「サキヨミ」の分析が鋭い。この後植草氏が定常的に批判する「偽装CHANGE集団」の評価は専門家でないと難しいが、正しいように感じる。この時期の小沢への攻撃も中立性からは批判できるか難しい。

 11月28日の党首討論も、客観的に評価して小沢民主党代表の圧勝だった。このことは、「きっこのブログ」様の緊急アンケートでも、大手メディアの世論調査でも明らかにされている。フジテレビ番組「サキヨミ」では、麻生首相岩手県での街頭演説に合わせて、岩手での麻生氏支援の街の声まで紹介して、小沢氏批判を展開したが、党首討論の勝者を問う視聴者投票では、小沢氏が圧勝した。

 「サキヨミ」の視聴者投票にはひとつの意図が込められていた。選択肢を「麻生氏の勝利」、「小沢氏の勝利」の二択とせずに、「引き分け」を含めた三択としたことだ。党首討論の内容からして麻生氏勝利はありえなかった。そこで、投票結果を「引き分け多数」に持ち込むことが意図されたのだと考えられる。

「政官業外電=悪徳ペンタゴン」に組み込まれるマスメディアは、麻生政権は問題が多いが、小沢民主党も問題が多いと不自然な主張を展開する。麻生政権を浮上させることが不可能と判断した以上、いま、最も力を入れなければならないことは、民主党の人気浮上を阻止することである。二つの手法が取られている。

 ひとつは、民主党を攻撃することだ。小沢代表に対する個人攻撃と、民主党に対する誹謗中傷が繰り広げられている。テレビ朝日日本経済新聞は、小沢民主党代表批判に注力すると同時に、「偽装CHANGE集団」を頻繁に画面に登場させ始めている。竹中平蔵氏、飯島勲氏、渡辺喜美氏、高橋洋一氏などがこの系譜に属する。「偽装CHANGE集団」の基盤は「市場原理主義」=「新自由主義」=「対米隷属主義」である。「官僚利権廃絶」は「偽装」の疑いが濃厚だ。

 (二つ目の手法)は「麻生氏は悪いが小沢氏も悪い」とのプロパガンダである。テレビ番組を注意してみると、番組に登場する司会者やコメンテーターが無理やりこの方向に論議を誘導していることがよく分かる。
 NHKの日曜討論では、司会の影山日出夫氏が民主党の行動を、意図的に「戦術」、「政局」、「政略」などの用語を用いて説明する。「TVタックル」では、司会の阿川佐和子氏が必ず民主党批判の言葉を重ねる。同番組のVTR出演の常連である屋山太郎氏も麻生氏を批判するが、必ず小沢氏批判を強調する。タレントのテリー伊藤氏の発言は常に偏向していると感じられる。テレビ朝日番組「サンデースクランブル」が麻生首相と小沢代表の党首討論を取り上げた際も、懸命に小沢氏批判を展開していた。最近コメンテーターとして登場頻度の高い勝間和代氏も、懸命に小沢氏批判、民主党批判を展開する姿勢が鮮明である。

植草一秀ブログ「支持率暴落の麻生政権と「偽装CHANGE集団」の蠢(うごめ)き」(2008年12月9日)

=田勢は目立たないが明らかに自民党応援部隊だろう、田原の行動評価は偽装CHANGE集団の評価しだいだ

国民の利益に反する、党利党略優先の政治行動がまかり通っている大きな原因は、マスメディアがこのような歪んだ政治行動を厳しく糾弾しないことにある。二つの事例を示しておく。
 (1)テレビ東京は土曜日昼に「ニュース新書」と題する番組を放映している。MCは日経新聞政治部に所属していた田勢康弘氏だ。日経新聞は社長が鶴田卓彦氏から杉田亮毅氏に交代して以降、小泉元首相支援の色彩を鮮明に示して現在に至っている。「ニュース新書」でも日経新聞の基本路線に沿った放送内容が示されている。
 MCの田勢氏は、衆議院解散総選挙の時期について、福田政権の時代から任期満了の可能性を一貫して主張してきた。問題はその理由だ。田勢氏は自民党にとって最も有利な時期を考察する結果として解散時期の予測を述べている。
 衆議院解散総選挙という、最も重要な政治決定は国民の幸福実現という一点のみに立脚して決定されるべきものであって、政治家の打算、利害得失によって決定されることは邪道である。田勢氏のような立場の論者が、利害得失、党利党略による解散時期決定の思考プロセスを肯定することは許されない。世辞評論家がいささかの批判的論評も加えずに、党利党略の行動を是認して評論することが、政治家の党利党略行動を助長している。

(2)第二の事例は、テレビ朝日番組「サンデープロジェクト」MCの田原総一郎氏の行動だ。これまでも記述してきたように、田原氏の偏向ぶりには目に余るものがある。テレビ朝日の会長が日経新聞会長の杉田氏と同様に、小泉元首相と極めて近いことも大きな要因であると考えられる。「サンデープロジェクト」では、「偽装CHANGE集団」を著しく優遇して取り扱っている。この傾向は同テレビ「TVタックル」にも共通している。
 (竹中平蔵飯島勲渡辺喜美高橋洋一などの)「偽装CHANGE集団」は「大資本の利益」、「官僚の利益」、「外国(資本)の利益」の代弁者である。「官僚利権根絶」を掲げるが、だまされてはならない。「小泉一家」は5年半も政権を維持しながら、官僚利権を廃絶しようとはまったくしなかった。「小泉一家」直系の「偽装CHANGE集団」は、「官僚利権根絶」の面をかぶった「官僚利権擁護者」であると考えるべきだ。