zames_makiのブログ

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勅諭下賜五十年記念 陸軍大行進(1932)WW2以前の戦意高揚

=映画法施行以前の戦意高揚映画。陸軍省後援で軍人勅諭を題材に、日本軍の賞賛を行うもの。日本建設以来の戦闘場面を並べ、徴兵制施行により日本防備が完成したと説明し、軍人勅諭につなげる。だが映画の内容は軍人精神の描写というより銃器開発史を入り口にした戦場場面の刹那的描写の羅列にすぎない。
 中盤では西郷隆盛と親交のあった村田少佐(村田銃の開発者)を発端に、西南戦争での乃木、西郷軍の兵士の村田との親交と、その男(河村黎吉?)の満州でのスパイ活動とロシア軍による処刑(村田の銃による)、日露戦争描写となる。この村田氏は実は黒船来航で異人にさらわれた女が操を守るため傷つきながら異人の銃を奪い相手を殺し銃を持ち帰る。この銃を入手したのが実は村田少佐の祖先?。という敵愾心喚起あり。
 最終段では映画制作時の昭和7年の時点に至り、村田の子らの軍人への成長、その軍人にあこがれ恋する娘、軍人らの戦場への出陣とその賞賛となる。ラストは激しい戦闘シーンで締められる。このシーンのために軍の後援を必要としたのではないか?「お国のために」「私(女)もがんばります」全体として軍人賞賛、軍人へのあこがれを描くが、各エピソードは断片的かつ演出まずく、後の1942年以降の戦意高揚映画と同じく、映画人の能力的な問題に起因する、狙いのずれ(敢闘精神や理念としての軍国賞賛より些末的心情描写)になっている。

(88分・24fps・35mm・無声[一部サウンド版]・白黒)
'32(松竹蒲田)(監)清水宏、佐々木康、石川和雄、松井稔、井上金太郎、渡辺哲二(原)櫻井忠温(脚)吉田百助、松崎博臣(撮)小田浜太郎、佐々木太郎、杉本正次郎、栗林関、石村蘇鉄、森尾鉄郎(美)脇田世根一(出)林長二郎高田浩吉、藤野秀夫、岩田祐吉、武田春郎、石山隆嗣、奈良眞養
・・・明治天皇が1882年に下した軍人勅諭の50周年記念作品として東西の松竹のスタッフ・キャストが結集した大作。原始時代から継承されてきた日本人の「軍人精神」が高らかに謳いあげられる。上映フィルムは、ロシアで発見された3巻分のサウンド版と、フィルムセンターが保管していた無声版7巻をつなぎ合わせた現時点における「最長版」だが、ラストは欠落している。

上映 NFC

6/7 15:00