zames_makiのブログ

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シャトーブリアンからの手紙(2011)ドイツ軍住民虐殺を静かに

原題:LA MER A L'AUBE(夜明けの海?)
91分 製作:フランス/ドイツ 配給:ムヴィオラ 公開:2014/10/25
監督: フォルカー・シュレンドルフ
製作: ブリュノ・プティ
オリヴィエ・プベル
脚本: フォルカー・シュレンドルフ
撮影: ルボミール・バックチェフ
音楽: ブリュノ・クーレ
出演:
レオ=ポール・サルマン(ギィ・モケ)政治犯、17歳で死刑になった
ヴィクトワール・デュボワ(オデット・ネリス)政治犯、その恋人、同じ収容所にいた
マルク・バルベ(ジャン=ピエール・タンボー)政治犯共産党指導者
セバスティアン・アカール(ベルナール・ルコルヌ副知事)虐殺リストを不本意ながら作成する
アンドレ・ユンク(シュテュルプナーゲル将軍)ドイツ軍、フランス占領軍指揮官、虐殺に反対で、人数を150人から50人に減らす
ウルリッヒ・マテス(エルンスト・ユンガー)ドイツ軍将校、フランス人虐殺に反対、ヨーロッパ同盟を夢見る文学者
トマス・アーノルト(駐仏ドイツ大使オットー・アベッツ)復讐を促進し虐殺を進める
ヤコブ・マッチェンツ(ハインリヒ・オットー)ドイツ兵、銃殺できない
ジャン=ピエール・ダルッサン(モヨン神父)死刑直前に手紙を受け取る
アリエル・ドンバールカミーユ)ドイツ将校と仲良くなるフランス知識人

解説:1人のドイツ将校暗殺の報復として処刑されたギィをはじめシャトーブリアン郡の収容所にいた27名の政治犯の過酷な運命を軸に、ヒトラーの非道な命令に対し、独仏双方の軍人、役人たちがどのように振る舞い、その結果としてこの大虐殺がいかに粛々と遂行されていったかを丁寧な筆致で描き出していく。
 1941年10月。ドイツ占領下のフランス。シャトーブリアンのショワゼル収容所には、占領に反対する多くの政治犯が収容されていた。その中には、占領を批判するビラをまいて逮捕された、まだ17歳の少年ギィ・モケもいた。そんなある日、ナントで1人のドイツ将校が何者かによって暗殺される。これを受け、パリのドイツ軍司令部には、すぐさまヒトラーからの命令が届く。それは、“報復として、収容所のフランス人150名を処刑せよ”というあまりにも過剰にして冷酷なものだった。シテュルプナーゲル将軍はじめパリのドイツ軍司令部では、この命令に当惑し、その回避に向けた努力が続けられる。その頃、シャトーブリアン郡庁舎では、副知事ルコルヌに人質のリストづくりが命じられていた。
オフィシャル・サイト=http://www.moviola.jp/tegami/

感想

フランス占領中のドイツ軍による復讐のための住民虐殺事件を静かに、双方の視点で描くもの、ドイツ・フランス合作映画であり、虐殺に反対するドイツ軍指揮官や、かつての仲間を裏切るフランス人が描かれ、この事件を沈める方向で描こうとしている、しかしラストは単に死刑執行で終わるもので、映画としての特別なメッセージは何もなく、何をどう訴えたいのか不明である。事件を反省し再発に反対するのであれば何らかの演出が必要でありそれがない、死者への共感は生まれるが、事件の原因は何か?どうあるべきだったか等何を言いたいか不明の映画。中の中。
 ドイツ軍のフランス占領初期に、一人のドイツ分将校の暗殺に対して、50人のフランス人政治犯が処刑された事件を、経過を丁寧に描くもの。事件に関わる各部分の人々がそれなりに苦悩しているのが興味深い。
1殺害犯人は若い共産党員であり、丸腰の将校を襲い銃が不発で一人しか殺せない下手なもので、結果を予見していない。だが50人の復讐処刑が発表されると自首しようとするなど人間性もある。だが映画はこの部分を細かく描いていない。
2占領ドイツ軍指揮官は50人の復讐が反発を招くと反対する、復讐はヒトラーと攻撃的なパリ駐在ドイツ大使という政治家の発案であり、軍人はより平和的である。指揮官はヨーロッパ連合を口にし融和的で、文学者でさえある、100人を50人に値切るが殺害は行われる、などドイツ軍側にたった描写が続く。
3殺害リスト50人を作成するフランス人副知事、最初は反対するが、職務上しかたなく従う、最初は時間稼ぎである実施しないと説明されるなど、同情すべき点多い、しかし殺害対象に17歳の若者が居る事の不適切さを指摘しながらそれを自分では削除しようとしないなど、単なる感情的嫌悪がこの事件では、正義ではない事を映画は示している。
4フランスで銃殺を行う若いドイツ兵は戦闘経験がなく、銃殺に尻込みする。負傷しソ連戦線から配属された通信兵は銃殺できず卒倒する、ドイツ軍も人間なのだと示す重要な部分。
5殺される政治犯共産主義者であり、ビラを撒いただけの若者から古株の指導者まで様々だが、いずれも殺されるだけの事はしていない。それが殺される事に観客は悲しむ。象徴が銃殺当日釈放予定の若い教師と、17歳で同じ収容所内の女の子への求愛に熱心な若者である。観客は涙を誘われる。
全体として事件の細部が多視点で描かれるが、結論がない。ドイツ・フランスの多くの視点があり得、事件に様々な考え方があり得る。というメッセージ性もない。
 共産党が将校殺害をしない=占領下の犯行にはルールがあるべきだ、
あるいは実行犯が自首すれば=個人の責任感の問題、あるいはそれを子としようとする組織の問題、などはすぐ指摘できる。
 更に、ポーランドでのより過激な復讐による住民虐殺との比較(ポーランドで起るのは看過できるがフランスでは看過できないという差別)、あるいは多くのフランス住民はこれに抗議しないのか、などの視点など、様々想像できるが映画にはメッセージはない。