zames_makiのブログ

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戦場からの脱出(2006)ドイツ人が描くベトナム戦争

原題:RESCUE DAWN 映画 125分 製作国:アメリカ 日本未公開・ビデオ発売
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク 音楽:クラウス・バデルト
出演:
クリスチャン・ベイル(ディーター・デングラー)主人公のA-5攻撃機パイロットの中尉、捕虜仲間を先導し脱出し生還する
スティーヴ・ザーン(ドウェイン)捕虜仲間、ベトナム人農民に殺される
ジェレミー・デイヴィス(ジーン)捕虜仲間、死ぬ

【解説】ラオスで撃墜されベトコンの捕虜となってしまった米軍パイロット、ディーター・デングラーの実話を、同じ題材をドキュメンタリーとして描いたこともあるヴェルナー・ヘルツォーク監督がフィクションとして撮り上げた映画。
 1965年、ベトナム戦争下、敵が潜むラオス国内への極秘爆撃任務に就いた米軍パイロットのディーター。ところが、ラオス上空で撃墜され、捕らえられてしまう。そして捕虜収容所に連行されると、そこにはドウェインやジーンら長らく捕虜となっている仲間がいた。彼らは、このジャングルに囲まれた収容所から脱走することは不可能だと半ば諦めている。それでもディーターは脱走計画を立て始め、着々と準備に取りかかる。やがて計画を実行、看守たちを仕留め、ジャングルを彷徨いながら米軍の救出を待ち続けるディーターたち。敵や村人に追われて味方を失い、体力、気力もいよいよ限界に達しながら、何とか生き長らえるが?。

感想:つまらなさすぎるドキュメントだがアメリカ軍賞賛だけはしっかり

 アメリカ軍がラオスに越境して攻撃した事だけは強調されているが、戦争の意味、アメリカ・ベトナムの関係の描写はまったくない。あるのは捕虜の脱出の顛末だけであり、ヘルツォーク監督は主人公に個人的に興味を抱いたと推測されるが、それが何かも描写されておらず、製作目的が何にせよ論評に値する映画になっていない。戦闘シーンはあるがあまりに唐突であり、へっぴり腰のアメリカ兵捕虜の姿がとても無様だ。しかし主人公は所属空母の仲間全員に賞賛されアメリカ軍賞賛だけはしっかり描かれている。

 こんなつまらない映画だが、ヘリコプター、A-5攻撃機、空母などアメリカ軍の協力なしには描けぬシーンが多く、結果軍の満足する仕上がりになっている。その要素は

  • 1米兵は気さくで人間的だが敵のベトナム人ラオス人)は判る言葉を話さず、暴力的か幼児のような馬鹿者である。看守は小さなヒトラーとあだ名づけられる。
  • ベトナム戦争の意味、勝敗は描かない。アメリカが負けた無意味な戦争のメッセージはない。
  • 3主人公は必ず生きて帰還し観客に楽観的気分を与える。主人公以外の捕虜は全て無残に死んだが映画の力点はそこにない。
  • ベトナム軍・ベトナム人は粗末な武器しかなく原始的であるとされる。アメリカ軍の攻撃機を撃墜したベトナム軍の力や近代性を映画は完全に割愛する。