zames_makiのブログ

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参考記事:メディア批判に対する新聞社の反論

産経新聞(2010年1月21日「社会部発 リークの根拠とは」)

……現在、民主党小沢幹事長資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件が、まさに佳境となっている。各報道機関の記者たちは、大量の土地登記簿や政治資金収支報告書などを収集し分析、関係者たちからの証言を積み重ねている。断片情報をモザイク画のように構成し、事件の全体像をうっすらと浮かび上がらせているのだ。地をはうような取材を文字通り、命を削って日々行っている。
 事件の内容や逮捕日などを「さあどうぞ」と教えてくれる人などは誰もいない。事件の記事が分かりにくいというご指摘を読者からも受けるが、恥ずかしながら入手できる情報が限られていることもある。捜査畑で辣腕(らつわん)をふるったある検察幹部は、何かを問い掛けると、「足で稼いでこい」と言うだけだった。別の検察幹部は、同僚記者が雨中に官舎前で待っていると、ずぶぬれの足元を見て靴下を手渡し、何もしゃべらずに、玄関の中ににまた消えたという。
 「検察のリーク」「検察からの情報による報道の世論誘導」…。こうした指摘の根拠を知りたい。(近藤豊和)

読売新聞(2010年1月23日夕刊「とれんど 『関係者』報道」)

……取材源が不利益を被ったり、その身辺に危険が及んだりしないよう、秘匿するのは記者の鉄則だ。読売新聞では一昨年春から社内の新指針に基づき、事件・事故の取材と報道にあたっている。事実をどういう立場から見るかで、捉(とら)え方が違うことがある。それを出来る限り読者にわかるようにしよう――。そうしたことも掲げた。だが、取材源を明示し、読者に知らせるべき情報を得られなくなれば、本末転倒だ。読者の利益が大きい方を選択するしかない。記者は、多数の「関係者」の話を積み重ね、集めた膨大な資料とも突き合わせて、「間違いない」と確信できる内容を報じる。「関係者」の中でも、検察官の壁は特に厚い。無言か、「知らない」。寒風吹く中、質問内容を忘れるほど震えつつ5時間待った結果が、わずか数十秒のこうしたやり取りだ。その繰り返しである。
 政治家も、記者と同じ取材を1週間やってみればよい。その上で「検察リークを確認した」と言うなら、その言葉に耳を傾けよう。(論説委員藤田和之

東京新聞(2010年1月31日『リーク批判』に答えて 社会部長・佐藤敦

 小沢一郎民主党幹事長の秘書らが逮捕された政治資金規正法違反事件をめぐり、これまでにないほどの報道への批判や疑問の声が続いています。「検察からのリークによって、小沢氏に不利な、一方的な報道がなされているのではないか」というものです。「検察リーク」の批判は、自民党政権時代の疑獄事件の際にも、同党側から上がっていました。今回の特徴は、かつて「政治とカネ」について厳しい論陣を張ってきた識者、ジャーナリストたちからも同様の批判が聞かれることです。

 情報漏えいを意味する「リーク」という言葉の使われ方はややあいまいで、論者によって少しずつ異なっているようにも思えます。ここでは「政治的な意図を持った情報操作のための秘密漏えい」という意味で使い、批判に答えたいと思います。「国民が選挙で選んだ新政権を検察がつぶそうとし、報道がその片棒を担いでいる」と考えている方が、少なからずいるためです。誤解を恐れずに言えば、検察や警察の捜査情報に限らず、官公庁を取材する新聞記者の仕事は、公務員法の「守秘義務」との闘いです。関係者への夜回り朝回りによって、公の発表文にはないニュースを追います。役所にとって都合のいい情報ではなく、隠そうとされた情報や事実にこそ、国民が知るべきものがあるからです。こうした取材を、最高裁は「手段や方法が適切である限り、メディアの正当な業務行為」と認めています。「知る権利」の保障こそ民主主義の根幹だからです。

 しかし、そうして集めた情報の中にすら、ある意図を持って流されたものがあることを、私たちは経験的に知っています。インターネットの時代になってもなお、新聞やテレビは世論形成に大きな影響力を持つメディアであることに変わりはありません。時には相手の懐に飛び込むような取材が必要になる場合もあります。その意味で私たちメディアは、常に「情報操作」に利用される危険と隣り合わせにいると言ってもいいと思います。そして、そのわなに陥らないためには、多角的な取材を重ねるほかなく、記者たちは毎日、その努力を続けています。強制力を持って犯罪捜査にかかわる検察庁が、私たちの重要な取材先であることは間違いありません。しかし、捜査の密行性を何よりも重視する検察は、メディアにとって最も取材が困難な官庁の一つです。検察にとって、法と証拠に基づいて犯罪が立証できるかどうかがすべてであり、捜査情報の漏えいは証拠隠滅などにつながる「百害あって一利もない」ものだからです。


 私たちは、検察捜査に誤りがないとは思っていません。足利事件菅家利和さんの冤罪(えんざい)では、捜査情報に依拠して菅家さんを犯人と決め付けてきた報道を率直に反省し、その繰り返しはしまいと肝に銘じています。しかし、小沢氏の資金管理団体陸山会」の土地購入をめぐる疑惑は、日本の最高実力者となった人物の周辺で起きたことです。断片的な捜査情報を積み重ね、多くの関係者に当たり、資料を収集し、そこから導き出される事実を正確に速く伝えることは、報道機関としての使命にほかなりません。一本の原稿は、こうした調査報道の手法を用いた取材と、捜査情報を重ね合わせながら作られます。そのために各地に派遣した記者たちが、この現在も取材を続けています。

 政治資金収支報告書は、政治家が一年間の政治資金の出入りを国民の前に明らかにする約束状です。意図的な虚偽記入があったとするなら、決して「形式犯」として看過できるものではありません。そこに闇のゼネコンマネーが含まれている疑いがあるなら、なおさらです。虚偽記入への小沢氏本人の関与の有無を調べる特捜部の捜査は続いています。ロッキード事件リクルート事件、ゼネコン汚職自民党政権時代、政界疑獄が起きるたびに、私たちはその取材に全力を注いできました。政権が代わっても、私たちの取材は変わりません。