zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

植草一秀ブログのメディア批判部分抜粋(2)2009年1月〜2月末

下記は経済評論家植草一秀氏のブログ『植草一秀の知られざる真実』から、2008年9月10日から2009年10月までの期間で、政治を扱うテレビ番組の内容に関しての批評部分を抜粋したものだ。テレビの政治報道に関する批評は非常に少なくその鋭い内容と共に貴重なものだ、また番組自体が2度と視聴できずどんな番組だったかを知る点からも参考になるだろう。筆者はこれらのテレビ番組のかなり多くを視聴しており、植草一秀氏の番組評価にはおおむね賛成だ。しかし同意できないもの多く又未見のものもあり、植草氏のメディア批判への貢献を記録し注意喚起すると共に、私見やメモを書いておく。なお抜粋は文章主旨は保存するが大胆に行われており詳細は原典を参照されたい。

植草一秀ブログ「朝まで生テレビ」に見る社会民主主義思考の再評価」(2009年1月1日)

=「朝まで生テレビ」への正しい評価。朝まで生テレビは昔は得るものがあったが、今は見るべきものの少ない番組であり視聴率も低く見捨てられつつあるのではないか?ネットでも視聴体験を記録する者は少ないように思われる。田原氏の変節ぶりは議論誘導のためとも思えるが番組内での発言の支配力は大きく植草氏のように評価されても仕方がない。

朝まで生テレビ」が雇用問題をテーマに討論を行った。司会の田原総一郎氏の横暴さと見識のなさ、偏向振りが際立った討論でもあった。
 司会の田原氏の発言は二転三転した。田原氏は当初、「企業の倫理」が問題であるとの認識を示した。ところが、労働者に対するセーフティネットを強化すべきだとの主張が番組内で広がると、「生活保護社会保障が厚くすると人間は甘えて働かなくなる」「昔の日本人は今の日本人よりも倫理観があった。今の若者は恥知らず」だと述べた。労働者自身の甘えが問題であるとの認識を示した。ところが、討論をリードしたキーパーソンの湯浅誠氏が「セーフティネットの重要性を論じてきて、セーフティネットで若者が甘えて働かなくなると発言するのは、これまでの論議をひっくり返すものだ」と反論すると、態度を一変させた。田原氏は突然、「社会保障が大切だ。政府は社会保障、福祉に政策を集中させるべきだ」と主張し始めた。
 要するに田原氏には確たる思想、信念など皆無なのだ。

討論のなかで巧妙に民主党攻撃を織り交ぜる姿勢も継続した。連合が賃上げを要求することを高圧的に批判しようとした。民主党の支持団体である連合を攻撃する姿勢が明瞭に読み取れた。湯浅氏が「正社員の賃金がかさ上げされて、非正規社員の処遇が改善するのだから、連合の賃上げ要求は正当だ」と発言すると、田原氏は黙り込んでしまった。連合攻撃の目論見が壊された瞬間だった。民主党枝野幸男氏に対しては、民主党の内部が一枚岩でないことについての追及が執拗に繰り返された。民主党の小沢代表と枝野氏の発言の食い違いを明らかにして、民主党の分裂を誘導したい田原氏の姿勢が明確だった。
 さんざん出演者の発言を大声で遮っておきながら、自分の発言中に他の出演者が発言すると「うるさい」と逆切レする姿も痛々しかった。そもそも、小泉竹中政治を全面支援してきたのが田原総一郎氏である。論議の前に田原氏の総括が必要だ。

植草一秀ブログ「市場原理主義者の詭弁−NHKスペシャルから」(2009年1月2日)

NHKのこの番組で竹中はたしかに市場原理主義者として紹介され不快感を顕にしていた。政府与党におもねるNHKがこうした小泉改革を見直す討論会を開いたことに当時私は驚きをもって見ていた。しかし番組はNHK的なまとまりのないものである意味竹中平蔵の宣伝の機会を作ったのではないかと私は感じた。下記抜粋はその線でまとめたが当時植草氏は竹中が批判された番組と受け取ったようだ。

 元日夜にNHKが経済問題、国際政治をテーマに討論番組を放送した。「市場原理主義者」と「反市場原理主義者」の討論が行われた。竹中平蔵氏と八代尚宏氏が市場原理主義者の代表として討論に参加した。
 市場原理主義は小泉竹中政治が実行した政策を表現する上で、もっとも的確な言葉であるが、的確であるがゆえにこの言葉が市民権を得ることに抵抗を感じるのだろう。竹中氏の発言を要約すると以下のようになる。サブプライム危機と言われるが、株価下落は日本の方が米国よりも大幅である。日本の不況深刻化には日本独自の理由がある。
 三つの問題がある。第一は「改革」が停滞して、経済成長の予想が低下したこと。「期待成長率」の低下が株価下落をもたらした。「期待成長率」が低下した理由は「改革」が逆戻りしているためだ。第二は「コンプライアンス不況」。さまざまな分野で規制が強化されて不況が生じている。これも「改革」の逆行が原因だ。第三は日銀の金融緩和が不十分であること。ゼロ金利政策解除、量的金融緩和政策の解除が不況深刻化の原因だ。日銀が金融緩和を強化して、「改革」を進めることが問題解決に不可欠だ。

 マスメディアが市場原理主者を単独で登場させれば、市場原理主義者は自らの過ちを隠蔽して、自らを正当化する詭弁を滔滔とまくし立てる。テレビ朝日テレビ東京は、自ら市場原理主義を推進してきた経緯を踏まえて、市場原理主義者に対して「詭弁」を弄する機会を与えているが、視聴者は「詭弁」を見抜かなければならない。

植草一秀ブログ「政権交代阻止を目論む断末魔の逆襲」(2009年1月11日)

=あい変わらず続く民主党に厳しいテレビの論調、それをどう見るかが問題だ

もはや日本は独立国ではない。米国の完全な植民地と化している。小泉竹中政権は「官」、「業」、「外」の利権を追求する政治を実現するために、マスメディア=「電」波の完全支配戦略を重視して実行した。新聞、テレビのマスメディアが政治権力によって完全支配されるようになった。
 田原総一郎氏、みのもんた氏などの報道番組司会者だけではなく、北野たけし氏、テリー伊藤氏、宮崎哲哉氏などのタレント、三宅久之氏に象徴される政治評論家などが、情報操作に総動員されてきたと考えられる。民間放送局、新聞社は事業活動の大半を企業からの広告収入に依存している。政治権力、大資本、広告代理店の意向に逆らえないのがマスメディアの宿命であり、企業の営利目的とより強い情報源獲得のために、マスメディア自身が進んで、政治権力に擦り寄る行動が拡大した。

植草一秀ブログ「世論を笑う者は世論に泣く」ことになる麻生首相」(2009年1月12日)

田原総一朗の連合批判、正社員の待遇引き下げ要求は醜悪だった

1月11日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」。司会の田原総一郎氏は以下の点で強引な論議の誘導を行った。①派遣切りの問題が生じたのは「連合」が悪い。連合が正規雇用労働者の権利だけを主張し、非正規雇用労働者を置き去りにした。③定額給付金政策は定額減税政策の一変形であって、景気対策として有効。いつまでも定額給付金政策に反対するのはおかしい。
 自民党広報番組であるなら、このような司会進行もありえるだろう。しかし、民間放送の内容は「放送法」の制約を受ける。田原氏の議論誘導は放送法が定める「政治的公平」を逸脱するものだ。「連合」は民主党の支持団体のひとつである。田原氏の連合叩きには、総選挙を前にしての民主党攻撃の意図が込められていると考えられる。

植草一秀ブログ「テレ朝「サンプロ」の偏向「市場原理主義者」擁護」(2009年1月18日)

=たしかにこの頃サンプロでは竹中が数回登場しその旅に小泉構造改革は悪くないと言い続けた、しかし他番組でも、小泉改革市場原理主義者の総括をしたものは記憶にない。2009年10月でも未だメディアは小泉改革の総括をできていないという言うべきだろう。

 1月18日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」では、渡辺喜美氏が発足させた政策グループを、渡辺氏と江田憲司氏をスタジオに招いて紹介するとともに、竹中平蔵氏と金子勝氏の討論を放映した。
 番組での討論では、市場原理主義者の総括がまったく実行されなかった。田原総一郎氏は小泉竹中政治の市場原理主義政策を全面支援してきた経緯がある。小泉竹中政治=市場原理主義が糾弾されることは、田原氏自身が糾弾されることを意味する。番組の進行では、市場原理主義が批判一色にさらされることを防止しようとする姿勢が色濃く示された。
 テレビ朝日は、「市場原理主義者」と連携する渡辺喜美氏を軸とする「偽装CHANGE新党」を全面支援する一方で、糾弾されなければならない「市場原理主義者」の不適切な弁明の機会提供に尽力している。

植草一秀ブログ「かんぽの宿疑惑」を報道しないワイドショーの偏向」(2009年1月30日)

=急な展開にもまま記述、大きく取り上げない、かんぽの宿問題をあまり批判的には取り上げないのを問題にしている。

 「かんぽの宿疑惑」はますます拡大し、ついに日本郵政西川善文社長がオリックスへの一括譲渡方針を凍結することを表明した。この問題は、テレビの報道番組が飛びつくべき話題である。日本郵政は100%政府出資の国有企業である。「かんぽの宿」は紛れもない日本国民の貴重な資産である。その貴重な国民資産が、小泉竹中政治と密接な関わりを持ってきた人物が率いる企業に破格の安値で売却される。
 まさに格好の「ワイドショーねた」である。「わたしのしごと館」を繰り返し報道したように「ラフレさいたま」が実況放送されるのが自然の成り行きだろう。ところが、テレビ朝日テレビ東京も、日本テレビなどは、問題を大きく取り上げない。

植草一秀ブログ「フジ「サキヨミ」−「かんぽの宿」疑惑のコメンテーター」(2009年2月1日)

=植草氏の記述した通りの変な番組、要は西川社長は悪くないと言いたいのだろう。しかし事情を知らなかった私は当時その番組メッセージを理解できなかった。背景知識の豊富な植草氏の評価は鋭い。

 フジテレビ番組『サキヨミ』が「かんぽの宿疑惑」を報道した。岸本氏と長嶋氏の発言は見識ある考えを示すものだった。問題の本質を突いており、一般的に国民が感じる率直な感想も踏まえて的確に語られたと感じる。これに対して、藤井氏と田崎氏の発言は奇怪極まるものだった。
 元ルイ・ヴィトン・ジャパン社長の藤井清孝氏は「入札が公明正大に実施されたことを前提として考えると」と前置きして意見を述べた。そもそも「入札の経緯に不透明な部分がある」ことが問題にされているのに、「入札が正当に行われたことを前提に」話をするのでは、話にならない。
 時事通信社田崎史郎氏は、「100億円にしか評価されない「かんぽの宿」に2400億円もの資金が投入されたことが問題である」「また今回の問題は自民党にとってマイナスに作用する」といった趣旨の発言を示した。まったく支離滅裂である。今回の問題は「100億円が実態に比べて低すぎると判断できること」が出発点に位置する。それを「100億円にしか評価されないことが問題」というのは、100億円の評価が正しいということを前提にした発言だ。

 田崎氏の発言は、今回の問題の追及を受ける側が、判で押したように示す「論理のすり替え」である。不効率な官僚機構の業務、「天下り」、利権の拡大行動は、別途いくらでも論じればよい。だが、いま問題になっているのは、「郵政民営化」の美名の下に、不透明な利権行動が展開されているとの疑惑が新たに浮上しているという問題なのだ。109億円での売却にはまったく問題が無く、2400億円を投入したことだけが問題だとする田崎氏の発言には、無理がありすぎる。
 田崎氏の「自民党にとってマイナスではないか」の発言に、田崎氏の立ち位置が明確に示されていた。視聴者は「かんぽの宿疑惑」報道を、「自民党にとって有利か不利か」の視点で視聴していない。コメンテーターには、中立公正、正義・正当性の視点からのコメントを求めているのではないか。番組コメンテーターが国民の視点から問題を捉えるのではなく、自民党にとっての得失の視点で思考していることが露わになり、視聴者は唖然としたと思う。

植草一秀ブログ「「かんぽの宿疑惑」報道を封殺する巨大な闇の」(2009年2月2日)

=未見

「「かんぽの宿」の疑惑が郵政民営化見直しの大問題なのに、全く報道しないのは小泉疑惑に発展するからだ」ワイドショーが飛びつく格好の材料が噴出した。現地の取材、東京の不動産開発会社の追跡取材など、各番組が時間を割いて報道する格好のテーマである。
 ところが、2月1日の放送では『報道2001』、『サンデーモーニング』、『サンデープロジェクト』、『サンデージャポン』が、この問題についてそろって報道しなかった。2月2日放送では、ワイドショーは大相撲大麻疑惑一色で、「かんぽの宿」疑惑が忌避されている。

植草一秀ブログ「日本テレビNEWS ZERO」の「かんぽの宿偏向報道」(2009年2月3日)

=未見

昨日のテレビ朝日報道ステーション」は「かんぽの宿疑惑」を完全に封殺した。国会報道そのものが完全に消えていた。2月3日の各種報道番組は「大相撲大麻事件」、「浅間山噴火」、「L&G円天」報道一色である。「かんぽの宿」疑惑は報道されていない。
 唯一報道があったのが日本テレビ『News ZERO』だった。しかし、その内容は日本郵政サイドの説明を繰り返すだけのものだった。司会者は、日本郵政は外部の人間を含む検討委員会で問題を検討して対応するとしており、適切な対応を望みたいと話して締めくくった。これでは、日本郵政の弁明の記者会見である。番組のスタンスは日本郵政サイドの説明だけを紹介して、問題を封印しようとするものである。

植草一秀ブログ「かんぽの宿」疑惑新事実とTBS竹中平蔵氏詭弁演説会」(2009年2月5日)

=植草氏の記述した通りの番組。雰囲気として竹中は批判されていたが実質的には何も問われなかった。この番組への私の感想はここ(http://d.hatena.ne.jp/zames_maki/20090203#p1)に。

 2月4日のTBS「久米宏のテレビってやつは!」は、TBSの見識が疑われる番組だった。タイトルこそ、「私がそんなに悪いのか・・・竹中平蔵」、「経済崩壊&品格劣化の元凶?をスタジオ喚問」と付けられているが、実態は「名ばかり喚問」で、竹中平蔵氏に詭弁大演説会の場を提供しただけであった。
 スタジオに出演したのは、竹中平蔵室井佑月荻原博子、ビビる大木、久米宏八木亜希子の6名だった。経済の専門家と言えるのは、荻原博子氏だけだったが、悲しいことに、まったくの知識不足、勉強不足だった。室井祐月さんからは、竹中氏に反論したいとの心情だけは伝わってきたが、言葉がまったく出て来なかった。番組が相応の準備をして、MCの久米宏氏が竹中氏を追及することが最低限度の対応として求められたが、番組は最低限の責務を放棄していた。
 事件の被疑者をスタジオに招き、被疑者を追及する資料もそろえずに被疑者に独演会の場を提供したようなものだった。久米宏氏はジャーナリストとしての地位を完全に放棄して、単なる御用タレントに成り下がる宣言をしたように受け取れる。竹中氏を絶賛してきた経緯を踏まえて、追及を控えたのだろうか。

植草一秀ブログ「かんぽの宿」&「4分社化見直し」封殺を目論むマスゴミ報道規制」(2009年2月7日)

報道ステーションの対応はこうだったと記憶する、当時私はその意図を理解できなかった。しかし郵政民営化に問題ありとの問題情報は当該番組以外から得ており、当該番組の説得はそうした人には効果がなかったと思われる。曖昧なメッセージの当該番組の影響力は大きくなかったのでは?

テレビ、新聞のマスメディアは、「かんぽの宿疑惑」が拡大して、「郵政民営化」に対する根本的な見直し論議が高まることを警戒する、異常な報道体制に移行している。

 テレビ朝日報道ステーション」は、2月6日放送で、MCの古舘伊知郎氏が必死の形相で、「かんぽの宿疑惑」と「郵政民営化」はまったく別のものだから、「かんぽの宿」問題を「郵政民営化見直し」論議につなげてはならないと、懸命に主張を展開した。日本テレビ「NEWS ZERO」は、2月2日とほぼ同様に、年間30−40億円の赤字を発生させており、3200人の雇用を維持しなければならない事情があり、そのなかで「事業譲渡」の入札が今回のような形で実施されたことには、特に問題があったとは考えられないとの説明を繰り返した。2月6日の衆議院予算委員会はNHKが中継しなかったが、質疑の中で西川社長が明確に「一般競争入札ではなかった」と明言している。このような重大な事実を報道もせずに、日本郵政サイドの説明だけを繰り返すことが許されるはずがない。2月7日の情報報道番組では、「かんぽの宿疑惑」がほぼ全面的に無視された。

 マスメディアが常軌を逸した偏向報道を展開することが、「郵政民営化」の深い闇を如実に物語っている。「かんぽの宿疑惑」により、「郵政民営化が規制改革利権と結びついているとの疑い」が浮上したことは間違いない。

 ところが、日本郵政の西川社長があっという間に国会で陥落してしまった。そのタイミングで麻生首相が「4分社化見直し」まで発言し始めた。日本郵政サイドの説明は崩れ、「4分社化見直し」にまで問題が広がる可能性が生まれ始めた。メディアは問題の鎮静化をはかるために、再び報道規制を敷き始めたのではないか。

植草一秀ブログ「「かんぽの宿」疑惑解明に慌てふためく小泉元首相」(2009年2月12日)

=確かに小泉の一言をテレビは大きく取り上げた。しかしそれは小泉の発言で政治情勢が変わるのではないか?、小泉には今もカリスマ的影響力はあるのか?という視点であり、テレビ局として郵政改革を続行すべきだとの意図ではなかったと思う。しかし小泉が郵政改革続行を主張し選挙での自民党代表者として名乗りを上げる等の行動をとればテレビは大きくとりあげただろうし、国民の側で支持する動きがあればそれにも大きく取り上げただろう。要はテレビの側も小泉劇場を待ち望んでいた(?)面があること。

小泉元首相が(わらっちゃうくらいあきれてると言って)麻生首相の「郵政民営化見直し」発言(私は最初から賛成じゃなかった)を批判した。マスメディアは「かんぽの宿疑惑」報道を封殺する一方で、麻生首相の「郵政民営化見直し」発言を激しい勢いで批判している。
 しかし、小泉元首相の発言が国民の主張を代弁するものでないことは明確にしておく必要がある。小泉政権は「郵政民営化」を強行実施した。同時に「市場原理主義」に基づく「弱肉強食奨励政策」を実行した。日本経済が深刻な不況に直面し、小泉竹中政治の誤りが誰の目にも明らかになった。小泉竹中政治に対する根本的な再評価が広がっているのである。
 「郵政民営化」は、「正義」の衣装に粉飾された「売国」の政策であった、と私は判断してきた。「かんぽの宿疑惑」はこのことを証明しつつある。「かんぽの宿疑惑」は「郵政民営化」との関連で真相を解明しなければならない事案だ。このタイミングで「郵政民営化見直し」、「郵政4分社化見直し」論議が拡大することは、「郵政民営化=郵政利権化」を進めてきた利権勢力にとっての脅威である。
 小泉元首相は国民の思考が2005年9月で立ち止まっているとでも勘違いしているのではないか。マスメディアは小泉元首相の発言をトップニュースで伝えるが、多くの国民は冷め切った気持ちで小泉元首相の映像を眺めていると思う。

植草一秀ブログ「KYキング小泉元首相と「報道ステーション」の誤算」(2009年2月13日)

=未見。テレビの小泉の扱いが大きいのは前記事通り、それをどういう意味と解釈するかが問題だ。

 民放各局は「かんぽの宿疑惑」を封印して「小泉元首相わらっちゃうくらいあきれてる」発言を懸命に報道した。「小泉さんて人気ありますよね」と話す街の声をまぶす。ナレーション原稿に「依然として永田町に影響力を持つ小泉元首相」、「眠れるライオンの尾を踏んだ麻生首相」などの言葉を盛り込む。何気なくニュースを聞き流す視聴者の耳に、「人気のある」、「影響力を持つ」、「ライオン」などの言葉の響きが残る。これを「サブリミナル効果」と呼ぶ。

 こうした中で、NHKが「かんぽの宿」報道をやや丁寧に実行している。NHKは総務相支配下に置かれている。総務相の意向を尊重せざるを得ない。メディアの報道には裏がある。
 2月13日のテレビ朝日報道ステーション」では、司会の古舘伊知郎氏が完全にはしごをはずされた。「かんぽの宿」疑惑が拡大するなかで、古舘氏は懸命に、「国民の多数が支持した郵政民営化」と「個別問題である「かんぽの宿疑惑」」とを完全に切り離して考えなければならないと絶叫し続けてきた。ところが2月13日の「報道ステーション」では、古舘氏の意図と裏腹に、コメンテーターの寺島実郎氏が「「かんぽの宿」疑惑は郵政民営化が一体なんだったのかという根本的な問題を投げかけるテーマだ」とコメントして、古舘氏は言葉をつげなくなった。ゲストコメンテーターを突然差し替えることもできず、番組の意図に反するコメントが表出してしまったのだと思われる。

植草一秀ブログ「TBS「ニュースキャスター」小泉万歳報道と情報操作二つの狙い」(2009年2月15日)

=前記事と同じ。小泉の扱いが大きいのはその通り。テレビが「小泉改革への国民の支持は今もある」とするのはおかしいのは植草氏の指摘する通りで、この時点で自民は2005年の選挙で敗北し、麻生は「俺は郵政改革に反対だった」と言って責任逃れをしようとしていた。郵政改革をどう評価するのか自ら考え賛否の材料を提起するのがテレビの責任であっただろうにそれを行わず、単に視聴率をとれる素材として取り上げたと言える。

2月14日放送のTBS「ニュースキャスター」はまさに「小泉万歳」番組だった。飯島勲元秘書、北野武氏、宮崎哲哉氏、山本一太氏がスタジオに勢ぞろいして、小泉応援合戦、民主党攻撃を繰り広げた。
 飯島勲氏は麻生首相以上に支離滅裂な発言を繰り返した。訳の分からない言葉を延々と続けた。北野武氏は「役者が違う」。宮崎哲哉氏は「小泉元首相の神通力は健在」、小泉元首相の影響力の大きさを強調した。山本一太氏は「小泉氏は改革のゆくえに強い危機感を持たれたのだと思う」と発言、「かんぽの宿」疑惑解明が進むことに激しい危機感を持ったのは事実だと思われる。

(こうした小泉擁護、麻生批判の)マスメディアの懸命な情報操作行動の狙いは次の二点であると考えられる。第一は、「郵政民営化」の見直しを阻止すること。「郵政民営化」は米国の要請に基づき、米国が日本国民の資産を収奪するために推進されてきた「ビッグプロジェクト」であると判断される。第二の目的は、次期総選挙での完全な権力移行=本格的政権交代を阻止することである。麻生自民党と対立すると見える「第三極」を立ち上げて、「民主党」への投票を妨害することだ。

メディアは2005年9月に国民が総選挙で表示した意思を強調する。しかし、その後、2007年7月の参議院選挙で、国民は2005年とは正反対の意思を表示している。自民党もすでに、2005年9月の総選挙で郵政民営化に反対した議員を復党させている。小泉竹中政治の誤りは日を追うごとに鮮明になっている。小泉竹中政治は、いまや全否定されていると言っても過言ではないだろう。

植草一秀ブログ「中川財務相辞任より重要な西川日本郵政社長解任」(2009年2月18日)

=確かに麻生の郵政見直し発言の意味をテレビは問うべきだった、中川昭一の酔いどれ会見の方が眼を引くのは仕方がなく偏向ではない。

2月5日の衆議院予算委員会麻生首相が「郵政民営化見直し」、「郵政4分社化見直し」方針を表明して以降の、マスメディアの麻生内閣攻撃は異常と言わざるをえない。2月12日に小泉元首相が「郵政民営化を堅持し推進する集い」で麻生首相に対して、「笑っちゃうくらい、ただあきれている」と発言したことを、テレビメディアの多くが、まるで「皇帝閣下の発言」であるかの如くに祭り上げて繰り返し放送した。不自然な報道には「笑っちゃうくらい、ただただあきれる」ほかなかった。

テレビメディアが中川氏の辞任問題報道に集中して「かんぽの宿疑惑」が脇に押しやられている。また、一部の報道機関が日本郵政サイドのまったく説得力のない説明を紹介して、売却先決定が「不正入札ではなかった」かの印象を与えかねない報道を展開している。

植草一秀ブログ「フジテレビ「サキヨミ」が「かんぽの宿」を適正に報道」(2009年2月22日)

=未見。しかし「バンキシャ」で河上氏が一蹴したというのは特別な根拠もなくただ厳しい事を言っただけではないか、河上氏は常にそういうあり方をしている。だから竹中も黙っていたのだろう。

フジテレビ「サキヨミ」が「かんぽの宿疑惑」を三たび取り上げた。すでに売却された「かんぽの宿」のその後を検証した。旅館ビジネスの専門家が今回売却対象になった55の施設の財務データを分析した結果では、32の施設が黒字化できるとの結論が得られたことを番組は紹介した。

2月22日日本テレビ番組「バンキシャ」では、小泉元首相発言を正しい発言だとする竹中平蔵氏の主張を河上和雄氏が一蹴した。河上氏は小泉元首相が四代目の世襲を図りつつ、予算関連法案への反対意見を表明したことを、完膚なきまでに批判した。竹中氏は一言も反論できなかった。テレビ朝日日本経済新聞系列の偏向は別格、不変だとして、これ以外のマスメディアの空気に微妙な変化が見られ始めるのだろうか。