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はだしのゲンテレビ版・前編(2007CX)反戦ではなく弾圧、微妙な差

メディア:TVM
放映日:2007/08/10 放映時間:21:00〜22:52 放映局:フジテレビ/関西テレビ
演出:西浦正記、村上正典 原作:中沢啓治はだしのゲン』 脚本:君塚良一

出演:
中井貴一(中岡大吉・ゲンの父)下駄の絵描き、反戦平和を訴える
石田ゆり子(中岡君江・ゲンの母)優しい母
小林廉(中岡元・ゲン)主人公、やんちゃ
中尾明慶(中岡浩二)ゲンの弟、いつもゲンと一緒
小野明日香(中岡英子)ゲンの姉、体が弱い、学校で裸にされる
今井悠貴(中岡進次)ゲンの兄、工場で働くが、非国民のそしりを打ち消すため予科練に志願する
勝村政信(朴永甫)朝鮮人の隣人
山本學(中岡元・現代)現在のゲン、平和公園で昔を回想する

矢島健一(警察署長)
市川勇(浜田警察官)
升毅(佐伯司令官)
田中要次特高刑事)

感想

 反戦的な父親の下、戦争中の広島で元気に生きる小学生の物語、原爆をうけ家族が死に、悲惨なめにあう。原爆の惨禍と戦争の無意味さを訴える物語だ、だが実写版に比べると、反戦より社会からの弾圧に焦点がずれている、また原爆の惨禍も1976年の実写版よりは長いが、ある程度控えめな表現になっており、原作漫画やアニメ版に比べれば残酷さはずっと抑えられている。
 一方、アメリカ軍の原爆開発や、投下への経緯が物語進行にあわせて説明されており、原爆投下の出来事はよく理解できよう。また母親の出産のエピソードは原爆投下直後ではなく、全体に実写版に比べ脚本が常識的・理解しやすい形に直されており、見やすい・すんなり見る事のできるものになっている。また朝鮮人はより台詞の多い役になり明示されている。集団疎開で原爆投下まで出番のないゲンの次兄は割愛された。ゲンの父親役は、三国連太郎中井貴一の役者の違い以上に、このテレビドラマ版では論理的で説明や説教が多い、よりわかりやすさを狙ったと思われる。
 テレビドラマ的に常識的な表現方法に直された「1976年の実写版」と言うべき作品で内容はよく似る、だがそれだけに反戦のメッセージ性は弱まり、漫画原作の持っている鋭さはそがれている。中の中。

論点

  • 1976年実写版とほとんど同じ物語だが、反戦・平和・反天皇のメッセージは弱まっているのではないか?特に反天皇はない?同じエピソードでも主人公の訴える反戦より、主人公らの弾圧の方が目立つ。
  • 1976年実写版よりずっとわかりやすく、常識的な演出と物語だが、それは何を意味するのか?何をもたらしたか?どちらがよいドラマなのか?見やすさ・理解のしやすさでは、セットがきちんとしており、役者の演技もまんべんなくよい、TVドラマ版の方がずっとよいが、結局反戦のメッセージ性はそがれている。この「はだしのゲン」というドラマにとって大事なのは何か?
  • 原爆投下直後の悲惨なシーンはおそらく映画史上、「ひろしま」「黒い雨」についで長い、それではそこで訴える悲惨さはそれだけ強いものになっているか?