zames_makiのブログ

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ダンケルク(2017)戦争を語らない歴史劇

原題:DUNKIRK 106分 イギリス/アメリカ/フランス 公開:2017/09/09
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン
音楽: ハンス・ジマー

感想

星1つ。予想通りつまらない映画。戦争の顛末を描くものではなく、スペクタクルを見せたいようだが両方ともない。ただ敗走しドイツ軍に殺されそうになるシーンの連続であり、物語的に面白くない。CGではなくセットを作ったようだが、そういった技術論以前に見せ方としても面白くない、普通の戦争での敗走シーンの連続であり、特別な演出や仕掛けはない。一部の映画評論家が「時間を操作した」とか誉めているが、字幕に1時間とか1日とか書いただけで、やっている事は今までの他の映画となんら変りはない、物語の主人公(パイロットか、船の船長か、敗走兵か)でシーンが交代するだけであって、そこで時間が行きつ戻りつするなど当たり前の事である、これら主人公たちがほとんど交わらないので物語る上での時間の操作もまったく問題ないのだ。
 映画の嘘=ドイツ軍に追われほとんど誰も英国兵は英国に帰還できないのでは?というサスペンスが映画の推進力だが、実際にはほぼ全員30万人が帰還しており、要はドイツ軍は英国兵の敗走を邪魔する意思がなかった、あるいは航空機や艦船などの余裕がなかったのであろう。それを映画は大げさに英国民間人の献身的な努力の結果やっと帰れたように感動的に、つまり英国万歳的に描く、嘘である、終戦後もドイツを敵視し悪役とする事で愛国心を盛り上げ映画を盛り上げようという、悪い(=ウソつきの)操作である。
 これは過去のダンケルクを描いた映画を見ればよりはっきりする。JPベルモンド主演の「ダンケルク」(1964仏)である、原題名の直訳は「ジュイコット海岸の週末」であり、ダンケルクの浜辺ジュイコットでフランス兵の不条理な経験を描く、大変な反戦映画だ。英国兵の逃走やそれに便乗しようとするフランス兵のあがきなどは、ノーラン版と同じである。だが1964年版のテーマは戦争の残酷さと無意味さであり、それがこの絶対に勝てない、本来は週末に遊びで来る浜辺でおきることに映画は重きを置いている。