zames_makiのブログ

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三度目の殺人(2017)

125分 公開:2017/09/09
監督:是枝裕和 脚本:是枝裕和 音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
出演:福山雅治(重盛朋章・弁護士)、広瀬すず(山中咲江・被害者の娘)、斉藤由貴(山中美津江・被害者の妻)、役所広司(三隅高司・被告)

感想

素晴しい映画、星5つ。しかし感動させる映画ではなく考えさせる映画だ、そしてそのテーマは「司法」であり大変重い問いを投げかけている。なので知的な関心を持てぬ人には答えのない失敗したサスペンス映画と誤解されるかもしれない。映画は重いテーマを映画的に映像により順序立てて論理的に、少しだけ感動を伴い語る。語り口は静かだがその中味は大変などんでん返しの連続である。なのでサスペンス映画を好む人間には「なぜどんでん返しもっと派手にやらぬのだ?」という不満を抱かせるだろう。だがそうしたらこの映画はたんなるその場限りの涙や驚きだけでおわり、テーマである社会性・社会的問題に観客を引っ張っていけないと思われる。なので少々の不満はテーマの為に我慢すべきだ。なんおで惜しむべきはテーマまで強引に観客を引っ張るほどの力はないことだろう。このテーマに知的な関心を持っている者なら監督の扱おうとしている事の70%までは予想がつく。問題は後の30%をどれだけ「映画的に雄弁に提起」するかだろう。
 ともかくこの重い。難しいテーマをこれだけ分り易く、劇的に物語で語り、映像的に見せてくれた事に拍手したい。なので星の数はその構想に追うところが大きいが、それだけでないのは言うまでもない。
 同様なテーマの映画に周防正行監督の「終の信託」(2012年)がある。比較するとあちらが目前で具体的にその物事をやってみせる通常の手法に対し、是枝監督は対象を(具体的事物とそこでおきる感情を)ぐっと突き放しているの。要は観客に「ただ驚いて帰る」のではなく「この事」を持ち帰ってほしいのだと感ぜられる。