zames_makiのブログ

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死の街を脱れて(1952)満州難民の苦難

=全編満州棄民の苦難をテーマにした珍しい映画。非常に戦後的視点で描く。ただし最後はハッピーエンドという映画的制限つき。若尾文子のデビュー作でキスシーン、川での入浴シーンがある。 1945年8月9日から15日までの、白城子という日本人街から新京(現在の奉天)まで汽車で逃避行する婦女子の一行の苦難。ソ連軍による強姦は暗示的な表現でとどめている。中国人による強奪も直後のあれた室内のみで全体に婉曲な・控えめな表現となっている。奇妙なのは新京までの列車(満鉄)が中国人(国民党と思われる)によって運行されており、それを日本軍が銃撃し、結果的に日本人婦女子が日本軍により超されるという表現になっている。ドラマは終戦前の設定であるが「戦争が悪い」「日本に帰る」「日本軍が悪い」など戦後的な視点で構成されており、日本軍を批判するがための設定と思われる。映画の最後をハッピーエンドにし、悲劇を題材にしても受容可能な作品するための工夫と思われるが、中途半端である。同様に戦争全体の説明、ソ連軍侵攻の状況、新京到着後の経過にもまったくふれておらず、制約が多い残念な作と言えよう。
メディア:映画 公開:1952/05/22
監督:小石栄一 原作:五島田鶴子 脚本:館岡謙之助 音楽:伊福部昭
出演:
水戸光子(子連れの婦人:島村朝子)主人公1、子のため自害できぬと宣言
細川ちか子(子連れの婦人:中沢俊子)主人公2
千石規子(子連れの婦人:柏木てい子)餓死で子を失い狂う
浦辺粂子(野村の祖母)
若尾文子(若い娘)主人公3、行動的な娘
根上淳(開拓民)若尾文子の恋人で出征する、回想シーンのみ
三橋達也(開拓民:杉与三郎)婦人らの脱出に同行、馬車を走らせ中国人に殺される
菅原謙二(満鉄の機関車の機関手)中国人の指図で機関車を運転。婦人らを好意から独断で列車に乗せる
滝沢修 (公安隊長)国民党軍指揮官、婦人らを殺そうとするが温情からやめる
斎藤紫香(駅長)中国人。見て見ぬふりをする
左卜全 (助役)中国人。見て見ぬふりをする

概要

 日本軍が逃走した満州で、悲惨な状況に陥いった日本人婦女子の姿を描く。ソ連軍が侵攻してきた1945年8月6日のその直後、白城子の街に取り残された日本人婦女子の一人の苦難。婦人会長の俊子は強姦され殺される前に日本人として清く自決しようと提言するが、朝子は自分の子供たちの姿を見て「子供を殺すことはできません」と断言。女七人と子供七人の新京(現在の奉天?)への逃避行が始まった。新京に行けば「日本人が20万人いるから助かる、日本へ帰れる」と断言する。そのため満鉄の列車に乗るのが唯一の目的の婦人一行の逃避行の終始。ラストは新京への到着で終わる。