zames_makiのブログ

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母の記念日(1943)国策映画・海外進出促進

=日本人の海外進出意欲の推奨宣伝とオランダ軍の非道さを強調宣伝するもの、ラジオによるリアルタイムでの海外情報という新機軸
佐々木康監督による国策映画。碧川その(信)は、子供たちの教育のため、夫の芳之助(志村)だけをジャワに残していったん日本に帰ってきた。彼女は、医師の資格をとって日本の病院で働くが、いずれは夫の元に戻り、ジャワで医療に携わるつもりであった。だが、夫の消息は途絶えてしまった。東宝から志村喬が夫役で出演。
(86分・35mm・白黒)'43(松竹大船)(監)佐々木康(原)佐々木孝丸(脚)野田郄梧、柳井隆雄、柳川眞一(撮)猪飼助太郎(美)小島基司(音)萬城目正(出)志村喬、信千代、佐分利信徳大寺伸、三浦光子、三井秀男、千代重信、山路義人、飯田蝶子、郄倉彰、岡村文子

感想

インドネシア出身の日本人家族全員が国家体制に即した活動をしていく様を描き、インドネシアでオランダ軍に強制収容された父がオランダ軍の非道を訴える、国策宣伝映画。ラジオという新メディアではるか海外からリアルタイムで状況を伝える様子が映画に取り込まれた新機軸映画でもある。
 国策宣伝は一人家出をし、国策に沿わない次男と今は家長である母親との対立とその解消のドラマで描かれるが、論理的すぎてあまり面白くない。だが、ラジオ国際放送の様子や、満蒙開拓少年義勇軍の様子など、映画が内包する情報多く、今も&当時であっても観客は面白く見たと思われる。

 あらすじ=青井家はインドネシアジャワ島出身、父は1942年時点でも現地で農園開発しているが、母親は子供たちに日本を教えるため帰国している。日本で家族は国策に励む。母親=女医、産婦人科インドネシアでの医療を目指す。長男=インドネシア向け海外ラジオ放送アナウンサー、インドネシア語で話し、後にインドネシア派遣が決まる。3男=大学生だが在学しつつ軍事教練参加し航空兵を目指す、4男=満州開拓のための「少年義勇軍」に参加中。長女=家を守るが、恋人は新兵器開発の個人発明家、研究中の事故で片足となっている。次男=両親に反発し家出行方不明なるも反省し親切な叔父の所に現れ、改心し軍需工場で働く。父親=ジャワで農園開発中に太平洋戦争開始、オランダ軍に収容され生死不明、後に日本軍に解放されラジオで家族に呼びかける。
 家族はそれぞれ国策推進にはげむ、戦争開始で生死不明の父親を皆が気遣う中、ぐれた次男がおじさんの所に現れ改心を示す。叔父は母親にとりなそうとするが、父親の行方不明で緊張し許さない。一方長女のお見合い話もちあがり長男は、同僚の国策放送アナウンサーを紹介しようとするが彼女は片足の新兵器開発の友人男性を「支える」のを本望と述べ承認される。新聞で父親の無事とラジオ放送が伝えられ、子供達は「母親の結婚30周年記念日」としてそのラジオ放送の日に祝いの席を開く、ラジオ放送で父親は無事と日本軍による解放と、オランダ軍のエセ人道主義を批判する大変感動的な放送(志村喬による名演)。母親は父の無事を知り次男を許すのだった。皆で国策推進に邁進するのだった。

 母親が女医でやたらと冷静かつきつい、長男はやや権威的、次男はとてもおとなしく迎合的、人間的なのは人情厚い叔父さんと、滑稽役の3男である。話が次男と母親の対立だが、周辺人物の紹介と経過に時間とられ対立は物語進行にあまり力なく対話場面だけでやたら論理的に流れつまらぬ。一方国際ラジオ放送の場面はオーケストラの演奏風景など目をひく、3男は複葉機で練習場面あり、4男は特徴的な円形宿舎で練習風景多くこうした場面の方が観客に興味を引いたと推測する。








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2/25(火) 7:00pm 3/5(水) 4:00pm 3/15(土) 11:00am