zames_makiのブログ

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野火(2014)正しく日本の戦争を描く

=食人というエピソードから戦争の非人間性と理不尽さを描く正統的反戦映画、市川崑作より優れる。限界状況での食人の倫理性という哲学的な形而上学に逃避せず、生々しい飢えと米軍攻撃から食人へと追いやられる日本兵の醜く苦悩に満ちた姿を描く。市川作にはない、米軍戦闘による日本兵の醜い大量死が挿入されている。主人公が武器によりはがれた自分の肉片を食べるシーンは秀逸で、「食人よる死」と「米軍戦闘での死」はどちらがより罪深く、より非人間的かを考えざるを得ない。『反戦』の台詞は一言もないがこれ以上声高に”反戦を訴える意味”のある映画はない。
英語題:FIRES ON THE PLAIN 87分 製作:日本 配給:海獣シアター 公開:2015/07/25
監督・製作・脚本・撮影・編集:塚本晋也 原作:大岡昇平 音楽:石川忠
出演:
塚本晋也(主人公:田村一等兵)肺病のため原隊より閉め出され、さまよう。伍長らの食人に立ち会い自分も加わる。米軍の捕虜となり帰還し小説にこれを書く。
中村達也(伍長)狡猾な古参兵、足の悪いふりをして永松をだましこき使う。食人を計画実行させる。
森優作(永松)気弱な若い兵。伍長の手足となりサルを狩るがやがて伍長に食われる危険性から反発する。
リリー・フランキー(安田)?
中村優子(妻)ちょっとだけ。

【解説】大岡昇平による戦争文学の傑作を塚本晋也監督が執念で映画化した。凄惨を極めた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、一人の敗残兵が極度の飢えに襲われた中で体験する戦場の狂気とその地獄絵図を通して、人間の尊厳をめぐる問いと戦争の本質に迫っていく。 日本軍の敗北が決定的なレイテ島。結核を患った田村一等兵野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし病院でも追い返され、舞い戻った部隊でも入隊を拒否される。行き場を失い、激しい空腹に苦しみながら果てしない原野を彷徨い始めた田村だったが…。
オフィシャル・サイト=http://nobi-movie.com/