zames_makiのブログ

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花のれん(1959)山崎豊子

製作=宝塚映画 配給=東宝 公開:1959.01.27 125分
監督:豊田四郎 脚本:八住利雄 原作:山崎豊子「花のれん」
出演:淡島千景(主人公・河島多加)女遊びで店をつぶした夫に代わって、寄席を経営大繁盛する女丈夫。
森繁久彌(夫・吉三郎):遊びばかりで店を潰す、早くに死亡
佐分利信(市会議員):主人公が心をよせる渋い男、選挙違反で逮捕自殺する
石浜朗(息子・久雄):母になつかない無口な息子、戦争で出征・店を継ぐのを断る
司葉子(息子の恋人):現代的な女性
乙羽信子(女中・お梅);主人公に代わって息子の面倒をみる
花菱アチャコ(がま口):経営の補助

=序盤は夫婦善哉のようだが早期に夫が死亡、主人公の女性の独りのみの人生が描かれ、「女の一生」などと共通の女性の半生記となる。ラスト30分より息子が出征、空襲による被害で終わる。息子は母の心を裏切り商売を継がず、見知らぬ女と勝手に結婚の約束をし、母より女中になつくなど、「女の一生」と共通性高い。出征の後いきなり空襲シーンとなり破壊された金毘羅様の廃墟で、息子の婚約者と未来への希望を語る場面で終わり、話が途切れている。B29など空襲シーンはある程度丁寧に構成されているが現実味はなく、「戦争でそれまでの財が破壊」されるという記号的な描写に終わっている。
 戦争による破壊と再生が一代記に簡単な形で記述されている例。


…大阪船場の河島屋呉服店は倒産したが、多加・吉三郎の夫婦は、天満天神の近くにある寄席を買い取り、天満亭と名づけ再起の第一歩を踏み出した。天満亭は順調に繁昌したが、生活が安定すると吉三郎の遊びぐせはまた頭をもたげ、おしのという妾の許へ足繁く通うようになった。そのおしのの家で、吉三郎は急死した。通夜の日、多加は婚礼の際に持参した白い喪服を着たが、それがいつしか、二夫にまみえずという心を彼女に持たせた。彼女は、幼い久雄を女中のお梅に託し商売一筋に駈け廻ったが、市会議員の伊藤と知り合った彼女の女心は燃えた。−−法善寺の金沢亭も買い取った多加は、それを花菱亭と改名し入口に“花のれん”を掲げた。出雲の民謡である安来節が関西一円を風靡し始めると、多加は出雲に出かけ、そこで伊藤と再会した。が、彼女はこの愛情までも商売のためには吹き消したのである。やがて、多加は大阪に十三の寄席を持つ席元となり御津寺筋に事務所を構えた。世間では彼女を“女太閤”と呼んだ。が、中学生になった久雄には母は遠い存在だった。伊藤の自殺が多加の耳に伝った。他人の罪をかぶり選挙違反で投獄された彼は、獄中で服毒したというのだ。多加はいかに伊藤を愛していたかを知った。

 …(後半30分)大陸戦線は拡大し、久雄にも召集令状が来た。多加は、久雄から出発直前京子という愛人を紹介された。お梅にはすでに打ち開けていると聞かされ、多加は淋しかった。彼には多加が築いた土台を継ぐ意志が無かった。−−戦争は多加の多年の努力をあざ笑うように一面を焼野原にした。放心したように立つ多加の側に、京子が寄り添った。京子は、久雄から自分がいないあとの母を頼むという言葉に従って多加を慰めに来たのである。多加は久雄と京子の仲を許し、自分もまたこの土地に“花のれん”を掲げようと誓った。