zames_makiのブログ

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NFC吉村公三郎作品

五人の兄妹 (93分・16mm・白黒)

=戦前戦争期の映画
不名誉な死を遂げた父親に代わり、四人の弟や妹そして母のためにひたすら献身する長男(笠)を中心とした家族の物語。マッチや野球のボールといった日常的な小道具が登場人物の気持ちを反映するものとして巧みに活用されている。木下恵介の映画化された最初の脚本作品でもある。
'39(松竹大船)(監)吉村公三郎(原)(脚)木下惠介(撮)生方敏夫(美)周襄吉(音)早乙女光(出)藤野秀夫、葛城文子、笠智衆日守新一伊東光一磯野秋雄、大塚君代、岩田祐吉、上山草人、水島亮太郎、坂本武

暖流 (132分・35mm・白黒)

=戦前戦争期の映画
斬新な演出で大船メロドラマのスタイルを刷新、新人・吉村公三郎の名を一躍高めるとともに、国策映画の製作を迫られつつあった松竹の記念碑的作品となった。国際文化振興会が海外向けに作製した、現行の短縮版より若干長いプリントを上映する(英語字幕付)。「キネマ旬報」ベストテン7位。
'39(松竹大船)(監)吉村公三郎(原)岸田國士(脚)池田忠雄(撮)生方敏夫(美)金須孝(音)早乙女光(出)佐分利信水戸光子高峰三枝子、槇芙佐子、紱大寺伸、藤野秀夫、葛城文子、斉藤達雄
4/5(火) 4:00pm 4/24(日) 11:00am

間諜未だ死せず (117分・35mm・白黒)

=戦争映画
重慶から抗日活動のために潜入した中国人(原)、協力者のフィリピン人(日守)、彼らを利用しようとするアメリカ大使館付武官(斉藤)、防諜担当の日本軍少佐(佐分利)たちの虚々実々の駆け引きが展開される、当時少なからず製作された、いわゆる防諜映画の一つ。監督自身は「国策の名を借りたメロドラマ」としている。
'42(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)津路嘉郎木下惠介(撮)生方敏夫(美)本木勇(音)深井史郎(出)佐分利信上原謙、原保美、斎藤達雄水戸光子日守新一、木暮實千代

象を喰った連中 (84分・35mm・白黒)

=占領期の映画
動物園で病死した象の肉を、空腹に耐えかねて食べてしまった男たち。実はその肉は恐ろしいバイ菌に汚染されており、食べた者は24時間後に死ぬことが判明した。慌てふためく男たち。戦後の食糧難の世相を背景に、人間のエゴをユーモラスに、同時に風刺をこめて描いた、吉村の戦後第一作。
'47(松竹大船)(監)(脚)吉村公三郎(脚)斎藤良輔、池田忠雄(撮)生方敏夫(美) 小島基司(音)万城目正、仁木他喜雄(出)原保美、日守新一笠智衆、阿部徹、神田隆、村田知榮子、空あけみ、朝霧鏡子、奈良真養、横尾泥海男

誘惑 (85分・35mm・白黒)

=占領期の映画
病床の妻(杉村)をもちながら恩師の娘(原)に恋情を募らせてしまった中年男性(佐分利)が、二人の女性の間で苦悩するというメロドラマ。杉村春子の熱演が印象的だが、監督によれば原節子が「もう一ぺん松竹でやりたいというので考えた」ストーリー。
'48(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)浜田辰雄(音)木下忠司(出)原節子佐分利信杉村春子、山内明、神田隆、殿山泰司、文谷千代子、西村青児

わが生涯のかゞやける日 (101分・35mm・白黒)

=占領期の映画
父を殺された娘(山口)とその犯人(森)との出会いを軸に、戦中から戦後の権力者の告発がテーマの作品だったが、脚本段階では占領軍から、完成後は検察庁からの、それぞれの圧力でカットを余儀なくされたという。「キネマ旬報」ベストテン5位。
'48(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)浜田辰雄(音)木下忠司、吉沢博(出)山口淑子、井上正夫、滝沢修森雅之清水将夫加藤嘉宇野重吉、村田知英子、清水一郎

喜劇 嫉妬 (87分・35mm・白黒)

=占領期の映画
妻の浮気を理不尽に疑う横暴な夫(佐分利)と、その夫からの自立を試みる妻(高峰)を描くことで、抑圧的な家父長制を辛辣に批判するメロドラマ。妻の微妙な心の変化を、夫婦間の慣習化したコミュニケーションの食い違いによって表現する演出は見事。
'49(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)浜田辰雄(音)吉沢博(出)佐分利信、郄峰三枝子、宇佐美淳、小宮令子、幾野道子、三井弘次、河村黎吉

森の石松 (97分・35mm・白黒)

=占領期の映画
農民生活に嫌気がさして次郎長の子分になった石松の無鉄砲な生き様を喜劇的に描いた占領期的な「侠客もの」。野心的な作品ではあったが興行的に不入りで、吉村と新藤兼人が松竹を離れるきっかけとなった。石松の悲壮な死の場面は、ハリウッドのギャング映画『民衆の敵』(1931年)を想起させる。「キネマ旬報」ベストテン9位。
'49(松竹京都)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)水谷浩(音)吉澤博(出)藤田進、轟夕起子、河村黎吉、志村喬殿山泰司笠智衆、朝霧鏡子、澤村貞子、西川壽美、飯田蝶子、三井弘次、安部徹

春雪 (87分・35mm・白黒)

=占領期の映画
貧しくも正しく生きる勤労者たちを、愛情をもって描いたメロドラマ。鉄道職員の孝子(藤田) は機関士(佐野)と婚約しているが、ゆとりのない家庭のため結婚をためらっていた。ある時孝子は裕福な指揮者(竜崎)に求婚されて心が揺れる…。興行的には『森の石松』、『眞晝の円舞曲』に続く不入りとなり、このことが近代映画協会の設立につながった。
'50(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)森幹男(音)吉沢博(出)藤田泰子、佐野周二、郄橋貞二、志村喬英百合子竜崎一郎青山杉作東山千栄子殿山泰司、沢村晶子

戦火の果て (90分・35mm・白黒)

=戦争映画
戦争で生死不明になった海軍大佐(滝沢)を待ち続ける港町の女(水戸)は、とうとう待つことを諦めて別の恋人(森)との結婚を決意する。しかしその直後に大佐が港町に帰ってきた…。三角関係のメロドラマに戦争責任のテーマを盛り込んだ野心作。大映京都での撮影中、ジェーン台風で白鯨亭のオープンセットが破壊されたという。
'50(大映京都)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)中井朝一(美)角井平吉(音)伊福部昭(出)水戸光子森雅之滝沢修、関千恵子、二本柳寛、宇野重吉東山千栄子

源氏物語 (124分・35mm・白黒)

大映創立10周年記念作。光源氏の巡る女性遍歴の物語が、長谷川一夫とスター女優たちの競演で描かれる。長大な原作は約1年半の物語に脚色され、さらに淡路(京)という新たに創造した人物を登場させるなどの独自性が指摘できる。水谷浩による豪奢なセット・デザインと、カンヌ映画祭撮影賞を受賞した杉山公平の映像も見所。「キネマ旬報」ベストテン7位。
'51(大映京都)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)杉山公平(美)水谷浩(音)伊福部昭(出)長谷川一夫大河内傳次郎、木暮實千代、水戸光子京マチ子乙羽信子、堀雄二、本間謙太郎、菅井一郎、進藤英太郎、小澤榮

慾望 (116分・35mm・白黒)

=戦争の痕跡
戦地から帰還しない夫を待つ咲枝(水戸)、町のボスの愛人として生きる静江(乙羽)、米兵の恋人を持つひろ子(日高)など、戦後のせちがらい世の中で、さまざまな苦難に遭遇する女たちの生き様を描いた女性映画。小沢栄は水戸光子にしつこく言い寄るボス役を好演し、『夜の河』でも同様の役柄で出演した。
'53(大映京都)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)宮川一夫(美)小池一美(音)伊福部昭(出)水戸光子菅原謙二長谷川裕見子、日高澄子、乙羽信子、小沢栄、菅井一郎、進藤英太郎毛利菊枝岸輝子北林谷栄殿山泰司、上田寛

嫁ぐ日 (89分・35mm・白黒)

=戦争の痕跡
以前のような成果を出せなくなっている劇作家・木島進作(斉藤)の復活を何よりも願っている、その妻(英)と子供たち(増田、田浦、山鳩、若山)の、平凡だが善意に包まれた家族の日常生活を淡々と綴った作品。一家の戦死した二男の妻(津島)が周囲の後押しで嫁ぐ日、進作たちには特別な思いが去来する。
'56(近代映画協会)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)宮島義勇(美)平川透徹(音)池野成(出)津島惠子、田浦正巳、佐野周二、齋藤達雄、若山セツ子、日郄澄子、英百合子、増田順二、山鳩くるみ

地上 (98分・35mm・カラー)

=民主主義思想
大正初期の作家・島田清次郎による同名ベストセラー小説が原作。金沢を舞台とする、貧しい母子家庭に育った気骨ある青年(川口)と地方有力者の娘(野添)の純愛物語。主人公の青年の母役の田中絹代が、『異母兄弟』『太夫さんより 女体は哀しく』とあわせて毎日映画コンクール助演女優賞に輝いた。
'57(大映東京)(監)吉村公三郎(原)島田清次郎(脚)新藤兼人(撮)中川芳久(美)間野重雄(音)伊福部昭(出)川口浩野添ひとみ田中絹代香川京子佐分利信川崎敬三、入江洋佑

一粒の麦 (109分・35mm・カラー)

=民主主義思想
中学卒業後に東京へ集団就職する少年少女たちが直面する困難と、彼らの相談役となる教師の悩みを描いた作品。仕事先の描写を通して、社会のひずみも明らかにされてゆく。教育の理想と就職担当者としての現実にとまどう教員役を菅原が熱演。公開当時の監督の発言によれば、タイトルが指すのは菅原の演じた人物とのこと。
'58(大映東京)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人千葉茂樹(撮)中川芳久(美)間野重雄(音)池野成(出)菅原謙二若尾文子、見明凡太朗、町田博子、市田ひろみ

その夜は忘れない (95分・35mm・白黒)

=戦争映画
原爆の取材で広島を訪れた雑誌記者(田宮)と被爆者である女性(若尾)との恋愛を描いた作品。監督によれば「自信作の一つでもあるが…映画評論家たちから『メロドラマに原爆を利用した』と思いもよらなかった批判をされた」という。モスクワ映画祭で平和賞を受賞。
'62(大映東京)(監)吉村公三郎(脚)白井更生、若尾徳平(撮)小原譲治(美)間野重雄(音)団伊玖磨(出)若尾文子田宮二郎川崎敬三江波杏子、三木裕子、角梨枝子、中村伸郎、長谷川哲夫、大山健二、杉田康、寺島雄作

こころの山脈 (104分・35mm・白黒)

=思想
臨時教員になった中年女性と、担当したクラスの児童との交流を通して、戦後の教育や親子関係などの問題を提起した作品。福島県の一自治体が製作資金を調達したことでも話題になった。監督にとっては3年の闘病生活後の復帰作。「キネマ旬報」ベストテン8位。
'66(福島県本宮町本宮方式映画製作の会)(監)吉村公三郎(脚)千葉茂樹(撮)杉田安久利(美)入野達弥(音)池野成(出)宇野重吉山岡久乃殿山泰司吉行和子奈良岡朋子佐々木すみ江、増田順司、江角英明

襤褸の旗(らんるのはた)(112分・35mm・白黒)

=民主主義思想
明治時代の足尾銅山鉱毒事件で地元住民のために闘った代議士・田中正造の半生を描いた作品。田中を演じる三国の熱演が圧倒的で、強制執行に来た役人の前でその場の土を食べてみせるなど、見る者に強烈な印象を残す。また、空港建設への反対活動中の三里塚の農民が、エキストラとして参加するなど全面協力していた。「キネマ旬報」ベストテン8位。
'74(襤褸の旗製作委員会)(監)吉村公三郎(脚)宮本研(撮)宮島義勇(美)戸田重昌(音)岡田和夫(出)三国連太郎田村亮西田敏行辻萬長荒木道子、浜村純、原泉、楠田薫、信欣三、草野大悟中村敦夫志村喬