zames_makiのブログ

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イスラエル軍兵士はなぜパレスチナ人に残虐行為を行うのか

イスラエル軍元将校ノアム・ハユット氏の来日・緊急報告会の感想〜イスラエルNGOグループ「沈黙を破る」の元イスラエル軍将校ノアム・ハユット氏の来日・緊急報告会

=概要:明治大学の教室で行われた報告会。まずイスラエル軍が撮影した検問所でのイスラエル軍兵士とパレすチナ人を扱う様子のビデオを15分ほど上映し、ノアム氏の説明。検問所の様子を撮ったビデオではイスラエル兵が乱暴にパレスチナ人を扱う様子が記録されている。これは軍が自分たちの宣伝のために撮影したが使用されずメディアに流出したものだという。土井氏はこうした乱暴の様子はよく見るが怖くて撮影できないので貴重な映像だとコメントしていた。ついで土井氏の2009年のガザ攻撃後の取材映像を15分ほど上映し、ノアム氏がそれについて語った。
=感想:(1)ビデオではイスラエル兵が意図的にパレスチナ人を脅す様子が写されていた。ただやはりよくわからない事がある。検問所でイスラエル兵はパレスチナ人を脅す、パレスチナ人がイスラエル兵を「恐れるようにわざと」乱暴にする。それは、イスラエル兵の方が彼らが怖いから、恐怖からだという。
 しかし、銃を持つ兵士がなぜ、武器を何も持たないパレスチナ人を恐れるのだろう?またビデオでは通行許可証を持っていないパレスチナ人が何度も通してくれとやってきてイスラエル兵に拒否される様子が出てくる。なぜ通行許可証を持っていないのだろうか、その背景には大きな問題が隠れているように思われる。
 またイスラエル兵はなんのために検問をしているか理解しているのだろうか?彼らは通行許可証を持っているパレスチナ人にも乱暴で横柄だ。つまり精神的にパレスチナ人を痛めつけるよう行動する。しかし、安全と管理のためなら、許可証があれば自由だし、なくても本来は爆弾を持っていなければ問題はないはずだ。


 イスラエル兵は結果として、自分が何のために検問をしているのか、自分で考えることなく、ただ上官からの命令に「従い」パレスチナ人を意図的に痛めつけている。それはとても馬鹿げた事だ。18〜20歳の若いイスラエル兵はおそらく自分のしている行為の問題性を頭では理解していないが、心では気づいているから苦しむのではないだろうか。彼らは自分の感じる罪悪感から、本当はそんな脅威はないのに、自分の痛めつけているパレスチナ人が逆に襲ってくる恐怖に駆られているように思う。


(2)2009年のガザの虐殺の映像に対して:ノアム・ハユット氏はイスラエル一般人は軍の虐殺行為を知らないといっている。なぜなら兵士は喋らないし、イスラエルメディアは無抵抗の女子供をイスラエル兵が殺した事を報道しない、また市民は軍の正当化の言い訳を信じているから。だからイスラエル人の多くがガザ戦争(ガザ虐殺)を支持するのだと語る。
 日本人がメディアやネットで得たイスラエル軍の残虐行為は、イスラエル人は嘘だと言う。例えば土井氏が撮影したような、無抵抗の女子供を殺した事がはっきりわかる映像ビデオを見ても、それは嘘だ、あるいは事故だ、あるいは珍しい一兵士の過ちに過ぎないと、イスラエル社会ではされると語る。そしてイスラエル軍は世界一規律正しい軍隊だ、とされるのだという。
 私は思う、それはまるで64年前の日本軍のようだ、当時でも南京大虐殺など日本軍の蛮行は日本国内でもある程度知られていた。しかし兵士は帰国した日本社会でそれを公には語らなかったし、銃後の日本人は国の説明をまったく疑わなかった。戦争中(紛争中)の国では、多くの人にとって不都合なニュースは、例えそれが真実であっても、他のニュースのようにはに行き渡らないという現象が起きているようだ。


 しかしイスラエルにとアメリカがかつての日本と異なる点は、言論の自由がある事だろう。であれば結論としては、イスラエル軍の蛮行=戦争犯罪を彼らに宣伝するしかないように思われる。イスラエル人に向かい、そしてアメリカ人に向かって、その事実を広めることだ。
 その結果、ベトナム戦争で必死に逃げるベトナム人少女の映像が、アメリカ人に自分たちのしている事に疑いを持たせたように、イスラエル人やアメリカ人に自分たちのしている事を、振り返る機会を与えられるのではないだろうか。
 それは直接には今オバマのしようとしている事(勿論不十分だが)の後押しになるだろうし、将来的には問題全体に決定的な展開をもたらす背景になるのではないだろうか。

この講演には社会的注目が高いようだ。新聞が開催前に報じているし、はてな会員でもApeman氏やArisan(http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20090528)氏などが関心を持つようになっている。

朝日新聞オンラインには即日記事が出ている(2009年5月31日0時37分)

【「占領した、感覚まひした」 元イスラエル兵が告白】
兵士の写真を前に講演するノアム・ハユットさん=30日午後、東京都千代田区明治大学、金成写す
 イスラエル兵によるパレスチナ自治区での市民への略奪や虐待の実態を証言する、元イスラエル兵らでつくるNGO「沈黙を破る」のメンバーの1人、ノアム・ハユットさん(30)が来日し、30日東京都内で講演会を開いた。占領する側にどんな心理的な変化が起きて、いかに道徳的に退廃してしまうのか、体験に基づく「告白」に200人ほどの参加者が聴き入った。 ハユットさんは98〜03年の約5年間を軍で過ごした。後半はガザ地区ヨルダン川西岸地区の占領地などで将校の立場だった。イスラエル軍によって無残に破壊されたパレスチナ人の店の前で笑う青年兵士の写真を掲げて、「横断歩道でお年寄りに手を貸すような青年が、占領側に身を置くと、こんな場所で笑えてしまう。多くの破壊行為に遭遇し、感覚がまひしてしまったのです」と説明した。NGOは04年、若い元兵士を中心に結成された。兵士の証言の収集と、その出版、講演活動に力を入れている。(金成隆一)

イスラエル軍元将校ノアム・ハユット氏の来日・緊急報告会

http://www.doi-toshikuni.net/j/p-doc/info/noam.html
日時:2009年5月30日(土)
開場/午後1時30分 開演/午後2時 終演/午後4時30分(予定) 
場所:明治大学駿河台キャンパス/リバティータワー(1001号教室)
参加費:1000円(資料代として)
共催:土井敏邦 パレスチナ記録の会、シグロ、現代史研究会
【趣旨】ドキュメンタリー映画「沈黙を破る」が、5月2日から東京・ポレポレ東中野で公開され、大きな反響を呼んでいます。ガザ攻撃の終結から2ヵ月経った3月下旬、イスラエル軍兵士のよる民間人虐殺の事実がイスラエル国内や欧米メディアでも明らかにされ、世界に大きな衝撃を与えました。イスラエル国内の街角でみかける普通のあどけない青年たちが、なぜ占領地で残虐な行動に走るのか。兵士たちは占領地でどういう心理状態なのか。占領地での加害の実態を内部告発した元イスラエル軍将兵たちのグループ「沈黙を破る」メンバーの一人で映画に登場する元将校、ノアム・ハユット氏が来日し、占領地やガザ戦場でのイスラエル軍将兵の実態を報告します。