zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

講演録「ガザが語る、パレスチナの将来―イスラエルによる攻撃の総括と今後の危機」

=サラ・ロイ氏の体調が十分でなかったため時間を圧縮して開催。1部:サラロイ氏の講演(90分)、2部:小田切氏の取材報告(15分)+サラ・ロイ氏が会場の質問に答える(60分)。
参加者は約100人で狭い会場は満員になった。1部はガザの経済・政治状況についての氏の研究成果のエッセンス報告であり、直接のアジテーションではなかったため寝ている人がいた、この間に帰った人も3人ほど。1部の内容は自分のノートに書いたがまとめるのが面倒、しかし
パレスチナのガザ・西岸は政治・経済的に、占領で徹底的に破壊されている
分離壁・検問などによる分断が大きな障害である
3占領が常態化している、それを国際社会が認め、海外援助団体も結果的に支えている
4今では、かつての解決策イスラエルパレスチナ2国家案はパレスチナの経済破壊故にに不可能だ
をとりあえず書いておきたい。

第2部は直接答える形でわかりやすい。1部でパレスチナの状況がいかに酷いものであり、2国家案が事実上不可能(経済的・社会的にパレスチナ地区だけでの暮らしは不可能の意)であることがサラ・ロイ氏から発言されており、暗い話になった。

 「では、どうしたらいいのか?」という素朴な質問にサラ・ロイ氏は「自分の話が常に正しいとは限らない、私はそう言わない、大事なのは皆が考えることだ」、ミーダーンの司会者も「今回の話を持ち帰ってもらい、それぞれの方の周囲で話し合ってもらうことを求めたい」とまとめた。

→サラ・ロイ氏の指摘する占領の日常化、それによるパレスチナ社会の酷い破壊状況、それによる和平や国家建設の不可能性の指摘、今ではイスラエルがもはや和平を望まず占領の上の自国家の繁栄を当然の事として進めていること、占領を当たり前の事としその上での働きかけをする国際社会の不正義(日本を含む)、アメリカでの圧倒的なイスラエル支持のメディア状況などを考えれば、
 サラ・ロイ氏の「皆で話し合って欲しい」とは、「この講演での内容を議論しあうことで、イスラエルアメリカの不正義を日本の人々に理解してもらい、人々それぞれの考える形でのイスラエル批判をせよ」と考えるべきだろう。


追記→主催者から講演内容が報告されている【ガザが語る、パレスチナの将来ーー イスラエルによる占領を読み解く】(http://midan.exblog.jp/11192511/

ミーダーン市民集会「ガザが語る、パレスチナの将来―イスラエルによる攻撃の総括と今後の危機」
講演:サラ・ロイ氏(一般公開/通訳あり)
鼎談:サラ・ロイ+小田切拓、司会:田浪亜央江
日時:3月7日 16:00-19:00
場所:東京麻布台セミナーハウス(アジア太平洋研究センター)大会議室
共催:ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉
⇒【関連ブログ記事】「イスラエルによるガザ戦争」

サラロイ氏主著
1, Sara Roy, The Gaza Strip: The Political Economy of De-Development, Institute for Palestine Studies, 1995 / 2nd ed. 2001
2, Sara Roy, Failing Peace: Gaza And the Palestinian-Israeli Conflict, Pluto Press, 2006
3翻訳.サラ・ロイ「ホロコーストとともに生きる——ホロコーストサヴァイヴァーの子供の旅路」(岡真理訳、『みすず』2005年3月号)/原文=Sara Roy, “Living with the Holocaust: The Journey of a Child of Holocaust Survivors” (Journal of Palestine Studies, Vol.32, No.1)は、上記主著2に収録
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/events/2009/03/utcp_16/


ガザ問題専門家サラ・ロイ(Sara Roy)氏
 ロイ氏は、パレスチナイスラエル問題のなかでも、とくに占領地ガザ地区について、政治経済学の観点から専門的に研究を重ねており、この分野では世界的な権威とも言える重要な業績を刊行している研究者です。またロイ氏は、ホロコースト生き残りのユダヤ人を両親にもつという背景も重なり、ナチスユダヤ人虐殺とイスラエル占領政策との錯綜した関係について、きわめて深い実存的な関わりをもっている研究者でもあります。

サラロイ氏講演録(毎日新聞 2009年3月20日 地方版)

以下は2009年3月5日,京都大学で行われたガザ専門家サラ・ロイ氏の講演の模様。3月7日の東京での講演もガザの占領の政治経済的分析が主であり同じようなものだった。だが3月4日の東京での徐氏との対話はホロコーストをどう考えるかというもので違っている。

ガザで今、何が ハーバード大上級研究員のサラ・ロイさん−京大/京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20090320ddlk26040578000c.html
 ◇イスラエルの爆撃は領土を譲らないとのメッセージ
 ◇主要援助国の「共謀」を批判「まず占領を終わらせること」
 イスラエルの占領地経済、とりわけガザの研究で知られるハーバード大中東研究所上級研究員、サラ・ロイさん(54)がこのほど、左京区の京都大で講演した。京都大大学院人間・環境学研究科の岡真理研究室が主催し、約150人が参加。恒常化した占領がパレスチナ社会を弱体化させた経緯や実態について聴き、考えた。【太田裕之】

 ロイさんはまず、昨年末からのガザ爆撃を議論する前に、イスラエルによるパレスチナヨルダン川西岸とガザ地区)占領の歴史的文脈を理解する必要性を強調。1967年の第3次中東戦争での占領開始から経済的にも依存させ、93年のパレスチナ暫定自治合意(オスロ合意)を経ても維持・強化されてきたと指摘した。

 西岸ではパレスチナ人の所有資産を押収してイスラエル人の入植地を拡大し、分離障壁を建設した経緯を述べて「38%の土地にパレスチナ人は入れない。59%とも言われる」と強調。パレスチナ人の土地は細分化され、有人検問所93、道路閉鎖などの無人障壁537の計630カ所で分断。パレスチナ人集住地域への72の主要道路の45本が閉鎖されるか、軍隊の検問が置かれているとのデータを示し、「パレスチナ人の領土的連続性、国家独立を妨げる」と述べた。

 ロイさんによると、西岸でのイスラエル人入植地は07年5月まで149カ所計約42万人だったが、08年前半に前年同時期の倍の速度で拡大し、国連の特別報告では200カ所で計48万〜55万人分の住居を提供しているという。ロイさんは「イスラエルの考えが、占領継続から、西岸をイスラエルの延長にしてしまうことに変わった」との見方を示した。

 一方、西岸と違って占領への抵抗が続くガザでは、05年にイスラエルが一方的に撤退し、強硬派組織ハマスが支持を得て06年1月の選挙で勝利したものの、これを嫌うイスラエルによる境界封鎖で疲弊。ロイさんは▽イスラエル最高裁は07年11月に燃料輸入禁止を許可し、08年1月に電力供給遮断を許可▽国連機関によると、今回の爆撃前の時点で人口140万人中110万人以上が食料援助に頼っていた▽爆撃前にはハマスイスラエルとの話し合いに応じる姿勢を見せ、イスラエルもそれを把握していた−−と指摘した。

 そのような状況を踏まえ、今回のガザ爆撃を「西岸のパレスチナ人に対し、イスラエルは入植地を撤退せず、領土を譲らないとの明確なメッセージだった」と分析。イスラエル側は「ハマスのロケット弾攻撃への対抗」を口実にしているが、ロイさんは06年のガザからイスラエルへのロケット弾は1786発で、イスラエルからガザへの砲撃は1万4100発との国連データなどを挙げて否定した。

 「本来は政治的・経済的な議論が(国際社会が食料などを援助する)人道問題におとしめられた」。ロイさんはパレスチナの現状をそう形容し、主要援助国を「占領維持への共謀」と批判。「占領下で変化や発展を計画するのは無意味。まず占領を終わらせなくてはならない」と訴えた。

 会場からは「その見通しはあるのか」との質問が出され、ロイさんは「国際法の枠組みの中で可能性はある。それには米国やEUの強い意思が必要で、その第一歩はガザで何が起こっているのかを明らかにすること」と答えた。

 ロイさんは米国生まれだが、両親は東欧でナチスホロコーストから生き残ったユダヤ人。「ホロコーストの犠牲者のユダヤ人がなぜパレスチナ人に同じようなことをするのか」との問いもあり、ロイさんは「実際にイスラエルの外で何が行われているのかを知りたくない、責任を負いたくないと考える人が少なくない」と述べた。