zames_makiのブログ

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イスラエルのガザ攻撃で原爆使用を示唆するイスラエル議員発言の報道

2009年1月14日、イスラエルの右派野党の党首はガザ攻撃に原爆を使えと大学で発言した。しかしこの発言の日本での扱いは小さい。日経新聞は掲載したが朝日新聞は無視、共同通信は違う趣旨で掲載している。またテレビでは報道されていないと思われる。


原爆使用には敏感であるはずの日本のメディアのこうした行動は不思議だ。そこには党首の発言をどう翻訳するか、翻訳でいかに都合のよい問題のない発言とするかの操作が行われている可能性がある。

イスラエルの新聞「米国が日本にしたことをハマースにせよ」

リーバーマン議員:「米国が日本にしたことをハマースにせよ」2009年1月13日
執筆:エルサレム・ポスト・コム職員
 キャスト・レッド作戦はハマースが「戦意を失う」まで続けなければならないと、イスラエル・ベイテイヌ党のアヴィグドル・リーバーマン議長が火曜日に発言。

イスラエルはハマースが実権を持っている限り安全ではありえず、それゆえ、われわれはハマースが戦闘を継続する意志を挫く決意にいたることが必要だ」と、同議長はテル=アヴィヴ近くのバル=イラン大学で演説した。

加えて、「われわれは第二次世界大戦で米国が日本人と戦ったのとまったく同じようにハマースとの戦闘を継続しなければならない。あのときは間違いなく、国の占領(=地上戦)(*1)が必要なかった」とも述べた。

1945年に日本が米国に無条件降伏したのは、長崎と広島が2個の原爆で攻撃されたのに続いてのことだった。当時、日本本土への地上侵攻は準備されていたが、それが回避されたのは原爆の投下後に日本が降伏したためである。

イスラエル・ベイテイヌ党は現在のイスラエルでは第五の政党であり、選挙戦の開始以来どの世論調査でも平均して、次の総選挙で第四党になることが期待されている。

(*1)原文では"the occupation of the country"で、これを「地上戦」を意味すると解釈しなければ文意が不明となる。


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〔原文〕Lieberman: Do to Hamas what the US did to Japan
Jan 13, 2009 15:05 | Updated Jan 13, 2009 23:59 | By Jerusalem POST STAFF
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1231774444907&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull
Operation Cast Lead must continue until Hamas "loses the will to fight," Israel Beiteinu chairman Avigdor Lieberman said on Tuesday.

"Israel won't be secure so long as Hamas is in power, and therefore we need to come to a decision that we will break the will of Hamas to keep fighting," he said during a speech at Tel Aviv's Bar-Ilan University.

"We must continue to fight Hamas just like the United States did with the Japanese in World War II," Lieberman added. "Then, too, the occupation of the country was unnecessary."

In 1945, Japan unconditionally surrendered to the US following two atomic bomb attacks on Nagasaki and Hiroshima. A ground invasion of mainland Japan had been prepared at the time, but was avoided due to the Japanese capitulation after the bombings.

Israel Beiteinu is currently the fifth largest party in Israel, and, according to an average of all polls taken since the start of the campaign season, is expected to become the fourth largest party in the next general election.


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日経新聞イスラエル極右「第二次世界大戦の日本のようにハマスに打撃を」
 日経新聞1月14日(水)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M1401O%2014012009&g=G1&d=20090114
 「米国が第二次世界大戦中に日本に対して行ったのと同じように、我々もハマスとの戦いを続けなければならない」。イスラエルの極右政党「わが家イスラエル」のリーバーマン党首は13日、パレスチナ自治区ガザでのイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘に関し、日本が無条件降伏した史実を念頭に講演でこう述べた。エルサレム・ポスト紙などが伝えた。

 同党首は「ハマスが権力についている限りイスラエルは安全にはならない。ハマスの戦闘意欲を打ち砕く決定が必要だ」として、ハマスに決定的な打撃を与えるべきだと主張した。「わが家イスラエル」は昨年、パレスチナ自治政府との和平交渉に反対し連立政権を離脱している。(カイロ=安部健太郎


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3AFP通信「イスラエル極右政党党首、ハマスには第2次大戦での日本と同様の対処を」
AFP通信2009年01月14日 12:48 
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2557838/3682679
 イスラエル極右政党「わが家イスラエル(Yisrael Beitenu)」のアビグドル・リーバーマン(Avigdor Lieberman)党首は13日、イスラエル政府は第2次世界大戦で日本を降伏させた米国の例に従うべきと発言した。

 同国英字紙エルサレム・ポスト(Jerusalem Post)電子版によると、リーバーマン氏は、テルアビブ(Tel Aviv)近郊のバーイラン大学(Bar-Ilan University)での演説で、「米国が第2次世界大戦で日本に行ったのと同じように、イスラム原理主義組織ハマスHamas)と戦い続けなければならない」と主張した。

 日本は1945年、広島と長崎に原爆を投下された後、降伏している。

 リーバーマン党首はさらに、「ハマスが権力の座にいる限り、イスラエルの安全は確保されない。したがって、われわれは戦いを続けようとするハマス側の意志を打ち砕くことを決心をする必要がある」と語った。

 同氏の発言は、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)のラジオ局でも放送され、携帯電話のテキストメッセージでも多くの人に伝わった。パレスチナ側は激しく反発している

 リーバーマン氏の「わが家イスラエル」は、イスラエル国内で大きな勢力であるロシア移民のコミュニティーを中心に支持を得ており、2月10日に実施予定の総選挙で第4党に浮上するともささやかれている。

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共同通信「米国の日本攻撃に倣え ガザ攻撃でイスラエル右派」
 共同通信 2009年01月13日 13:09米国東部時間
http://www.usfl.com/Daily/News/09/01/0113_022.asp
 イスラエル紙マーリブ電子版によると、同国の極右政党「わが家イスラエル」のリーバーマン党首は13日、大学での講演で、イスラム原理主義組織ハマスに関して「第2次世界大戦で米国が日本に行ったのと全く同じようにハマスと戦うべきだ」と述べ、徹底的に攻撃すべきだとの考えを示した。

 同党首は「ハマスが権力に就いている限り、イスラエル人は安全を得られない。(ガザを)占領する必要はないが、ハマスが攻撃を続ける意思を砕くような決定的な状況をつくることが必要だ」と述べた。

 同政党のスポークスマンは共同通信に「日本に対する米国の抑止力についての話であり、核兵器使用に言及したものではない」と述べた。(共同)



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5分析(阿修羅掲示板より転載)執筆者:ヤマボウシ
http://asyura2.com/09/senkyo58/msg/195.html

 「エルサレム・ポスト」の報道と比べると、共同通信の配信記事は実に奇妙です。2つの記事に関係があるとすれば、イスラエルの英文記事の時制と前後関係を無視して、別の意図で再構成しなければ、共同通信の記事はできないからです。「エルサレム・ポスト」とは別の取材源から記事を書いたようですが、違いを指摘したいと思います。

 共同の記事の「(ガザを)占領する必要はないが、ハマスが攻撃を続ける意思を砕くような決定的な状況をつくることが必要だ」というくだりで、前段の「(ガザを)占領する必要はないが」の意味に合致する部分は英文記事に見当たりません。が、酷似するのは「国の占領が必要なかった(the occupation of the country was unnecessary)」という部分です。英文記事のこの部分は時制が過去形であるうえに、文の前後関係から「国(the country)」は日本のことを指すとしか考えられません。また、極右政党の党首がガザを「国(the country)」と呼ぶこともまずありえません。

 後段の「ハマスが攻撃を続ける意思を砕くような決定的な状況をつくることが必要だ」も、英文記事の「ハマースが戦闘を継続する意志を挫く決意にいたることが必要だ(need to come to a decision that we will break the will of Hamas to keep fighting)」という部分と酷似しますが、微妙に意味が異なります。つまり、「状況をつくる」と「決意にいたる」の違いですが、後者は前者よりも具体的かつ単一の手段を念頭に置いた表現と言わざるをえません。
また、演説がどれだけ長かったかは分かりませんが、同一の演説についての報道で、これだけ酷似していながら別々の部分をそれぞれに報道するということがあるのでしょうか。

 上記の「具体的かつ単一の手段」は、手前で書かれていなければ、その後に示されているというのが文の流れというものです。

 共同の記事では、同政党のスポークスマンは「日本に対する米国の抑止力についての話であり、核兵器使用に言及したものではない」と述べたとありますが、イスラエル人(ユダヤ人)が第二次世界大戦における「米国の抑止力」の対象としてドイツでなく日本を引き合いに出すことを不自然に感じずに納得してしまう人がいたら、どの程度の知性の持ち主でしょうか。わざわざドイツでなく日本を引き合いに出すのは、ドイツには起こらなくて日本に起こった出来事を示すためと考えるのが普通でしょう。

 そして、現在に進行中の武力行使の関係者が第二次世界大戦における「日本に対する米国の抑止力」を引き合いに出して、そこに核兵器使用のことが含まれないとされて納得できるとしたら、同様に知性が疑われるでしょう。