zames_makiのブログ

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Hashimura Togo(1917米)

監督:William C. de Mille、脚本:Marion Fairfax、原作:Wallace Irwin(実質に参加なし)
公開:19 August 1917 (USA) フィルムは現存せず
出演:Sessue Hayakawa早川雪州 ... Hashimura Togo(日本人執事、ハシムラ東郷)
Florence Vidor ... Corinne Reynolds 主人
Mabel Van Buren ... Mrs. Reynolds 主人夫人
Walter Long ... Carlos Anthony 主人の娘
Tom Forman ... Dr. Garland 娘の恋人→結ばれる
Raymond Hatton ... Reporter
Ernest Joy ... District Attorney 娘の婚約者→嫌い
Margaret Loomis ... O. Noto San(オノト)東郷と結ばれる女、オノト・ワタンナのもじり
Kisaburo Kurihara栗原喜三郎 ... Awoko
Horin Konishi古西豊龍 ... Nichi

原作者アーウィンのコラムニスト「ハシムラ東郷」と異なり完全な白人迎合映画。
主人公、東郷は、冒頭切腹、主人の娘の恋騒動を助ける正義の人、それにより自分の恋もかなう=
排日ではなく、エキゾチックな日本貴族、既にスターだった早川雪州を主人公に。異人種間恋愛を可に、白人から情けをかけられる日本人、大変な人気、穏やかなユーモアと誉める。

ハシムラ東郷

1907年雑誌デビュー→大変な人気、黄禍の化身、日本人人種差別、皮肉で描くアメリカ人批評、
東郷の姿は、当初は西洋人的、早川雪州はスマートな西洋人的姿→1935年以降、出っ歯、メガネ、丸顔など東條英機のように、あるいは侮蔑的日本人像に変化する。
東郷英語:プロパガンダpoppaganda
「最近よく先生方のする質問あります。白人と黄人はご一緒できるか?答えはハイです。そういう色っぽいことあるの私ご存知ですから。両者はサンフランシスコで一度、それからヴァンクーバーで一度ご一緒しました。でもそのようなご一緒は健康によくない。なぜならそれは破れガラス、銃撃、叫び声、民兵などの心地良くない多くの騒音をもたらすからです。日本人紳士はジュウジュツでご一緒し、アイリッシュ紳士はガスパイプ片手にご一緒します。ジュウジュツもガスパイプもともに相手を知る良い方法です。」

「ハシムラ東郷:イエローフェイスのアメリカ異人伝」 宇沢美子 東京大学出版会 2008

蝶々夫人Madame Butterfly(1915米)同種のエキゾチックな日本貴族映画:

監督:Sidney Olcott 原作:John Luther Long
公開:7 November 1915 (USA)
出演: Mary Pickford ... Cho-Cho-San
Marshall Neilan ... Lieutenant Pinkerton
Olive West ... Suzuki

アメリカの排日映画

1909〜1919に100本以上
ハリウッドの日本人俳優も排日映画の協力者として日系人から批判された:早川雪州、青山雪雄、日本人活動写真俳優組合を結成
 出典:青山雪雄「ハリーウッド映画王国の解剖」 博文堂出版部 1929 p281-282→国会図書館
・チートThe Cheat (1925)早川雪州→VHSあり
・イクの祟りThe Curse of Iku(1918)青木つる子Tsuru Aoki、監督:Frank Borzage
・パトリシア(WW1により製作中止)
・西部の影Shadows of the West(1920)日系1世の農夫が残忍なスパイ&性的変質者者(製作:在郷軍人
・汝の使用人は誰かWho's Your Servant?(1920)青山雪雄Yukio Aoyama、スパイの使用人、排日映画と広告「この映画を見ていかに日本人を雇うことが危険か知れ」「果たして日本人に雇い人として貴下の家を任せ得るか」(別名ハラキリ)
 参考文献:「南加州日本人史」南加州日本人商業会議所(1955)、「武侠世界」酔夢庵主人(1920)、The Politics of Predudice, R.Daniels(1990)

→早川雪州ら日本人俳優の思いは、日本人を正しく描くアメリカ映画を望みながら、一方では映画出演を増やすためには、排日映画にもいくらでも協力する(それ以外には出演が少ない)という矛盾。心では映画に反対でも言葉ではそうした排日映画を貶さない。この後早川雪州が戦後、日本映画で、正しく潔い日本軍人を好んで演じたのは、こうした経緯があれば理解できる。またそういう映画を誉めるのも理解できる。

(参考文献)

早川雪洲(シリーズ人間の記録) / 日本図書センター, 1999
フィルムセンター92:知られざるアメリカ映画, . NFC, 1993.
聖林の王早川雪洲 / 野上英之. -- 社会思想社, 1986.10
早川雪洲 / 森岩雄. -- 東洋出版社, 大正11
早川雪洲 / 霞浦人. -- 春江堂, 大正11


メアリー・フェノロサの小説The Dragon Painter(1906年)の映画化--日系人社会に向けた早川雪洲の戦略 / 板倉 史明 Lotus. (27) [2007.3]

太平洋のはざまで--早川雪洲サイレント映画期のスターダム / 宮尾大輔 国際交流. [2003]
Triple Consciousness: Sessue Hayakawa at Haworth Pictures Corporation / 宮尾大輔 アメリカ太平洋研究. 2 [2002.3]
映画スター早川雪洲--草創期ハリウッドと日本人 / 宮尾大輔 アメリカ研究. [1996]

私の映画回想録-20-早川雪州,大いに語る / 舟橋 和郎 シナリオ. [1993.12]
超意識の生活行 / 早川雪洲 大法輪. 22(11) [1955.10]
映画俳優ジュヴェ / 早川雪洲 芸術新潮. 2(10) [1951]
心臓の強い個展 / 早川雪洲 美術手帖. (通号 26) [1950.02]
早川雪州欧米みやげ話(対談) / 早川 雪洲 ; 小松 清 新女苑. 14(2) [1950.02]
早川雪州帰朝芸談 映画評論. 7(1) [1950]