zames_makiのブログ

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それでも夜は明ける(2013)黒人虐待

=過剰な抑制によるドキュメンタリータッチで失敗、黒人虐待の真実性を描けぬ2流映画。「夜明け前」が正しい題名
原題:12 YEARS A SLAVE 134分 アメリカ 配給:ギャガ 公開:2014/03/07
監督:スティーヴ・マックィーン 製作:ブラッド・ピット他 脚本:ジョン・リドリー 音楽:ハンス・ジマー
出演:キウェテル・イジョフォー(ソロモン・ノーサップ/プラット)主人公、東部の自由黒人だったが誘拐され南部で奴隷になる。友人の来訪で救出される。
ルピタ・ニョンゴ(パッツィー)若い黒人奴隷、優秀な綿花摘み人だが夜は主人の慰み者になっている。
ベネディクト・カンバーバッチ(フォード)最初の御主人、金のためプラットを転売
マイケル・ファスベンダーエドウィン・エップス)2番目のご主人。宗教熱心だが奴隷には過酷で、何度も主人公を殺そうとする。
サラ・ポールソン(エップス夫人)主人と不仲。主人が黒人女と寝るのを阻止できないで逆に黒人につらくあたる
ギャレット・ディラハント(アームスビー)元奴隷監督人。深酒のせいで黒人奴隷と一緒に綿花摘み労働に従事。主人公の頼みを主人にばらし這い上がろうとする
ブラッド・ピット(バス)奴隷解放論者。カナダ人。主人公の頼みで救出依頼の手紙を書く
【解説】衝撃の伝記ドラマ。ニューヨークで普通の市民として自由な生活を送っていた主人公が、ある日突然何者かに誘拐され、南部の農園に売り飛ばされた末に体験する想像を絶する奴隷生活の行方を描く。

オフィシャル・サイト=http://yo-akeru.gaga.ne.jp/

感想

盛り上がりに欠けつまらない映画、奴隷制度への政治的な批判も、奴隷が受ける過酷な仕打ちも中途半端な描写で、何より物語の展開が必要以上に平坦に抑制され起伏なくよい意味の映画らしさに欠ける。おそらく伝記の事実に即し、事実を描く事で観客にアピールしようとしたと思われるが、それが主人公の転落と上昇という物語自体も抑制し意味のないものにしてしまっており失敗している。
 奴隷が殴られたり、縛り首になるシーンもそれほど深刻かつ、長くもなく迫力に欠ける。主人公は早々に生き延びるために素性を隠し、すっかり「よい奴隷」になってしまい、生まれながらに奴隷という奴隷根性を染め抜かれた黒人の哀れさ、それに反駁する黒人への信じがたい白人の残酷さ、同じ人間を迫害するために生じる白人の精神的荒廃、女性的に優しくても奴隷制には賛成の白人女性の残酷さ、などが中途までしか描かれず、ひどく映画として完成度が低い。
 主人公が読み書きできる大工仕事でも何でも優秀な黒人であり、生まれながらに諦めている南部の黒人ではなく、奴隷制度に抵抗する黒人としての抵抗と抑圧(仕打ち)の物語を期待したが、すぐになびきがっかりした。又救出に向け手紙を出す部分も、いきなり救出が現れすぐに農園を去ってしまい、あまりに性急でつまらない(例え伝記に書かれていても)。全体が白人も奴隷達も何を感じ考えているかあまり描写せず、どんどん流すのが迫真性を生むという演出という狙いと見えるが、肝心な点については描写しメッセージを発しないと映画として、2流だろう。5点満点で2.5点。