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抑止力は何かシンポ「なぜ沖縄か?〜日米同盟を問う」発言記録

沖縄タイムス社シンポジウム「なぜ沖縄か?〜日米同盟を問う」
告知:http://www.okinawatimes.co.jp/special/sympo20100527_live/
ネット配信:http://www.ustream.tv/channel/%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%B9-%E6%8A%91%E6%AD%A2%E5%8A%9B-%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D
感想=抑止力についてたいへん細かい説明のある大変よいシンポジウムだ。鳩山の酷い失敗の後でも問題解決への光明を与えてくれる。特に鈴木佑司(法政大)の問題把握がすばらしい「これは沖縄の問題ではない、アメリカへの隷従をどうやって抜け出すかという日本全体の大問題だ」、まったくその通りだ。抑止力の呪縛を抜け、基地を沖縄に押し付ける事で痛みを感じぬまま「日米安保賛成」という発言者はこれを聞くべきだ。

視聴メモ

日時:2010年5月27日(木)
出席者:問題提起=屋良朝博(沖縄タイムス)パネリスト=鈴木佑司(法政大・アジア政治)、森本敏拓殖大・安全保障論)、高野孟(ジャーナリスト)、我部政明琉球大・国際政治)、司会=長元朝浩(沖縄タイムス)、
主催:沖縄タイムス
以下はほぼ全発言、一部主旨にそって整理あり

沖縄海兵隊はどんな部隊か(導入)

問題提起「沖縄海兵隊はどんな部隊か」(屋良朝博):沖縄にいる米軍の70%は海兵隊だ。海兵隊は米国本土以外にはアジア太平洋にしかいない。そこの海兵隊は韓国、豪州、タイ、シンガポール、フィリピンにいる。その60%は日本に、更にそのほとんどは沖縄にいる。
 海兵隊朝鮮戦争時1950年には山梨県と岐阜にいて沖縄にいない。朝鮮戦争の後、本土と韓国から沖縄に移転した。屋良はずいぶん資料を探したが理由は不明であり軍事的合理性ではなく政治的理由である。当時山梨県では基地反対運動が盛んになっていた。また海兵隊の沖縄移転で大面積の基地が検討され多数も住民強制移動も検討された。
 普天間のヘリは27機、輸送できる兵士は700人、輸送機もあわせると1800人ほど、しかし物資も積み込むと輸送人数はより減る。沖縄はサンゴのため軍港が建設できない、海兵隊輸送艦佐世保にあり輸送兵員数は2000人。
 海兵隊は作戦により3段階で部隊を編成するが、普天間にいる基地の部隊の主な役目は海外米国人の救出だ。日本にいる海兵隊は何人か?日本駐留17000人、再編後6000人残ると計算される。できる作戦は限定されたものだ。
 もし戦争の時は米国本土から海兵隊はくる、例えば湾岸戦争では全軍で50万人動員し、ほとんどは飛行機で空輸した。戦争時にはこの規模であり普天間の部隊の規模は有効ではない
 普天間部隊も含め海兵隊はローテーションで各国で演習しており年に半分程度しか沖縄にはいない。司令部がグァムに移るのは確かだ、中枢はグァムであり、海兵隊はアフガンなど世界に展開するのが目的で実戦部隊が太平洋地域どこにいても同じだ。海兵隊は各国でローテーションで訓練しており沖縄でしか訓練できない訳ではない。

なぜ鳩山政権の普天間対処は迷走したのか?

長元(司会):なぜ鳩山政権の普天間対処は迷走したのか?
高野猛:謎だ。官僚主導の政治打破が始まりだった。2009年末には政治主導がうまくいかぬ様が明らかだった。鳩山の外交アドバイザー当初は寺島実郎氏が岡本行夫氏に代わり、その直後から鳩山&岡田は抑止力と言い出した。
 抑止力と言い出したら駄目だ、米国&官僚などの使うマジックワードとなり内容もわからないままそれが決定的とされる。私は抑止力の中身を問えと何度も書いたが駄目だった。
 また平野官房長官という最悪のミスキャスト。平野は調整役なのに力量がないのに自分で決めようとして何もできなかった。自分でルース大使に会い案もないのに沖縄に来た。また鳩山が5月末決着と言ったのも悪い。まとめ=迷走は鳩山の用意のなさ、政治主導の失敗、平野の無能力による。
森本敏:理由は(1)この問題にどう対処するか政権内でちゃんと協議していない、その度ごとに目先の対応の相談するだけだから。(2)平野が悪い、目先の問題だけに関心でしかもその情報がもれる。(3)最後は決まらず官僚主導で辺野古に回帰した。

テーマ1:海兵隊の抑止力と何なのか?

長元(司会):テーマ1にいく海兵隊の抑止力とは?
我部政明:抑止力は3つの要因からなる。1被攻撃側の軍事力とくに反撃する力。2相手がそれを認識していること、3相手が上記を合理的に判断できること。鳩山氏は軍事力=抑止力としているがそうではない、相手がそれをどう評価し考えるかが重要だ。まず攻撃されても生き残り反撃する能力がないとだめ。そして同じ軍事力でも相手の評価により抑止力は異なる。例:警察官の拳銃は犯罪者には抑止力だが非犯罪者にはそうではない。そして軍事力があっても相手が合理的に判断できなければ抑止力にならず、例えばテロリストとの戦いの場合死を恐れぬ場合抑止力は成り立たない。


長元(司会):鳩山は最近韓国哨戒艦事件をあげるがどうなのか?
鈴木佑司:まず主題から、これは沖縄の問題ではない、アメリカへの隷従をどうやって抜け出すかという日本全体の大問題だ。例:1960年安保の改定で安保の草稿は日本の官僚が書いたと言われてきたが、私が調べたら実はアメリカが書いたものだった。今回もそうだ。全体にひどい隷従がおきている。
 国保守党のキャメロンは最近「隷従的でない対米関係作りたい」と言った。英米でさえ対等でない。アメリカは日本を完全になめている、日本が手詰まりになったらアメリカの案を出してそれでやらせるのを繰り返してきた。だから鳩山が対等を言ったのは偉い、それを日本人が支えなければ無理だ。

 そしてひどい政治の劣化だ。1鳩山の言葉「命がけ」は嘘だった、恐るべき政治の劣化だ。2沖縄は戦争で多くの死者を出した、にもかかわらずなぜ基地は沖縄か?私の調べた米国資料では明確に本土で基地反対だったから沖縄に持ってきた、まったく軍事的理由ではない。1960年安保では少なくとも政治家は真面目に努力した。本土一般国民も運動した、今どちらもない。酷い。また3日米安保、アンザス同盟どちらも冷戦下でのアメリカの秩序のためのもの、冷戦終ったのになぜ変えられないのか?政治家の課題だ。

 アジアの日米安保への反応:日本の大メディアではアジア諸国にとっても日米安保は大事などと書くがそんな事はまったくない。例えばマハティール首相「日米同盟こそがアジアの平和の障害になっている」リー・クアンユー首相など、アジアで共同体作ろうとしている。テロ対策のための抑止力というが誰のためか?アメリカのためのだ。例えばアメリカの安全保障関係者の論文読めば、対テロで自分が傷つきたくない、だから日本にやらせるという意図明確に書かれている。


長元(司会):海兵隊は沖縄に必要ないとの話、目から鱗だ、沖縄でも地勢学的であきらめていた人多い
屋良:最近米で沖縄でなくてもよいとの論文出てる、輸送機を使い商用船を使う。嘉手納に輸送機なく米国本土から飛ばすなら一緒に兵士も輸送すればよい訳で沖縄にはいらない。ある官僚はなぜ海兵隊は沖縄でなければならぬのか?とひつこく質問すると、日本政府がリスク(政治的面倒)負いたくないだけと明かした。

テーマ2:なぜ沖縄だけに負担がいくのか、差別か

長元(司会):テーマ2負担と差別に入る。3つの波があった:1950年代に本土から沖縄に移転。1972年復帰前後本土は基地減ったが沖縄は減らない。復帰後、例えば1992年法師山発言「基地と共存しろ」岡崎「誰かが我慢しなければならぬ」猪口「沖縄は朝鮮半島の安定につくしている」と言う。日本国民には総論賛成だが自分の所には基地置かせない。

我部:まったくひどい。アジアからもそう、リー・クアンユーは自国は負担しないから「日本に米軍がいるのはいいこと」と言う。アジアでも日本でも「他人=沖縄が負担するから、米軍いるのはいい事」となる。この構造を打破する論理は平等性と総量を減らす、しかない
森本:先の議論で一般論の抑止力は我部に同意するが、海兵隊の抑止力は違うと思う。アメリカ軍がどう考えるかが大事だ。米は西太平洋地域全体に対する対応力保ちたい、だから沖縄という。結論としては私はアメリカに同意しない、沖縄でなくても日本であればよい、ただグアム・テニアンは駄目だ。そして結果として本土は政治的に無理なので基地は沖縄だ。軍事的には海兵隊は沖縄である必要はない。
我部:政治的には沖縄ならいいのか?
森本:過去の歴史的経緯からだ


鈴木:抑止力は軍事用語である事に注目すべきだ。普天間撤廃の決定も米国の国務長官でなく国防長官が決定した。鳩山が抑止という軍事的事柄を理由にするのは、政治を軍事にゆだねる政治の貧困だ。抑止力など問題外との声があがって当たり前なのになぜならぬ。
 なぜアメリカは未だにドイツに基地おくのか?今でも敵国だからだ、米は敵国条項をはずさない。日本も同様だ。政治的にアメリカの警戒を解かねばならぬ
 神奈川で基地比率5.6%に下がったのは住民が直接アメリカに交渉したから。外務省は止めるが。アメリカは住民の支持がないと基地だめとし、住民が交渉するといらぬ基地用地は返した。住民が下から徹底した努力せねばならぬ、ふらふらする政府ではこの事なければとてもだめだ。
高野:鳩山の唯一の功績は「沖縄は基地に反対している、移設でなく撤去だ」が日本全体に知れ渡った事だ。抑止力の点で海兵隊は日本でなければならぬという森本の説に賛成できない、結局全体でという曖昧な話だろう。
(休憩)

テーマ3普天間問題の解決の糸口

長元(司会):テーマ3普天間問題の解決の糸口は?
鈴木:沖縄が自信を持つことだ、アメリカは地元を騙せない事を認識している。13年もかかったものはすぐには解決せぬ
 ロードマップを持つことだ、しばらく膠着状態になるだろう、その間に移設でなく撤去だと世論形成を行う。インドネシア外務大臣はなぜ嘉手納を返せと言わぬのかと言った、冷戦崩壊でタイ、フィリピンでそうなっている。解決への前向きのビジョンを持つことだ
我部:政府は普天間が危険だと本当は認識していない、本当に危険なものならすぐに止める、電車とか原発とか。


長元(司会):開場からの質問にいきます。本土は政治的に無理ならどうなるのか、なぜテニアンでは駄目なのか?
森本:鳩山が5月決着と何度も言うので政治的にけじめをつけなければならない。民主政権続くのでアメリカもそれに付き合わざるを得ない又米国の予算も進んでいる。なので5月は辺野古しかない。今の迷走ひどく少なくとも問題対処は自民党政権の方がよかった。5月28日の結論はたんに一応であり通過点にすぎぬ。


長元(司会):メディアへの批判、マスコミはアメリカの手先なのか?
屋良:1995年の少女暴行事件で本土マスコミは海兵隊は何かまったく知らぬまま記事書いてた。だから事件を政治視点(沖縄政治家の対立)でしか書かない。今も似ている。本土マスコミは問題の主眼を書かない。マスコミは自分では米の手先と思ってない、ただの能力不足だ


長元(司会):これから何をすべきか?
我部:我々の抵抗はけして終らない。人が住んでいる限り負けないし終わりはない。
森本:あちこちぶつかりながらも進んでいる。私のやるべきはこれを日本の政党間の政争の具にしない事、私は自民党にそう進言する。
鈴木:アメリカの問題点=米で普天間問題まったく話題にならない、しかしそれは日本に責任ある、アラブでさえロビー活動やっているのに。日本の問題点=反省がどこからも誰からも出てこない事。
高野:地元は拒否する、これから本質的な議論がはじまるのだ。屋良:「沖縄に基地をおしつける軍事合理性はまやかし、政治的差別がある」が日本全国民が認識すればどうなる?それに期待する。基地は住民の支持なければ成り立たぬ、実は脆弱なものだ。

長元(司会):まとめ、非常にたくさんの質問がよせられた新聞社に持ち帰る。絶望してはいけない。住民が拒否すれば絶対移設できない。

日時:2010年5月27日(木)
午後7時(6時30分開場)
会場:浦添市てだこ小ホール
参加費:入場無料、先着300人
出席者:パネリスト=鈴木佑司氏(法政大学教授)、森本敏氏(拓殖大学大学院教授)、高野孟氏(イ ンサイダー編集長)、我部政明氏(琉球大学教授)、コーディネーター=長元朝沖縄タイムス論説委 員長、問題提起=屋良朝博沖縄タイムス論説兼編集委員
主催:沖縄タイムス
鳩山由紀夫首相が 米軍普天間飛行場の移設先を名護市辺野古とし、その根拠に挙げた
在沖米海兵隊の「抑止力」や日米 同盟の在り方について議論を深めます。

抑止力は「神話」シンポの聴衆訴え(沖縄タイムズ)

上記シンポジウムに関する沖縄タイムズの記事2010年5月28日
http://www.okinawatimes.co.jp/article/20100528_6832/
抑止力は「神話」〜シンポの聴衆訴え・全国の問題だ/強く交渉して/基地集中は差別

 「政治家がリーダーシップを取り戻すべきだ」(高野孟(はじめ)さん)、「沖縄になければ抑止力を発揮できないという論理は破綻(はたん)している」(森本敏さん)。パネリストの発言に大きな拍手がわいた。浦添市内で27日開かれた「なぜ沖縄か?〜日米同盟を問う」シンポジウムには、多くの人たちが詰め掛け、パネリストの議論に耳を傾けた。

 米軍普天間飛行場の移設問題で会場からは「鳩山政権はなぜアメリカに(県内は)ノーと言えないのか」「沖縄の差別的な状況をどう解消すればいいのか」などの質問が出された。

 シンポジウムを見守った比嘉光子さん(66)=北谷町=は「何で沖縄なんですか。全国の知事は、どこも受け入れない。全国の人たちが考えないといけない問題なのに」と訴えた。

 五十嵐恵さん(22)=フリーター、東京都=は「明日、日米両政府が普天間辺野古移設に合意するかもしれない。沖縄のこと、軍事のことを勉強したくて来た」と話した。

 親子での来場者も。川満貴子さん(46)=会社員、那覇市=は「普天間が沖縄になくてもいいということがよく分かった。基地は地元の住民が賛成しないと維持できない。だからもっとそうした声を出すべきだ」と話した。長女の美貴さん(那覇高校3年)は「日米関係が対等ではない。アメリカにもっと強く交渉してほしい。いつまでもペコペコする必要ない」と訴えた。

 普天間飛行場を抱える宜野湾市から来た男性(72)は「沖縄は戦前も戦後もずっと差別が続いている。普天間や、ほかの沖縄の基地がどうなるのか知りたくて来た。政府は抑止力といっているが、沖縄じゃないと抑止力がないというのはうそっぱちだ」と語った。また、宮城静子さん(65)=同市=は「沖縄に基地が集中しているのは、本当に差別というしかない。一致団結して、今、声をあげないといけない」と訴えた。