zames_makiのブログ

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ホロコースト−アドルフ・ヒトラーの洗礼(2002)

AMEN. 米:EYEWITNESS 独:DER STELLVERTRETER
126分 フランス/ドイツ/ルーマニアアメリカ  劇場未公開DVD発売
監督:コスタ=ガヴラス 脚本: コスタ=ガヴラス
出演: マチュー・カソヴィッツ
ウルリッヒ・トゥクール
マーセル・ユーレス
ウルリッヒ・ミューエ
=あらすじ:ナチス親衛隊の男が、人道的に見過ごすことのできない国家的犯罪を阻止しようと、カトリック教会の若い修道士と共に奮闘する姿を描く。ナチス親衛隊でありながら、ユダヤ人の大量虐殺を目の当たりにしたことで、何とか、その存在(ホロコースト)を世に知らしめようとする男と、それに協力するカトリック教会の若い修道士の姿を描いた作品。若い修道士が何度も法皇に、ドイツに対してのユダヤ人虐殺を非難する声明を発するように促しても、法皇側は何事も行おうとしない。アメリカ大使がホロコーストの存在を認知せず、そんなことが行われているはずがないという態度。若い修道士リカルドが、法皇がドイツを非難する声明を発せず、ただ傍観してる様を見て、神の存在に疑問を抱く。(個人映画感想より)


=この映画で描かれているローマ法王ピウス12世(ピオ12世)のホロコーストへの沈黙(黙認あるいは容認)は真実なのか?それはイスラエルユダヤ人による「イスラエルを批判するバチカン反ユダヤ主義」という宣伝なのではないか?沈黙と容認・ナチ協力の距離はどれだけあるのか?


=◆ガヴラス監督は、映画『アーメン』について次のように語っている。「ホロコーストに対するバチカンの『沈黙と無関心』は、すでに歴史的に証明された事実である。ただ、私が描きたかったのは、現代社会でもそうした『沈黙と無関心』が蔓延しているということであり、映画での教皇(ピオ12世)の沈黙は、そのメタファー(隠喩)に過ぎない。」「バチカンは戦後、ナチス戦犯の逃亡を助けた。映画にはそれも反映させている。」(出典不明:http://hexagon.inri.client.jp/floorA6F_hb/a6fhb400.html#01


=2009/5/12 仏テレビF2は「ピウス12世はナチス批判を公言しなかったが、戦争中は1942.12には人種で無差別に殺してはいけないとホロコーストを批判しているし、戦争中多くのユダヤ人を救った。イスラエルも感謝している。戦争中ホロコーストから救われたユダヤ人の95%はバチカンによるものだ。」とイスラエルの言い分を否定する小特集コーナーを設けて放送した。


(参考書)
◇栄光の冠:ピオ十二世の生涯 / アルデン・ハッチ,シーマス・ウオルシェ エンデルレ書店, 1959
ローマ教皇ナチス / 大澤武男. 文春新書, 2004=ジョン・コーンウェルの本に強く依拠
◇ジョン・コーンウェルJohn Cornwell 『ヒトラー教皇(Hitler's Pope)』(英国、1999年)=正確さは研究者から強く批判されている→バチカン・ミステリー / ジョン・コーンウェル 徳間書店, 2002
◇コンコルダートの宗教の自由--ナチス・ドイツとヴァチカン / 斎藤 靖夫 法学セミナー増刊 (通号 3) [1977.10]
◇ピウス12世著「メディアトル・デイ」(Mediator Dei)(カトリック名著案内) / マーフィー ジョン.J. 世紀. (通号 263) [1972.04.00]
◇ピオ12世とマスコミの倫理 / 川中康弘 新聞研究. (通号 104) [1960.01]

=本「ローマ教皇ナチス」に対する批判
 甚だしいバイアスに満ちた書物。主張を鵜呑みにしないように。教皇ピウス十二世は「親ナチ派」(本書p.5)であり、潜在的な「反ユダヤ」主義者(p.180)であったとして、ナチスによるユダヤ人大虐殺の責任を教皇になすりつけた本。
(1)まず、カトリック教会の教説は、反セム主義をはじめとするナチス思想と根本的に相容れないものであり、のちに教皇ピウス十二世となったパチェリ自身、外交官としてドイツ在任中の1921年の時点から、ナチスヒトラーの教義を公の場で批判してきました。

(2)また、ピウス十二世は、ナチスの迫害から極めて多数のユダヤ人をかくまい、逃亡に協力してその命を救いました。その功績に対して、エルサレムブカレストザグレブといった世界各地のラビ達、World Jewish Congress 、American Jewish Commiteeといったユダヤ人指導者たちや組織が、ピウス十二世への感謝をたびたび表明しています。

 本書は、著者自身あとがきで述べているように、コーンウェルやショルダーの著作に依拠して書かれたものですが、種本となったこれらの本自体がバイアスに満ちた本なので、鵜呑みにすることは極めて有害です。
 コーンウェルの書物に対する学問的な批判や、新資料に基づくピウス十二世擁護の本はすでに多数存在しているので、本書の代わりにそちらを読むことをおすすめします(例えばPierre Bletの著作やRonald J. Rychlak ,Hitler, the War, and the Pope(Our Sunday Visitor) 。ネット上ではEWTNのLIBRARY DOCUMENTS ON PIUS XII
)。