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民主党前原誠司氏の安全保障論への反論

民主党前原誠司氏は安全保障論では自民党と近い、彼は、「戦力の不保持」を規定した憲法9条第2項の改正を以前から表明しており、「集団的自衛権」についても「行使するべき」という考えを述べている。 氏の主張の最重要点は集団的安全保障権の使用にあると自分のブログでも書いている。具体的には以下だが、その根拠はやはり曖昧/論争的なものだ。


前原氏の発言出典=対談「『防衛省』誕生で日本は『普通の国』になれるか」、『諸君!』 2007年3月) (http://www.maehara21.com/kiji/kiji07_03.htmlで読める)

そうですね。ミサイル以外でも、今日本に起こりうる危機は、まず第一に朝鮮半島台湾海峡における「周辺事態」、第二に北朝鮮による弾道ミサイル発射、第三にテロ、第四に中国の海洋覇権拡大という、大まかに分けて四つに集約されます。


第一のケースなら、日本が米軍の後方支援をしていて武力行使の一体化にならざるを得ない事態に直面したとき、現行解釈では「もう協力できません」といって引き揚げなければならない。これでは日米同盟のみならず日本の安全保障にとっても極めて危機的な状況になってしまいます。ですから、一体となって支援するという枠組みがやはり必要になってくる。


第二の弾道ミサイルについては、アメリカに向けて慣性飛行中(ミッドコース)のものもあれば、ブースト(発射直後)段階でどこに撃ち込まれるのかわからない状態のものもある。こうしたミサイルを、どの段階で叩くのか?日本上空を通過してアメリカに飛んで行くミサイルを「これはウチに向けたものじゃないんで」と看過してしまうなら、先と同様に日米安保も日本の安全保障も根本から崩れてしまう。ブースト段階で発見したとしても、「集団的自衛権の行使はしないから何もしません」と言うのか?


こうして具体例を逐一検討していくと、やはり「集団的自衛権の行使が出来るような仕組みにしなければならない」という結論にならざるを得ません

(反論)
第一のケース:前原氏は北朝鮮で行動するアメリカ軍を自衛隊が後方支援する場合、これ以上は出来ないというラインが存在するのが問題だとする。「これでは日米同盟のみならず日本の安全保障にとっても極めて危機的な状況になってしまいます」としている。しかし極めて危機的状況とは何か?


反論=これ以上は出来ないというラインとは、即ち自衛隊が戦闘に巻き込まれず武力行使をしないですむ、地理的・論理的距離をアメリカ軍ととる事だろう。アメリカ軍からすれば自衛隊が離れた場所にしかおらず、密接な補給に不便をきたすのが最大の問題だろう。

 安保条約からアメリカ軍は自軍が自衛隊によって防衛されないと、政治的に納得せざるを得ないので日米同盟上、問題は生じない。またアメリカ軍が攻撃されやすくなる事で日本への直接的な攻撃の危険の増大は、具体的に検討すべきであり、一般論では危機的と言えない。

 すなわちこの第一のケースの場合でも、アメリカ軍から見て大きな不都合は起きず、日米同盟および日本の安全保障に危機的状況は起きないと考えるのが自然だろう。


第二のケース:前原氏はミサイル防衛を訴えている。現状で日本への大陸からのミサイル迎撃能力はそう高くないのではないか?日本にこようがアメリカに向かって飛んで行こうがそのミサイルを打ち落とす高い能力が自衛隊にあるように思えない。

 ここでは理想的に自衛隊にそうした高い能力があるとする。その場合でも実際の運用は大陸から、東へ日本を通過するミサイルは「全て迎撃する」のが、自然だろう。ミサイルの弾道が日本を通過しアメリカへ向かう可能性が高いとしても、日本上空を通過するものを安全のため迎撃するのが普通であろう。

 この場合、迎撃システムのデータを国会が精査できるのは、こうした戦争状態が終了した後であり、その上でデータを調べて初めて過剰に自衛権を行使したか否か、が問題となる。現実的に日本の防衛上、それは本質的な問題ではない。すなわち日本の防衛上は心配しなくてよい事態であり、これを理由に集団的自衛権を行使するべきではない。