zames_makiのブログ

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映画「ムルデカ」についての新聞記事

じゃかるた新聞 2001年3月16日
映画「ムルデカ」にクレーム・駐日インドネシア大使・「歴史に反し、国民の威信落とす」・制作者、一部シーンをカット
http://www.jakartashimbun.com/pages/20010316top.html
 日本占領下のインドネシアで祖国防衛義勇軍(PETA)の創設にかかわり、戦後は対オランダ独立戦争に参加した日本人将校をテーマにした映画「ムルデカ」(独立)が完成、五月十二日から日本の東宝邦画系で上映されるが、プロトディニングラット駐日インドネシア大使はこのほど、「インドネシアの歴史や習慣にそぐわない点がある」として、東京映像制作の浅野勝昭社長あてに文書で善処を求めた。制作者側は一部シーンの削除に応じ、予定通り上映されることが決まった。浅野社長は「日イ両国の友好のために制作した映画であり、大使のご要望に応えた」と語っている。


 この映画は、東条英機を描いた映画「プライド」の制作グループが、「日本人とインドネシア人の若者が独立戦争をともに戦いながら成長していった姿を描きたい」(浅野社長)との狙いを込め、昨年七月から九月まで二カ月半、ジャカルタ、ボゴール、ジョクジャカルタで大がかりな現地ロケを行って、完成させた。監督は藤由紀夫。山田純大津川雅彦らが出演。二時間二分の作品。
 プロトディニングラット駐日大使によると「インドネシア人と日本人、特に若い世代の相互理解を育てることが期待されている」と述べて、この映画の意図を理解した上で、(1)映画はインドネシア独立という誇りある歴史を背景にしている(2)両国のダイナミックな歴史関係の中には、両国民の見方がまだ一致していない点があり、センシティブな事柄が存在する−などの理由から「両国の摩擦を避けるために、ふさわしくない、度を超えている場面」を削除するように求めた。
 その一つとして同大使は「冒頭で、インドネシアの年老いた女性が日本兵の足の甲に口づけをする場面」を指摘。
 これは「歴史の真実を反映していないだけでなく、インドネシア国民の威信を落とし、心を傷つけるものだ」と批判した。
 物語は一九四一年十二月の日米開戦の直後、ジャワ島に出陣してきた情報将校が、タンゲランに青年道場を開き、インドネシア人の若者を軍人として育てていく姿を描く。
 問題のシーンは、主人公の島崎武夫中尉に、ジャワの老人がひざまずいて中尉の足の甲に口づけするシーン。
 浅野社長は「口づけではなく額を付けるシーンだったが、誤解を避けるため、その部分二、三秒をカットした。両国の友好を描くのがこの映画の目的であり、その精神に沿って大使のご指摘に応えた」としている。 
 このほか、インドネシア側は国歌「インドネシア・ラヤ」が歌われる場面などについて「習慣と違う」と指摘したが、制作者側は相互に理解を深めたとしている。
 

シャハリ・サキディン在日インドネシア大使館参事官の話

 制作会社に手紙を送り、インドネシア人の感情を傷つけると思われる部分の削除を要請した。インドネシア上映の予定もあるので、良好な日本とインドネシアの関係にヒビが入ることを避けるためだ。
 一番の問題の箇所は、島崎武夫中尉がジャワ島に上陸する時、ジャワ人の老女が中尉の足に口づけをするシーン。ジャワでは結婚式の時、新婦が新郎の足を洗う儀式はあるが、口づけなどしない。そんな習慣はない。夫婦だったら足に口づけしてもいいが、映画では侵略者の足にインドネシア人が口づけしている。そんな歴史はない。インドネシア人はこのシーンを見て怒りを感じるだろう。だからこのシーンの削除を要請した。
 両国にある繊細な問題をセンセーショナルに描き出す必要はない。ムルデカは作り手の主観の入ったロマンスでありフィクションだから、映画全体については見た人が評価すればいい。
 しかし、この映画の試写を見たインドネシア人たちは「まるで日本がインドネシアの独立を勝ち取ったみたいに描かれている。行き過ぎだ」と言っていた。映画で描かれている日本人のヒロイズムはインドネシア人には理解が難しいものだろう。
 制作会社側は非常に協力的でインドネシア人の気持ちを理解してくれた。感謝している。