zames_makiのブログ

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「ラストゲーム 最後の早慶戦」

初公開年月 2008/08/23 劇場公開(シネカノン他)
監督:神山征二郎 脚本: 古田求 主題歌: 鬼束ちひろ『蛍』
出演: 渡辺大 柄本佑 和田光司 脇崎智史 片山享 中村俊太 原田佳奈 柄本明 宮川一朗太 三波豊和 山本圭 藤田まこと 富司純子 石坂浩二
…戦局が悪化の途を辿る1943年。「野球は敵国アメリカのスポーツだ」と六大学野球が廃止、さらに学生に対する徴兵の猶予が停止し、彼らはバットを捨て、銃をとらざる得ない状況に。戦地に赴けば二度と帰れないかもしれない若者たちに、せめて生きた証を残してやりたい──慶応義塾塾長の小泉信三は、早稲田大学野球部顧問の飛田穂州に「早慶戦」を申し込む。小泉の切なる願いを飛田も喜んで受けとめるが、早稲田大学総長は頑として拒絶。しかし飛田の強行突破で、遂に1943年10月16日、早稲田の戸塚球場にて幕を開けた最後の早慶戦。それは、別れであると同時に、明日への希望に満ちたゲームだった……。
公式:サイト http://www.lastgame-movie.jp/

東京新聞紹介記事 2008年8月19日 朝刊

23日公開『ラストゲーム 最後の早慶戦』 戦争の悲惨さ より実感

 昭和十八(1943)年十月十六日、早稲田、慶応義塾両大学の野球部員たちが戦場に向かう直前に敢行した「出陣学徒壮行 早慶野球戦」。この伝説の一戦の模様を描いた映画「ラストゲーム 最後の早慶戦」が二十三日、公開される。「ひめゆりの塔」など多くの非戦、反戦作品を撮ってきた神山征二郎監督が今回、舞台としたのは銃弾が飛び交う戦場ではなく、球場という身近な場所。「戦争の悲惨な状況をより実感してもらえるのでは」と語っている。 (小田克也)

 一九四三年四月、東京六大学野球連盟は文部省から解散を命じられる。「野球は敵国アメリカのスポーツ」との理由からだ。学生の徴兵猶予も九月に停止され、野球部員たちも十二月に入営することが決まった。

 早大野球部顧問の飛田(とびた)穂洲(すいしゅう)(柄本明)は出陣の日まで練習を続けると言い切るが、選手の戸田順治(渡辺大)の父親(山本圭)らは「非常時に外国の球遊びとは」と冷ややか。

 そんなある日、慶応義塾塾長の小泉信三石坂浩二)が「若者たちに生きた証しを残してやりたい」と早慶戦の開催を飛田に申し入れる。だが早大総長の田中穂積(藤田まこと)は、国家総動員の折、文部省や軍の神経を逆なですると開催を認めず、飛田は強行突破を決意。徴兵検査の九日前、「伝説の一戦」が早大・戸塚球場で始まる。

 死ぬのが怖い。野球も恋も、死ぬのを忘れたいからやっている−。早大合宿所の薄暗い部屋で黒川哲巳選手(柄本佑)が、こんな本音を漏らすシーンがあり、神山監督は「戦争で死ぬため、この世に生まれてきたとは思えない。あまりに酷薄。そして、それを生み出すのが戦争だ」。

 戦後五十年にあたる一九九五年前後、監督は特攻隊員の実話をもとにした「月光の夏」(93年)、朝鮮半島から福岡の炭鉱に送り込まれた男性の半生を描いた「三たびの海峡」(95年)、「ひめゆりの塔」(同)など戦争を題材に作品を撮り続けた。

 監督は声高に改憲論議がなされたり、過去の戦争を正当化したりする当時の状況に危機感を強め、今後は非戦、反戦を鮮明にした作品を撮れなくなるのでは、と強い焦りを感じたという。

 その懸念は今もつきまとう。戦争を描いた最近の映画についても、「戦争を気分で描いている作品が多い。『散る美学』で戦争を描いてはいけない」と憂慮する。

    ◇

 監督生活三十年を超えるベテランだが、作品づくりは常に新しい経験の連続だ。今回、主演を務めた渡辺大との出会いもその一つ。監督は「これほどの逸材に会ったことはない。文学青年でも侍でも、何でもこなせる。それが本当の二枚目であり、映画スター。さすがは渡辺謙さんの息子」とほれ込む。

 苦労したのは早慶戦のシーン。当時の戸塚球場をほうふつさせる昔ながらの石段の球場を探して全国を回り、長野県上田市内でようやく見つけた。

 当時、試合を観戦した学生は六千人。そのエキストラ集めも大変だった。一日当たり千人を目標として土、日曜に集めたが、茶髪や長髪の若者はもちろんNG。人手が足りず信州大学の学生はじめ慶応出身の母袋(もたい)創一・上田市長まで応援席に座った。

 今後も平和の尊さを作品に込めたいという監督は、「核兵器廃絶論議保有国からも出てきている。アフガンやイラク戦争を経て、人類が戦争に嫌気をさしているのではないか。あきらめたもんじゃないと思う。むろん油断はできないが…」と複雑な表情を見せる。
    ◇
 こうやま・せいじろう 1941年、岐阜県生まれ。日大芸術学部映画学科中退。65年、新藤兼人監督主宰の近代映画協会に加わり、助監督を務める。71年の「鯉のいる村」で監督デビュー。87年の「ハチ公物語」が大ヒット。「遠き落日」「郡上一揆」「大河の一滴」など歴史やヒューマニズムを描いた作品多数。

読売新聞映画評 2008年8月22日

時代の不条理 訴えかける
 「ハチ公物語」「月光の夏」「三たびの海峡」……。神山征二郎監督は、よく知られた事件や人物だけでなく、忘れられようとしている小さな出来事、決して忘れてはいけないことを、ヒューマニズムあふれる筆致でフィルムに定着させてきた。第2次大戦下、学生たちの出征直前に行われた早大と慶大の野球対抗戦を描く本作も、そんな神山監督らしさにあふれている。

 1943年、それまで徴兵が猶予されていた学生も戦場にかり出されることになり、慶大の小泉塾長(石坂浩二)が早大野球部顧問の飛田(柄本明)に試合を申し込む。

 今では想像できない人も多いだろう。戦争に行くことが義務だったことを。敵国のスポーツだとして東京六大学野球リーグが中止されたことを。野球が好きというだけなのに試合を禁じられ、軍部からにらまれる。神山監督は、重苦しい日々の中にも、ほほえましい恋のエピソードなどを盛り込み、変わらない青春の姿を浮き彫りにする。

 映画は主に早大側から描かれ、試合実現に至る過程から、当時の学生たちの熱い思い、飛田の信念が伝わってくる。試合終了後、両校のエールの交換が響きわたる。〈死〉が現実のものとして迫っているからこそ、〈生〉の輝きがいとおしい。この時代の不条理を、青春のひとこまから静かに訴えかける秀作だ。1時間36分。シネカノン有楽町1丁目など。(福永聖二)

琉球新報 映画評 2008年8月19日

野球を通してとらえる戦争 「ラストゲーム 最後の早慶戦
 太平洋戦争中、野球は敵国アメリカのスポーツとして弾圧の対象となり、東京6大学リーグも中止に追い込まれた。やがて学生に対する徴兵猶予も撤廃となるなか、かろうじて練習を続けていた早大と慶大野球部の間で“最後の早慶戦”が行われた。
 岡本喜八監督の「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」では、今も語り継がれるこの伝説の試合を起点として、野球に情熱を燃やした若者たちの戦争体験が描き出された。これに対して、神山征二郎監督の新作では、早慶戦そのものがクライマックスとなる。
 試合の実現のために奔走する早大野球部顧問の飛田穂洲慶応義塾塾長の小泉信三、そして希望を捨てずに練習を続ける選手たち。彼らの熱意が圧力をはね返していく。
 この映画の課題は、早慶戦という野球の世界を通していかに戦争をとらえるかにある。戦争を主に弾圧として表現しているため、ドラマはわかりやすいが、深みが感じられない。★★★★☆(大場正明・筆)




戦争違法化体制と日本 1919〜1945
18時半〜20時半
講師・伊香俊哉
日中韓3国共通歴史教材委員会
東京都・杉並区立産業商工会館1階(地下鉄南阿佐ヶ谷駅
資料代500円