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戦争と一人の女(2012)日本軍の暴行

映画 98分 日本 配給:ドッグシュガームービーズ 初公開:2013/04/27
監督:井上淳一 企画・統括プロデューサー:寺脇研 原作:坂口安吾 脚本:荒井晴彦中野太
出演:
江口のりこ(女)主人公。売春婦、戦時中は作家野村の愛人となり愛欲の日々を過ごす。戦後は洋パンとなる。元日本兵大平に犯され妊娠する。戦争を嫌い、日本の消滅を受け入れた主人公が、日本消滅の証である混血児を妊むのではなく、中国で暴虐の限りをつくした元日本兵の子を妊むのが作品のメッセージとなっている。
永瀬正敏(野村)作家。坂口安吾がモデルらしい。戦争を嫌い、日本の敗戦とそれによる消滅を確信し、逃避のため女と愛欲にふける。しかし空襲で死ぬこともなく、戦後栄養失調でむなしく死ぬ。
村上淳(大平)北支(中国北部)で負傷し帰還した退役軍人(元日本兵)。右手がない。妻に対して勃起しないが強姦では感じる。戦時中は妻子を疎開させ一人買い出しの女相手に強姦殺人にふける。それは北支で経験した中国人への暴虐行為(三光作戦)の再生となっている。奪い尽くし殺し尽くし犯しまくる。戦後も続け、主人公の女を強姦する。たがついに警察に捕まり死刑になる。
柄本明(女の近所の老人)

【解説】かつて文部省で教育行政に関わり、近年は映画評論を中心に活動する寺脇研が、自ら映画製作に乗り出し、坂口安吾の同名短編をタブーや自主規制に囚われることなく映画化した官能文芸ロマン。脚本に荒井晴彦中野太を迎え、戦争という不条理に呑み込まれた男女3人の悲しい運命を、往年のピンク映画へのオマージュを織り込みつつ過激な性愛描写とともに描き出す。出演は江口のりこ永瀬正敏村上淳柄本明。監督は「アジアの純真」などの脚本を手がけた井上淳一。飲み屋の女将をしている元娼婦の女は、戦争に絶望した飲んだくれの作家・野村と同棲し、欲望のままに体を重ねていく。一方、中国戦線で片腕を失った帰還兵の大平。彼はある出来事をきっかけに強姦殺人を繰り返すようになるのだが…。
オフィシャル・サイト=http://www.dogsugar.co.jp/sensou

感想

YouTubeで見る。映像状態悪く細部は見えない。男女のセックスを通し、悲惨で後悔しかない日本の戦争を回顧している。主人公の女と作家との性愛関係は忌避すべき戦争からの逃避であり、消極的に「悪い日本」の敗戦による消滅を受け入れる作品メッセージとなっている。だが日本は消滅せず、作家だけが死ぬのが皮肉であり、現実であるとのメッセージと受け取れる。
 それと同時平行で語られるのが元日本兵大平による強姦殺人であり、彼が犯しながら、中国での三光作戦の経験を語る事で体感的に日本の戦争の悲惨さ、残酷さ、悪を描いている。更に彼が戦後もそれを続け、天皇の存続など日本の国家体制の継続に批判的なにおいを漂わせることで、現在の「戦争を本当の意味では反省していない」日本への批判となっている。
 大平が主人公の女を犯し、それまで不感症だった女が初めて感じて妊娠するのが、「戦争を反省ししない日本」の戦後の継続を印象づけていて、鋭いメッセージとなっている。
 全体として話しが限定的で小ぶりで、低予算でのためセットなどに時代感が出しよもなく、感動に欠けるが、元日本兵の残虐さとそれが戦場の体験の結果である筋書きにはとてもインパクトがあって、印象深い。庶民の戦争責任(直接的な行為の責任)を描いている珍しい作品だ。