zames_makiのブログ

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てんびんの詩(1988)3部作

【第1部】1988年製作

『てんびんの詩』 第1部 1988年
配給:ジャパンホームビデオ
監督: 梅津明治郎 脚本: 竹本幸之祐 
出演:下元勉(近藤大作) 吉野隆三(少年時代) 長内美那子(母) 栗塚旭(父) 風見章子(祖母) 志野原良子(叔母) 楠年明(叔父) 山口幸生(農家の人) 重久剛(農家の人) 柳川清(親戚の人)
商人の家に生まれた少年が行商を経て、商いの心を知るまでを描く。国際的にも名の知られた経営者・近藤大作は、あるときテレビ局の取材を受けて自分の少年時代を語った。
 近江商人の家に生まれた彼は小学校を卒業した日に父から呼ばれ、祝いの言葉と共に鍋蓋の包みをもらった。大作にはその意味がよくわからなかったが、「明日からこの鍋蓋を行商し、もし売れなかったら商家の跡継ぎにはできない」ということだった。大作はまず家に出入りをする大工や植木屋のところを訪ねた。初めのうちは世話になっている商家の息子ということで大事にされるが、鍋蓋の行商とわかると冷たくあしらわれた。親の威光をカサにきた押し売りのような商いがうまく行くはずもなかった。知り合いの大人たちは行商が修行であることを知っているのでなおさら義理で買うようなこともしない。大作は今度は見知らぬ人の家を回ってみたが、ほとんど口さえ聞いてもらえない。彼はやがて親を恨み、買わない人々を憎んだ。父や母が彼以上に辛い思いで、見守っているのが大作にはわからないのだ。
 時には甲賀売薬の行商に習ってもみ手の卑屈な演技をしたり、乞食娘の真似をして農家の老夫婦を泣き落としにかかったりもしたが、嘘はすぐにばれてしまう。心ない商いは人々の反感を買うだけだった。何日経っても一つの鍋蓋も売れない大作の目にはいつしか涙がたまっていた。ある日大作は農家の井戸の洗場に鍋蓋を見つけ、「この鍋蓋がなくなったら人は困って買ってくれるかもしれない」と思ったが、すぐに考えを改めた。そしてこの鍋蓋も自分のように苦労して人が売った物と思うと、無心に洗い始めた。その鍋蓋の持ち主である農家の女は初めて怪訝そうな顔をしていたが、大作の気持ちを知って鍋蓋を一つ買ってくれた。さらにまた近所の人たちにも声をかけてくれたのである。おかげで大作の鍋蓋は売り切れ、彼は「売る者と買う者の心が通わなければ物は売れない」という商いの神髄を知るのだった。
 大作は父もしたようにてんびん捧に“大正13年6月某日”と鍋蓋の売れた日付を書き込み、父や母の待つ家へと帰った。


【第2部】1987年製作

『てんびんの詩』 第2部 自立篇 1987年 カラー16? 147分
企画:(株)ローヤル・(株)オートラマ
脚本:竹本 幸之祐        
監督:梅津明治郎・廬金眞変
出演:下元  勉、千葉 誠博、島田  勉、麻生 美衣

(以下、シナリオ本・映画チラシより)
【かいせつ】商いは人の道であるという大テーマに真正面から取り組み、愚かで弱いものが、人のお役に立とうということがいかにむずかしいことか。その困難を乗り越えた先に、お客さまから感謝された喜びが。人は一生の友をどうやって見つけ、いかにその友情を育てていくか。人間が育つためには、何を考えどう行動すればよいのか。少年大作から青年大作への成長をユーモアを交え、涙と感動でつづった物語。
【はじめに】第1部は、まだ幼い大作がひたすらに「鍋蓋行商」をする様を感動的にうたいあげながら「商い」の原点と子に対する大人の対応を問いました。
 第2部は、その大作の少年期から青年期に移る多感な時期に、人間としての自立と商人としての自覚を軽快なタッチで描いています。
 世界的経済恐慌が襲った昭和五年を社会背景に、海外研修旅行を自らの才覚と努力で全うしようとする大作の、行商を通じて会得する商いの世界とは−−

 未熟な自分が、商いを通じて他人のお役に立つことの困難さを知り、自分を育てることから……商いの道を探すしかないと知った。一人の力は限りがあると知り、そう知ったとき初めて他人の心寄せが嬉しく、感動となっていった。人との出逢いを喜ぶとは、こんな素晴らしい人生を生きることかを知った。商いの前に世界は一つ。商いは民族や国境を越えた人間の善意の交りであることも知った。

 戦後はじめての日韓合作映画「てんびんの詩」は、長く閉ざされていた日韓文化交流の掛け橋になればと願っている。

【あらすじ】主人公 近藤大作は、鍋蓋行商をやりとげた後、1年遅れて憧れの八幡商業高校に入学した。しかし、商人としての実務を少しでも会得させようと願う父の方針で、塩踏み奉公(実務見習)をしながらという厳しい勉学の道であった。
 当時、八商の大きな行事として海外研修旅行があった。大作はその費用を自力で捻出する計画を立てて実行にうつした。だが、あたかもその時代(昭和初期)は世界的な経済不況の波が押し寄せ、計画は思うようには進まず、在日朝鮮(現在の韓国)人 金さんのことで、学友小森とも行商先で喧嘩別れをしてしまう。旅行の費用は「家に助けてもらえ」と学友達が言うほど大作は苦しんでいた。同じく塩踏み奉公に来ていた清子の励ましをささえに、自ら計画をやりぬこうとする大作は、ある日、金さんの言葉から行商のヒントを得た。そして大きく成長した小森との新たな友情。ついに朝鮮行きの道を切り開いた大作は、自分を見守り続けてくれた周囲の人々の、厳しさの中にある優しさを、かみしめていた。
 海を渡り国境を越えた大作と小森は、異国の地を歩きはじめた。しかし、風俗習慣の違い、言葉の難しさ、そして自分の思惑はずれと苦難の道がつづいた。大作は、その苦しみの中から「客とは何か」「売るとはどんな事か」をつかみかけていた……

【第3部】 1989年製作

てんびんの詩 第3部 「激動編」カラー 100分
脚本:竹本幸之祐 監督:太田昭和 製作:?日本映像企画
出演:下元 勉、伊庭剛、千野弘美 森川正大、テリー・オブライエン、長内美那子

(以下、映画チラシから)
【あらすじ】昭和18年。大作は二度目の召集を受けて、再び戦地へ。そこで、彼は日本軍のイギリス捕虜に対する傍若無人な態度に敵味方を超えた人間的な怒りをおぼえる。また、東洋の平和のためにという大義によって国権を発動させ、戦争を起こしたにもかかわらず、本来の敵であるイギリス軍よりも戦場となった国の人々に大きな犠牲と損害をあたえていることにも疑念を抱くのだった。

 やがて、敗戦。大作はイギリス軍の捕虜収容所を経て、再び日本の土を踏む。生命はなんとかながらえたものの、夢にまでみた祖国は荒廃の極みだった。誰もが今日の糧を求めてさまようといった有様なのだ。大阪の店も消えていた。父親も、大空襲で死んでいた。店の者たちを疎開させ、自分は店に留まって生命を落としたという。それに、弟も戦死していたのである。

 五個荘に移した店も、戦後の財産税や農地開放で裸同然になっていた。国家とは個人にとって何であろうかと思い知る大作・・・。しかし、大作がしなければならないのは、この由緒ある近藤商店を立て直すこと。全くゼロからの出発だった。だが、税金も滞納するまでになった店を盛り返すのは容易なことではない。全国の旧得意先を走り廻り再建に懸命になるのだったが目算が立たなく思案にくれる彼。
 そんなある日、ひとりのイギリス人が彼を訪ねてくる。彼の名はジョン、かつて、イギリス軍捕虜収容所で大作が助けた男だった。ジョンは商人として占領軍の物資調達の仕事をしており、その日本側の仕事を大作に依頼したいといってきたのだ・・・。