zames_makiのブログ

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新しき土(1937)独=日合作

独=日合作映画 ドイツ題名=サムライの娘 製作=J.O.スタジオ 配給=東和商事映画部 公開:1937.02.04 115分
監督:アーノルド・ファンク(日本版 伊丹万作)脚本:アーノルド・ファンク(日独版)原作:アーノルド・ファンク 音楽:山田耕筰
出演:小杉勇(大和輝雄):西を学んだ若者、東を取るか西を取るかで迷うが、東をとって新天地(新しい土地)満州へ行く(ドイツに8年留学で農業を研究、出身は貧しい農家、豊かな家の養子、その娘と婚約する。しかしドイツ記者ゲルダに引かれる)
原節子(大和光子):養家の婚約者、日本的な娘、小杉勇ゲルダに心惹かれているのを知り、火山に登る
早川雪州(大和巖):養家の義理の父

高木永二(神田耕作):小杉勇の実の父親
常盤操子(母)::小杉勇の実の母
市川春代(神田日出子):小杉勇のかわいい姉
村田かな江(妹):小杉勇のかわいい妹

ルート・エヴェラー(ゲルダ・シュトルム):ドイツ人記者、小杉勇と一緒に帰国、彼の心のゆれを知る。
マックス・ヒンダー:原節子のドイツ語教師
=日本の西洋一等国としての昇進と満州への進出を印象付け、祝福する映画。ドラマは主人公小杉勇に東西2美女への恋愛だが、心理描写はほとんどなく非常に抽象的にテーマを謳うもの。ファンクの山岳映画の方法と思われる。当時の日本に関する非常にたくさんの描写が短く多数挿入され、製鉄や銀座のネオンなど西洋近代国家のイメージと、神社やお茶の作法など東洋的イメージが多数交錯する。加えて監督の意図により原節子の故郷として煙と火を噴く火山の映像が使用され、更にクライマックスの舞台になる。火山は現実の日本ではなく混乱する。しかし同時にこれらはドイツ人観客には観光映画としての日本の紹介ともなっているようだ。火山のイメージは現実の日本を無視したファンク監督により与えられた日本のイメージであり演出であるが納得できない。しかしそうしたスタイルの山岳映画としも印象は薄く、演出は退屈だ。火山に登った原節子に感動し小杉勇は東をとるがそれに説得力がなく退屈だ。小杉勇は長髪・短躯で現代の日本人にはちんけに見えるが当時はハイカラであったのかもしれない。原節子はすばらしくかわいらしく正に日本人形である。監督と同国人のゲルダだけが人間的に見えるのはこうした外人監督による異文化交差映画の常であろう。伊丹万作が満足せず日本版を作ったのは当然だろう。
 ラストは字幕で満州(Manchuria)と明示され、2人が満州で農耕機械で大規模な農場を耕作する姿を映し、それを銃をもって守る日本兵がアップで示されて終わる。日本を同盟相手として立派な国と説明し、日本の満州での支配は自然な発展であり当然であるとする、日独の国家方針を観客に説明する国策映画。