戦争映画の題材となる軍神・英雄・軍国美談
1945年まで日本では戦争の英雄は国家によっても又マスコミや国民によって褒め称えられ、それらは軍歌・軍国歌謡(国民歌謡)・国定教科書(修身・国語)、浪花節(浪曲)、講談、演劇などにとりあげられ多くに人に影響を与えた。さらに映画界はこれらを題材に戦争映画をつくった。題材は軍神・戦争の英雄・軍国の母であり、それらを題材にした物語である、それを映画はなぞっている。日清戦争当時(1894年)ちょうど日本に輸入された映画の発達史と照らし合わせると日清戦争・日露戦争は、その歴史的事実の映画化よりもむしろこれらの「戦争物語」から多く映画が製作されているように見える。
(1)日清戦争:兵卒が英雄
- 木口小平「死んでも喇叭を口から離しませんでした」軍歌「喇叭の響」(安城の渡=中国の戦場の別名)又は白神源次郎、小笠原長生の介在、→実際は本人不明
- 水兵の母:「お国のために死ね」有村おとげさ→生存(軍国の母)
一太郎やあい:岡田かめ→実際は生存・戦争後遺症で障害者に(軍国の母)
勇敢な水兵:松島・比叡の水兵「定遠はまだ沈みませんか」:佐々木信綱の作詞、→本人不明
(2)日露戦争:将校個人が英雄
(3)日中戦争:地味な素材
(4)太平洋戦争:賞賛対象は組織集団へ
(参考図書)
◆軍国美談はどのようにしてつくられたのか、大江志乃夫(所収:日本近代史の虚像と実像. 1 / 大月書店, 1990)
◆軍国美談と教科書 / 中内敏夫. 岩波新書, 1988
◆軍神:近代日本が生んだ英雄たちの軌跡 / 山室建徳. 中公新書, 2007
◆乃木さんのひとり歩き--浪花節にえがかれた日露戦後の庶民感情 / 真鍋昌賢 説話・伝承学. 6 [1998.4] →国会・コピー済
◆乃木希典:予は諸君の子弟を殺したり / 佐々木英昭. ミネルヴァ書房(ミネルヴァ日本評伝選) 2005
□日清,日露海戦史の編纂と小笠原長生-1- / 田中宏巳 軍事史学. 18(3) [1982.12]→国会
□日清,日露海戦史の編纂と小笠原長生-2- / 田中宏巳 軍事史学. 18(4) [1983.03]→国会
□忠君愛国的「日露戦争」の伝承と軍国主義の形成 / 田中宏巳 国史学 [1985.05]→国会
□虚像の軍神 東郷平八郎 田中宏巳 This is読売 1993年9月号→国会
□東郷平八郎の虚像と実像 / 山田朗 歴史評論. [1989.05] →国会
□小笠原長生と東郷伝説 / 田中宏巳 歴史読本. 49(4) (通号 773) [2004.4]
□日露戦争の記憶--社会が行う現代史教育 / 山室建徳 帝京大学文学部紀要. 教育学. (26) [2001.1] →国会
□国定教科書が描く戦争と歴史 / 山室建徳 メディア史研究. 21 [2006.12]→国会
◇映画の中の日露戦争 / 千葉功(所収:日露戦争研究の新視点 / 日露戦争研究会. -- 成文社, 2005)
◇世界の映画作家31:日本映画史 キネマ旬報社 1985=(所収:戦時体制化の映画動向、山本喜久夫=乃木もの映画の研究)
(乃木×講談)
講談乃木伝. 上・下 / 桃川若燕 文泉社出版部, 大正9
乃木将軍誠忠録 / 吉田奈良丸口演 -- 三芳屋書店, 大正7
□芥川龍之介「将軍」考--桃川若燕の講談本『乃木大将陣中珍談』との比較 / 奥野久美子 国語国文. 72(3) (通号 823) [2003.3] →国会
□旅する主人公と失われた国家--乃木伝の運命にみる浪曲の戦後/ 真鍋昌賢 上方芸能. (通号 136) [2000.05] →国会
□メデイアの重層性と軍神のポピュラリティ / 真鍋昌賢 大阪大学日本学報. (通号 21) [2002.3] →国会
□戦時下における教育紙芝居の上演現場--口頭芸と国家の関係をめぐる一考察 / 真鍋昌賢 待兼山論叢. 32(日本学) [1998.12]
×講座日本の伝承文学 第10巻:口頭伝承の世界 / 三弥井書店, 2004(所収:浪花節の「盛衰」と「新作」 / 真鍋昌賢著 )