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アメリカのイスラエルへの態度変化:第2次世界大戦後の米の中東外交政策

歴代大統領の中東政策(中西俊裕)

トルーマン:1948年、イスラエル建国後2時間で同国を承認し周囲を驚かせる、しかしもともとはアラブ諸国の反応を気にしており、直前に翻意した。選挙を控えており、側近からなぜイスラエルを承認したか聞かれ「アラブに味方して選挙で票になるかね?」と答えたという逸話が残っている。再選のためユダヤ系の票を獲得する事は無視できない政治的現実だった。
 しかしその後はアラブ諸国の米国への石油の安定供給へ配慮して、一転して中和政策をとった。

アイゼンハワー:イスラルに対し厳しく臨んだ大統領として有名である。ガザ地区(現在のパレスチナ自治区)からイスラエルを撤退させようと援助停止をちらつかせた。

ケネディ:目だったイスラエル傾斜が見られ始める。ニクソンに勝利した大統領選挙ではユダヤ系の票に大きな支援を受けた。当選した後は当時としては異例のユダヤ系閣僚2名を起用し、それまでは情勢を配慮し行っていなかったアラブ側が懸念していたホークミサイルのイスラエルへの供与を承認した。以降のイスラエルへの大量の軍事援助の始まりとなった
 しかし外交政策はアラブ側にも配慮し、米国への敵意を和らげ、イスラエルアラブにバランスの取れた対応をとろうと努力した。エジプトに寛容な態度をとり、アフリカアジアの新興国に経済援助を行い、エジプトへの穀物援助を拡大した。イスラエルの核開発に懸念を示した。

ジョンソン:米国のイスラエルとの関係は一層強化された。イスラエルに初めてアメリカの軍用機を供与した。またホワイトハウスに、ユダヤ系財界人が一層頻繁に招かれるようになった。国家安全保障会議議長、国務次官補の重要ポストに親イスラエルないしユダヤ系の人材が採用された。
 要因としてこのころまでにイスラエル・ロビーの基盤が拡充されたことが考えられる。またジョンソンは政治的な調整を長年経験してきた政治家故に国内ユダヤ系社会の影響により敏感だったとも言える。彼の時代にアメリカとイスラエルの関係はぐっと近寄った。

ニクソンイスラエルとシリアの緊張が高まった際に東地中海に第6艦隊を派遣し、イスラエルから高く評価された。また第4次中東戦争の際にはイスラエルへの軍備空輸を実施し、アラブ諸国から強い反発を招いたた。当時の主力軍用機、戦闘機ファントム、攻撃機スカイホークの供与を承認した、これは再選で国内のユダヤ社会での人気を意識したためと見られている。

フォード:?

カーター:アラブ・イスラエルに対して公正であろうと勤め、1978年キャンプ・デービッド合意をまとめ、中東和平の基礎を築いた。カーターは大統領直前まで日曜学校の教師を務めるなど、キリスト教関係の活動に関わり、個人的な思いが強かったと考えられている。大統領退任あともパレスチナ問題に関わり、著書ではイスラエルを「アパルトヘイト」と呼んでいる。
 カーターはアメリカのユダヤ系社会からは必ずしも支持されていない。

レーガン:1981年イスラエルは米国の軍事同盟国となり一層関係は強まった。冷戦下ソ連を強く意識したレーガンイスラエルを中東における自由世界の前衛と位置づけた。
 その背景にはネオコン新保守主義派)の影響が働いたと見られている。

ジョージ・ブッシュ(父):湾岸戦争時にイラクの攻撃を受けたイスラエルに強い姿勢で自制を求め両国関係は冷え込んだ。戦争後もイスラエルへの融資保証制度で厳しい態度をとり、西岸などへの入植問題を巡りイスラエルへの100億ドルの融資保証を凍結した。メディアはアイゼンハワー以来のイスラエルに対する厳しさと書き、アメリカのユダヤ系社会から批判された。
 冷戦終了で、イスラエルの重要さが相対的に低下したことが、一つの要因と考えられる。
クリントン:?

ジョージ・ブッシュ(子):9.11テロのあとイスラエルに強く傾斜した。中東全体の民主化を求めアラブ諸国と対立し、イスラエルを強く支持した。テロの実行犯はアラブ人であり、イスラエルアメリカの敵は完全に一致した。「テロリスト」のレッテルによりパレスチナの抵抗運動は完全に無視された。和平合意また占領地でのイスラエルの行為は完全に黙認され当然のものとされた。
 長年のイスラエルの敵対国イラクへの戦争が開始され、それまでのイラク政権は崩壊し核兵器などのイスラエルへの脅威は取り除かれた。更にアメリカはイラン、シリアなどを仮想敵国と名指して非難し、正面から対立した。
 最大の理由は、9.11テロによりイスラエルは「対テロ戦争」の実施最前線と位置づけられ、その価値が大きく高まったため。またネオコンの影響力の大きさも無視できない。。
オバマ:?
(「中東和平歴史との葛藤」 中西俊裕 日本経済新聞社 2006、p357以降)

イスラエル・ロビーと歴代アメリカ大統領の関係(ガロディ)

トルーマンは、選挙に勝つために将来の不安を棚上げにして、彼の後継者たちと同じ(イスラエル支持の)姿勢を示した。シオニスト・ロビーの勢力と“ユダヤ票”に関しては、トルーマン大統領自身が1946年、ある外交官たちの集まりで、つぎのように告白している。「皆さんには申し訳ないが、私は、シオニストの成功を願っている何十万人もの人々の期待に応えなければならない。私の選挙民の中には、アラブ人は千人もいない」(『ローズヴェルトとイブン・サウド/中東のアメリカの友人たち』1954)


ジョン・F・ケネディは1961年の春、ニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルで、イスラエル首相ベン=グリオンと初めて会った時、彼に対して、こう語った。「私は、アメリカのユダヤ人が投票してくれたお陰で選挙に勝てたことを、良く知っています。私は、選挙で恩を受けました。私がユダヤ人のためにしなければならないことを、おっしゃって下さい」(『ベン=グリオン/武装した予言者』?)


リンドン・ジョンソンは、さらに先を行った。あるイスラエルの外交官が、こう記していた。「われわれは重要な友人を失ったが、さらに良い友人を得た。……ジョンソンは、ユダヤ人国家がこれまでにホワイトハウスで得た最良の友人である」(『イスラエルの防衛線』1981)。ジョンソンは、実際に、1967年の六日間戦争(第3次中東戦争)を強力に支えた。


フォード大統領に対して、イスラエルロビー団体AIPACは、さらに活動を強めて、三週間の活動で76人の上院議員の署名を取りまとめ、1975年5月21日、前任者達と同じようにイスラエルを援助するよう申し入れた(『アラブ人・イスラエル人とキッシンジャー』)。

カーターは1976年の大統領選挙でユダヤ票の68%を得て当選した。しかし1980年には、45%しか得られずレーガンに敗北した。この間にアメリカが、F15戦闘機をエジプトに売り、エイワックス(戦略戦闘爆撃機)をサウディ=アラビアに売ったからである。その際にアメリカは、それらの兵器がイスラエルに対して使われることはあり得ないと保証し、アメリカ軍がそれを管理し、現地情報を掌握すると約束したにもかかわらず。一方レーガンは、カーターとは反対に、イスラエルに対する6億ドルの軍事資金貸し付けの2年間延長に同意した。

(「偽イスラエル政治神話」ロジェ・ガロディ、れんが書房新社、1998、3章1節「アメリカのイスラエルシオニスト・ロビー」、全文はネット上で読める:http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise.html

イスラエルへのアメリカからの援助(ガロディ)

1948年以後、イスラエルに対するアメリカ政府の援助は、180億ドル近くに達した。貸与と贈与に、平等に配分されているが、全体の三分の二は軍事目的に当てられていた(アメリ財務省&テル・アヴィヴのアメリカ大使館資料)。

アメリカ政府の援助の増大振りは、目が眩むほどの速度である。1975年までは毎年一億ドル以下、1981年までは毎年20億ドル以下だったのに、1985年1月には、イスラエル国家が、以後8年間に120億ドルの援助を要求した。対外債務に関しては、1973年に60億ドルを突破した。1976年には100億ドル、1981年1月1日現在で170億ドルである。

1948年以来、アメリカはイスラエルに、280億ドルの経済および軍事援助を供給してきた(『タイム・マガジン』1994年6月号)。


1967年には、当時のイスラエル財務大臣、ピンハス・サピール氏が、エルサレムで開かれたユダヤ人億万長者協議会(正式名称ではないと思われる)の席上で、イスラエル国家は1949年から1966年までの間に(海外のユダヤ人から)70億ドルを受けとったと発表した(『ザ・イスラエリ・エコノミスト』1967年9月)。
(「偽イスラエル政治神話」ロジェ・ガロディ、れんが書房新社、1998、3章2節「フランスのイスラエルシオニスト・ロビー」、全文はネット上で読める)

アメリカ政治化へのイスラエル・ロビーの力(ガロディ)

ヒュバート・ハンフリイ上院議員に10万ドル以上の政治資金を提供した21人の内、15人はユダヤ人だった。その筆頭格は、“ハリウッドのユダヤ人マフィア”の頭目、リュー・ワッセルマンだった。彼らは、通常、民主党の選挙資金の30%以上を提供していた(『ユダヤ人とアメリカの政治』1974)。

元イギリス首相、クレメント・アトリーは、つぎのような証言を残している。「アメリカのパレスチナ政策は、ユダヤ票と、いくつかの大きなユダヤ人企業の献金によって、具体化された」(クレメント・アトリー『首相の回想』1961)
(「偽イスラエル政治神話」ロジェ・ガロディ、れんが書房新社、1998、3章1節「アメリカのイスラエルシオニスト・ロビー」、全文はネット上で読める:http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise.html