zames_makiのブログ

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ホロコーストがシオニズムを正当化する

ホロコースト罪と罰」ミヒャエル・ヴォルフゾーン、講談社現代新書、p128、ヴォルフゾーンはテルアビブ出身のユダヤ人、ドイツ連邦防衛大教授)

ホロコーストではほとんどのユダヤ人がまるで生贄の羊のように、無抵抗のまま虐殺された−1950年代イスラエルでは政治家やジャーナリズムがユダヤ人に対する警告として繰り返し口にした言葉である。(略)無防備なユダヤ人ではなく、防衛能力を持ったユダヤ人が民族としての帰属意識の対象であり、それが同時に防衛能力のあるシオニスト国家を正当化した。

6日間戦争前夜(略)の非ユダヤ世界の無関心に直面すると、多くのイスラエル人はイスラルは今世界から見捨てられると確信した。反ユダヤ主義(あるいはそう見えたもの)なしにシオニズムなし。(略)

ホロコーストシオニズムを正当化する機能を持っていることは1979年の世論調査が証明している。テレビ映画「ホロコースト」(1978年アメリカ制作の4部作TVドラマ)を見た後、青少年の68%、成人の55%が「シオニズムイスラエル国家の意義が以前より明らかになった」と答えた。なかでも中東系ユダヤ人や青年層、高等教育を受けていない層は、テレビの「ホロコースト」を見た後では、この関連が以前よりよく理解できた、と考えている。

注(ブログ記者):テレビ映画「ホロコースト」は4部作の長編ドラマだが、ドイツで暮らしていたユダヤ人一家が収容所などで殺される経過を描いている。全編の最後でユダヤ人家族の生き残りの青年(ライアン・オニールが演じている)は一人で約束の地を目指す姿で終わっている。約束の地とはイスラエルのことであるのは言うまでもない。こうしたドラマのまとめは、詳しく説明している石田勇治氏の「過去の克服」にも書いていない。それは視聴者各人がドラマをどう受け取ったかの問題でもあるためだろう。しかしホロコーストの生き残りがそのままイスラエルを建設するという描写は例えば1948年のイスラエル建国の戦闘を描いたアメリカ映画「巨大なる戦場」でもされている。

本「ホロコースト産業」紹介

 ノーマン・フィンケルシュタイン「ホロコースト産業」(三交社、2004、原題:The Holocaust Industry 原著出版は2003)
 著者はニューヨーク市立大学で教鞭をとるユダヤ社会学者で、ノーム・チョムスキーの弟子。両親はヨーロッパからの移民で、ワルシャワゲットーと強制収容所の生き残りであり、彼によれば、両親以外の親族は、父方も母方も全てナチスによって殺されたという。
 イスラエルに批判的(シオニズム批判)なユダヤ人学者が、アメリカのユダヤ人エリートたちを「ホロコーストを政治的に利用にしている」と批判している本。ホロコーストの事実を否定している訳ではない。むしろナチ・ホロコースト研究の世界的権威であるラウル・ヒルバーグはこの本を最大級に評価している。
 要旨:『ホロコースト産業』について(http://hexagon.inri.client.jp/floorA6F_hb/a6fhb811.html

原爆投下に関してのイスラエルロビーの見方(SWCのアブラハム・クーパー副館長)

ネット出典:http://hexagon.inri.client.jp/floorA4F_ha/a4fhc600.html#01
1次出典:『新潮45』(2000年12月号)『特別インタビュー 「ユダヤは怖い」は本当ですか? 「SWC」のアブラハム・クーパー副館長に聞く』
参考:『週刊現代』(1995年7月8日号)
SWC=サイモン・ウィーゼル・センター(イスラエルロビー団体

この取材記事の中で、「SWC」の副館長であるラビ、アブラハム・クーパーは、南京虐殺事件と原爆投下について驚くべき見解を披瀝している。取材記事の一部分を下に掲載しておくが、これは、日本人にとっては看過することのできない内容であろう。

〈原爆投下に関して〉新潮社編集部の「第二次世界大戦で人類に対する明らかな犯罪が2つあったと思います。ひとつはホロコースト、もうひとつは原爆投下です。その責任追及を『SWC』がする予定はないのでしょうか?」の質問の中で、次の問答がある。

◆編集部:原爆による無差別爆撃の事実は明らかで、これは戦争犯罪ですから、アメリカの戦犯追及を考えるべきです。
◆クーパー:率直にお話ししますが、個人的に言うと、私は原爆投下は戦争犯罪だと思っていません。
◆編集部:それは納得できません。非戦闘員の殺害は明らかに戦争犯罪じゃないですか。
◆クーパー:ノー。戦争というのは非常に悲惨な出来事なわけですけれども、2つの原爆を落としたことで、戦争が終わったという事実はあるわけです。もしトルーマンが原爆を落とさなければ、さらに多くの死傷者が出たでしょう。

上の取材記事からも分かるように、「SWC」に代表されるシオニストユダヤ人勢力は、自分たちのホロコースト体験は世界に向けて盛んに宣伝するが、他民族が体験したジェノサイド(ホロコースト)に対しては無関心(冷淡)のようである。現在、パレスチナで進行中のホロコーストに対しても冷淡で、むしろユダヤ人によるパレスチナ人の虐殺を積極的に支持している有様だ。
 「SWC」を「平和・人権団体」と呼ぶ人がいるが、「SWC」は非ユダヤ人の平和・人権に関しては無頓着だといえる。

アイヒマン裁判はホロコーストの政治利用の始め(石田勇治)

アイヒマン裁判がイスラエルによって演出された政治的な裁判であったことは確かで、この時期に裁判が行われたのも偶然ではなかった。開廷を決意したベングリオン首相の視線はドイツよりもイスラエル国内の社会情勢と世界の「離散ユダヤ人」に向けられていた。
 (略)国内要因としては大量の東洋系ユダヤ人(スファラディーム)が近隣のアラブ諸国から流れ込んだ結果、それまで政治的優位を占めていた西洋系ユダヤ人(アシュケナジーム)の地位が動揺し始めたことがあった。東洋系ユダヤ人を統合するためホロコーストユダヤ人全体の集合的記憶に刻みつけ、イスラエルの国民統合の柱にする必要があった」
 (略)国外要因としてはシオニズムの正統性に疑念を持つ世界=「離散ユダヤ人」の存在があった。イスラエル政府はホロコーストを「ユダヤ人に対する罪」として、イスラエルが世界のユダヤ人に代わって断罪することで国家としてのイスラエルの存在意義を、全世界のユダヤ人にアピールした。
(「過去の克服」石田勇治、白水社、p164)

 アイヒマン裁判の政治性については「イスラエルアイヒマン裁判:イスラエル現代史における意味」臼杵陽、(所収「戦犯裁判と性暴力」緑風出版、2000、p154)又はSegevを参照

ホロコースト神話」の国家による政治的利用(ガロディ)

 この犯罪(ホロコーストのこと)が犯された時には存在していなかった国家(=イスラエル)によって、政治的な利用が行われている。その被害の程度が他のすべてと比較にならない状態(特別に重大だとの意味)だったと主張するために、数字の誇張と、「ホロコースト」という用語がそうであるように、宗教的な用語を使う神聖化までが行われ、それよりさらに残酷な民族虐殺(同じくナチにより虐殺されたシンティ・ロマを指すものと思われる)が忘れられてしまったのである。
 最も巨大な利益を得ているのはシオニストである。彼らは、排他的に犠牲者を独占し、それを踏み台としてイスラエル国家を創設した。第二次世界大戦では5000万人の死者が出たのに、ユダヤ人だけがヒトラー時代の犠牲者であるかのように主張し、それを根拠にして、すべての法の上に居座り、国内および国外での、ありとあらゆる不当な強請行為(ゆすり)を合法化している。
(「偽イスラエル政治神話」ロジェ・ガロディ、れんが書房新社、1998、結論「歴史の変装した神話とその政治利用」、全文はネット上で読める:http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise.html

イスラエル・ロビーとホロコーストへの後悔がロマを警鐘碑から排除した

ドイツのコール首相とベルリン市は1993年、促進会の意向に沿う形でホロコースト警鐘碑建立の意向を表明し、長い論争の末1999年建設された。促進会とは「殺されたヨーロッパ・ユダヤ人のための記念碑建設促進会」で、ドイツ人ジャーナリスト、レア・ロッシュ、ブラント元首相、作家ギュンター・グラス、ベンツ社長らによるもの。
 論争の焦点の一つは慰霊されるべき犠牲者集団は誰かである。促進会のロッシュと在ドイツユダヤ人中央評議会議長のイクナツ・ブービスはユダヤ人に限定する事を主張。ドイツのロマを代表するローゼ氏はロマを含める事を主張した。1991年促進会とユダヤ人団体がユダヤ人だけの警鐘碑を再確認しロマは排除された。
 コール首相と連邦政府は一貫して促進会とユダヤ人の側に立った。1993年コール首相の意向が表明された。コール首相の姿勢には世界ユダヤ人会議のような国際的ユダヤ人団体の圧力と、ドイツが戦後掲げてきた公的規範としての親ユダヤ主義がある。(「過去の克服」石田勇治、白水社、p298)