zames_makiのブログ

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ワルキューレ (2008) Valkyrie

制作:アメリカ/ドイツ 監督:ブライアン・シンガー
公開日2009年3月20日全国ロードショー(全米公開2008年12月26日) 主演:トム・クルーズ
予告編:http://movies.yahoo.com/movie/1809913399/video/10452652/standardformat/
トム・クルーズ主演、ケネス・ブラナービル・ナイパトリック・ウィルソントム・ウィルキンソンテレンス・スタンプら豪華俳優陣が出演する第2次大戦中のヒトラー総統暗殺計画を描く歴史サスペンス大作『ワルキューレ』。その『ワルキューレ』から予告編の最終版が公開され、海外サイトで話題沸騰中。日本でも日劇をはじめ『レッドクリフ Part I』の先付けで予告編が公開されている。 クルーズが演じるのは、左目をアイパッチで覆い、右腕、左手の指2本を失った実在の将校、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク。過去40回もの失敗が繰り返されたヒトラー総統暗殺計画“ワルキューレ作戦”の指揮を執る首謀者だ。妥協をしないトム・クルーズだけに今作の演技もかなり期待が膨らむ。

映画評(毎日新聞 2009年3月14日)

トム・クルーズが実在したドイツ人将校を熱演 スリリングなシーンが続く

ハリウッドを代表する人気スター、トム・クルーズが実在した第二次世界大戦中のドイツ人将校を演じたことで話題になった作品だ。「ユージュアル・サスペクツ」「X−メン」のブライアン・シンガー監督がメガホンをとった。

 第二次世界大戦末期、ドイツ国内においても、ナチスが犯した数々の蛮行(ばんこう)に嫌悪感を持ち、ヒトラー暗殺計画を企む者が現われる。計画は何度も企てられ、中でも最もスケールの大きいものが、今作で描かれている「ワルキューレ作戦」だったという。それはヒトラーの暗殺のみならず、国内有事の際の危機管理オペレーション「ワルキューレ作戦」を利用し、ナチス政権の転覆を一気に図るというものだった。

 そのワルキューレ作戦でヒトラー暗殺を企てたクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を演じているのがクルーズだ。戦争によって負傷し、左眼にアイパッチ、片腕が不自由な姿で登場する。クルーズの俳優人生において異例の外国人キャラクター。しかもそれはヒトラー暗殺計画の首謀者で、ドイツでは伝説の英雄と語り継がれている人物だ。演じ方を一歩でも間違えれば、クルーズ自身のキャリアに傷がつきかねない。しかし、彼はそれをやってのけた。シュタウフェンベルクについて詳細を知らない人間にとっては、映画を見る限りにおいてクルーズの役作りは成功したといっていいだろう。

 ワルキューレ作戦は成功したのか? 歴史的事実を知る者にはその結果は明白だが、ともかく、その作戦を立て、シュタウフェンベルクとその同志たちが計画を実行に移すまでの一連の様子が描かれていく。そのたたみ掛けるようなテンポに、さすがシンガー監督だとうならされる。

その一方で、彼が監督ということが逆に作用したことも確か。映画界において“予想外の展開”がすっかり常套句になった最近では、シンガーならきっと何か、あっと驚くことをやってくれるに違いないという過度の期待を抱いてしまったために、その展開に少々物足りなさを覚えてしまった。

 とはいえ、冒頭のヒトラー暗殺計画にはじまり、シュタウフェンベルクヒトラーが対峙(たいじ)するシーンや、計画実行直前に煮え切らない態度をとる上層部とシュタウフェンベルクの電話でのやりとりなど、スリリングなシーンが矢継ぎ早に続き、見せ場には事欠かない。脚本は「ユージュアル・サスペクツ」でシンガー監督と組んだクリストファー・マッカリー。緊迫感みなぎる巧みな筆致は、今作でもフルに発揮されている。

 さらに、キャストの豪華さにも触れておきたい。クルーズほど派手ではないが、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」のケネス・ブラナー、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのビル・ナイ、「ウォンテッド」のテレンス・スタンプ、「バットマン ビギンズ」のトム・ウィルキンソンなどなど、実力派や演技派がズラリ。このおじさまたちの“夢の共演”は、もう一つの見どころである。

 それにしても、どこの国、いつの時代にも、組織の上層部には優柔不断な人間が多いようだ。それもこれも、「愛国より人気を望む」気持ちが強いからか。彼らには「出世欲」はあるが「信念」に欠ける。だから土壇場で怖気づき、保身のために部下の命を危機にさらす。そういった人間性が露呈する過程が見られるのも、本作の面白さ。政治家、組織の上層部の方々に、特に見ていただきたい作品だ。(文・りんたいこ)