zames_makiのブログ

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与党偏向報道NHKの麻生・小沢対決への奇妙な誠実さ

NHKは2008年9月10日の7時のニュースで40分間も自民党総裁戦だけをえんえんと報道し、これではおかしいと文句の電話をかけた人には「あんたわかんないの?自民党の宣伝ですよ」と開き直って答えた。この返事はコールセンター担当者が答えたもの(その詳細は内野光子さんがブログで書いている=「やっぱりおかしい、NHK7時のニュース」http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2008/09/post-664e.html?cid=33181238)だったが、公共放送と言いつつも予算案の承認権で政府・自民に沿ったあり方から絶対に抜け出せない腐ったNHK自身の正直な声だったろう。こうしたNHK職員自身の自覚の様子は、NHK職員の59.6%がNHKは政府の御用機関だと感じているというアンケート結果でも知られている*1


しかし2008年10月1日のNHK時論公論」は、自民・民主に公平で、他のメディアでも伝えないような政治的動向分析を行っている誠実な番組だった。
 ●NHK時論公論「麻生・小沢党首対決、何が見えたか」2008年10月01日 23時45分放送 (15分)
NHK自身による番組全体の採録http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/12704.html#more
ではどこが誠実で公平だったのか?

民主党の基本政策を肯定的に伝えていること

この番組では城本解説委員が、まずそれまでNHKではニュース等ではまったく肯定的に報道しない、民主の動きを真面目に伝えている。

小沢さんの代表質問のポイントは、
(1)第一に、自民、公明の連立政権は、もはや政権担当能力を失った。格差が広がり、景気後退で苦しさを増す国民生活を立直すには、政権交代以外に方法はないと強調していること。
(2)もう一つは、民主党政権になったら、具体的にどんな政策を実現するのか。政権構想を明らかにしているという点です。

民主党小沢代表の代表質問の意味を整理し、政権構想を肯定的に評価し伝えている。これは、TVでの選挙関連報道を見ていない人には、特別な事には見えないだろう。


しかし、これは7時や9時のNHKニュースでは、民主党自民党が対立することしか伝えず、民主党がきちんとした政策を持ち、具体的に検討に値する政権構想を持っているとはけして伝えない事とは、大きな差がある。実は、この政権構想についてはTBSなど民放でもあまり伝えておらず、テレ朝が報道ステーションの中で簡単に示した程度だった。こうしたTVメディアの状況を見れば、この「時論公論」での扱いは画期的と言うべきだろう。


こうしてNHKは解説委員のコラムという形だが、民主党が検討に値する政策を持っていることを伝え、小沢代表の示した「基本政策」をボードで紹介した。

2008/9/8示された民主党基本政策
1税金の使い方を変える
2年金・医療改革
子供手当て、高校無料化
4雇用を守る
5農業食品安全を守る

またそれまでメディアが散々批判してきた財源についてもかなり説明されたとして、数字つきで示した。

その財源問題ですが、政権をとったら直ぐに実行する政策と、準備に時間がかかる政策を、三段階に分けて整理し、それぞれの段階で必要な財源を示しています。
1税金の使い方見直し=9.1兆円
埋蔵金を活用(特別会計積立金など)=7.2兆円
3税制改革=4.2兆円
合計 20.5兆円

なおこの基本政策の詳細については民主党HPでの代表就任での会見内容基本政策書植草一秀ブログあるいは他で説明・紹介されている。

選挙の争点を自民・民主双方の視点で整理していること

そしてこの番組で何よりNHKが誠実(公平・公正)なのは選挙の争点を自民・民主双方の視点で整理していることだ。NHKは2008/10/1の麻生VS小沢の国会代表質問が「議論がかみ合わなかった」とし、同日NHK9時のニュースでは「かみ合わなかったのは、民主が知らん振りをしているから」との印象のNHK政治記者のコメントで整理してしまっている。またその後(〜10/3)の国会代表質問のニュースでの麻生首相の答弁ばかりを、ニュース内で放送し、麻生はちゃんと答えているのに民主党が逃げているという伝え方をしている。


 従って一般的なNHKの視聴者は、「議論がかみ合わなかった」のは、民主党が内容のないバラマキで人気とりをして、総合的な将来展望のある政策を持たないからだ、とNHKのニュースから感じるはずだ。


しかしこの「時論公論」では以下のように分析しており、かみ合わぬ理由は「双方の戦略のため」だと公平に判断している。

なぜ、議論がかみ合わなかったのか。
麻生さんは、太郎対一郎、党首同士の個人的な対決に持ち込めば、人気が高い自分が有利になる。
一方の小沢さんは、民主党の政策をアピールして、自民党政治への不満や不信を政権交代への期待につなげる、
と二人の基本戦略に違いがあるからだと思います。

ここで番組は世論調査の結果を引用して、争点が内閣支持率では自民党が不利(望ましい政権のあり方では36対28で自民と民主が拮抗)だが、麻生VS小沢の個人的評価なら自民党が、圧倒的に有利(「どちらかが首相にふさわしいか」の質問には45対20で麻生が圧倒的に有利)と説明している。
説明のボード=


この説明を聞けば、「議論がかみあわなかった」のは、民主の逃げではなく、両者の戦略の差であることが私のような事情を知らぬ視聴者にもわかります。この点でこの番組でのNHKの解説は誠実で公平だと思う。
  問題はこうした誠実さ・公平さは、圧倒的に視聴率の高い7時や9時のニュースでは示されないことだ。そこでは、争点は麻生vs小沢の個人的な人気の対決という形に、即ち自民党の意向に沿う形ですり替えられている
  そして更に恐ろしいのは「テレビ政治=政治のショー化」の流れ、あるいはその方が視聴率がとれそうだという流れに従って他の民放でも、麻生vs小沢の個人的対決という報道の仕方になりがちなことだ。2005年郵政選挙での「小泉劇場」に日本社会はそれぞれ反省をしたはずだ。新聞などはTVのワイドショー化が小泉劇場を促進したと批判した。一般有権者は何かTVに刺激されて投票したら自民党に勝たせすぎたと感じたろう。TV自身もあまりに小泉ばかり取り上げたことを後悔しているはずだ。その後悔をTV局は2008年の今、どう生かしているだろうか?

*1:松田浩「NHK」岩波新書より、1969年NHK労組が2500人に行ったアンケート調査による