zames_makiのブログ

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エル ELLE(2016)嫌な映画

131分 フランス 公開:2017/08/25
監督:ポール・ヴァーホーヴェン 原作:フィリップ・ディジャン『エル ELLE』(早川書房刊)脚本:デヴィッド・バーク

出演:イザベル・ユペール(ミシェル・ルブラン=主人公の中年女性)
ロラン・ラフィット(パトリック:隣人の強姦魔)
シャルル・ベルリング(リシャール=元夫?)
クリスチャン・ベルケル(ロベール=友人の夫で絶倫の愛人)

感想

いやな映画。星2つ。老年になった監督の「セックスこそが人間だ」という独りよがりの哲学を強姦事件にかぶせることで見せつける嫌みな映画、通常突出した哲学を持った映画はそれだけで誉められるものだが、この監督の哲学は聞き飽きたし独自のものでもないので嫌みなだけだ。「人間は残酷なものだ」という哲学を殺人シーン連続の映画で主張されたら誰でも嫌気がさすだろう。初期の「四番目の男」ではまだその主張が物語にまぶされており、映画のテーマをある種幻想的に彩る役割をしていたと思うが老年になりただ露骨なだけになったのはよくある老人の害悪である。物語は自宅で強姦された中年女性の犯人捜しを装いが、宣伝文句をよく聞けば主人公に最初からそんな意図はないことが予想でき、あとはただ次々と悪趣味な性癖と行動を見せられるだけで面白くない。ここではいわゆる人間的な倫理がみな否定されてる。老年になっても性愛に夢中の主人公の母、人に性交直後の体をさらしても平気なその愛人、自分の性行動をあけすけに聞く主人公、親友の夫とただ単に性的欲望のためでけに性交する主人公、わざわざ会社に押しかけてきて主人公の個室で性的欲望をみたさせる親友の夫、狂信的な信仰から人を殺す主人公の父親、同じく宗教だけに目が向き夫の異常な行動に気づかぬ隣人、残酷で醜い性的ゲームで金を儲ける主人公、犯罪者の父親をけして許さない主人公、自分こそが主人公を許していない事を証明するためだけに自殺する父親、強姦による異常性愛のため隣家に侵入し強姦する隣人、その隣人との性愛を愉しむ主人公、などなど・・・。陰部こそは露出しないが、物語るという映画の大きな目的の点で映倫の審査に受からないのでは?と思うがどうか?60年代の共産圏では映画のテーマ自体で上映禁止なったりするのが異常な事件と受け取ってきた、しかし今でも事故による性愛を描いた「クラッシュ」を禁止したアイスランドのような処置も必要かもしれない思った。