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ジョバンニの島(2014)ソ連の色丹島の占領

ソ連軍による北方領土の占領を体験談に忠実に、日ソ融和的にアニメで描く、ソ連批判なくロシア少女との友情強調、逆に日本人への感情移入少なく意味不明の失敗作
アニメ映画 102分 製作:日本 配給:ワーナー 公開:2014/02/22 製作:日本音楽事業者協会音事協)創立50周年記念作品 アニメーション制作:プロダクション・アイジー
惹句:―実話をもとにした“忘れてはいけない”物語―
監督: 西久保瑞穂 演出:橘正紀 原作:杉田成道(「ジョバンニの島集英社、2014.2) 脚本:杉田成道櫻井圭記 脚本協力:池端俊策 メインテーマ:さだまさし

感想

ソ連軍による色丹島北方四島の一つ)占領を題材にしたアニメ。体験者の実話を元にしており、ソ連軍を批判的にではなく描く、ソ連軍将校の娘と主人公少年の友情と主人公らの病死という過酷な経緯がテーマだが、事実を示したりソ連を批判するのではなく、友情による融和に重点がある。だが主人公などの心情描写が薄く、説得力弱く物語つまらぬ。低調で湿ったドキュメンタリーをアニメで描いたものになった。主人公らに宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモチーフが当てはめられており、死亡場面で文学的になるが全体への意味はない。ソ連との友好を意識しすぎた失敗作。

 物語=主人公純平は親が「銀河鉄道の夜」大好きでジョバンニに基づく、弟寛太はカンパネルラ。島で育つが9月1日ソ連の侵攻に恐怖するが、ソ連兵は殺しはしない。だが略奪をする。女は恐れ隠れる。小学校は半分ソ連軍に摂取され、ソ連軍の子供の学校になる。主人公の家はソ連軍に摂取され馬小屋で暮らす。母屋はソ連軍将校の家に変り、その娘ターニャと仲良くなる。叔父さんはソ連軍の禁を破り島外と交易、主人公はそれをたき火炊いて助けるが、ターニャに見られるがターニャは許す。ある日、ばれて叔父さんは逮捕、日本軍物資を村民に配給していたお父さんも逮捕される。主人公はターニャによる密告と思う。本土への帰還船決まる、主人公は島に思い入れはないがターニャとの別れを惜しむ。移送先は樺太の町、日本送還まで収容所生活、男は強制労働させられる。主人公らは逮捕された父を慕い、父のいる収容所を目指し雪の中を脱走、迷子になり死にそうになる。叔父さんと先生が助けてくれる。収容所の賄い人の朝鮮人の手引きで父と有刺鉄線ごしに面会、だがソ連軍にみつかり強制送還へ。途中で病気の弟は死亡する。父は結局(シベリア抑留?から)帰らない。戦後60年たち、じいさんになった主人公らは島を訪問、ターニャの孫娘と再会し一緒にダンスを踊るのだった。

 ソ連軍による占領の歴史的事実が非常に控えめに表現されている、侵攻の期日が9月1日、ソ連兵は殺人はしないが略奪する、日本女は強姦の危険性あり、ソ連軍は日本施設を窃取し十分な食料支給しない、1年以上も長期にわたり宙ぶらりんで最後は日本へ強制送還になり全ての資産を奪われる、ソ連軍に抵抗した人は逮捕され収容所で強制労働からシベリア抑留?し死亡、そうでない日本人民間人へも強制労働があり、危険で過酷なその労働で死んだ人がいる、他の民間人も収容場所の環境まずく過酷で病気などで死亡した人いる、朝鮮人については日本は何もせず放置した。など。
 ただこれらはまるで人ごとのように描かれており何も知らぬ人には主な筋=ソ連少女との友情と、幽閉された父への慕情と、弟の病死しか残らない。これら主筋はソ連の占領事件への傍流的事件であり、ソ連との友好を押し出した結果、映画が描くべき主題がずれてしまっている。弟の死の場面で「ジョバンニ」など宮沢賢治作品の引用あるが映画メッセージの上で何か意味があると思えない、弟は日ソ友好のために死んだのではないし、無理にそのように思うべきという意味とも受け取れない。ヤフー映画サイトなどでの好評は、意味不明な映画に対し「僕は読んでないから判らぬが賢治の本読んでれば、きっと良い意味あるだろう」という希望的推測による思い込みであろう。

 演出面でも画面そのものは丁寧な手書き風の絵でよいが、展開早く絵を見せて効果を得る効果ない。下手な演出だ。物語も父を慕って主人公らが脱走する下りは現実離れした突出した創作で違和感残る。事実に配慮した全体構成の中で目立つ盛り上げんが為の、演出の為にする演出で出来ばえよくない。主人公を含め人物の細かい心情描写がほとんどなく主人公の弟が死んでもそれまでの共感がなく感動的ではない。全体としてつまらぬ映画で、下手に金があるための失敗作。

声の出演:

?(瀬能純平)ジョバンニ、小学校6年生位、主人公、島で育つ、最初はソ連兵を恐れるが隣人ターニャと仲良くなる、収容所に送られた父を迎えに脱走、生還する
?(瀬能寛太)カンパネルラ、小学校1年生位、主人公の弟、過酷なソ連収容所生活で結核を病み死亡する
ポリーナ・イリュシェンコ(ターニャ)占領ソ連軍将校の娘、優しい、純平と仲良くなる
ユースケ・サンタマリア(瀬能英夫:主人公の叔父さん)帰還兵、1945年9月には島に帰還する、積極的に本土と密貿易し金稼ぐ、主人公の面倒みる、物語進行役の架空的人物
市村正親(瀬能辰夫:主人公の父)色丹島消防団長、子供の面倒みないで村人の食料心配し、米備蓄を秘密配給してソ連軍により逮捕、収容所へ、シベリア抑留で死亡?
仲間由紀恵(佐和子:色丹島国民学校の先生)主人公の先生、瀬能辰夫を慕う、主人公の母代わり、生き残る
北島三郎(瀬能源三:主人公のおじいさん)漁師、寡黙、帰還船に乗らず島に残る
八千草薫(現代の佐和子)語り役
仲代達矢(現代の瀬能純平)語り役

【解説】杉田成道が実話を基に原作と脚本を手がけ、北方領土のひとつ、色丹島に暮らすある一家が終戦後に体験した過酷な運命を描いた長編アニメーション。1945年。色丹島に、防衛隊長を務める父・辰夫と猟師の祖父・源三と暮らす10歳と7歳の兄弟、純平と寛太。2人は、戦時中でも穏やかなこの島で元気に日々を過ごしていた。しかし終戦を迎えると、ソ連の戦艦が現われ、大勢のソ連兵が島に上陸し、島民の財産は次々と没収されてしまう。やがて島には兵士の家族も暮らすようになり、兄弟は美しい少女ターニャと知り合う。こうして次第に心を通わせていくのだったが…。
公式サイト=http://wwws.warnerbros.co.jp/giovanni/