zames_makiのブログ

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アテルイ伝(2013)日本人による先住民支配

NHKBSプレミアム『アテルイ伝』http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/aterui/index.html
放送:2013年1月11日午後8時より毎週金曜日、全4回、制作:NHK
演出:佐藤峰世、脚本:西岡琢也、原作:高橋克彦「火怨 北の耀星アテルイ講談社
主演:大沢たかお(阿弓流為:蝦夷の英雄)弓は本当は弖
北村和輝(母礼:阿弓流為の参謀)
内田有紀(佳奈:阿弓流為の妻)
呰麻呂(大杉漣蝦夷の長)
波奴志己(西岡徳馬蝦夷の族長)
古天奈(伊藤歩:波奴志己の娘、女戦士
阿久斗(神山繁阿弖流為の父)
阿佐斗(高梨臨:阿弓流為の妹、朝廷軍の捕虜になる)
阿万比古(石黒賢:阿弓流為の兄、朝廷軍の捕虜になりスパイとなって戻る)
海浦江波杏子:阿弓流為の母、予知をする)
大伴須受(原田美枝子:東北の大和人豪族)
坂上田村麻呂高嶋政宏:大和人、阿弓流為と戦う)
桓武天皇近藤正臣

制作意図:「東北を平定しようと北へ攻め上る朝廷軍の襲撃に、命を捨てて一族の未来を救った古代東北の英雄、阿弓流為アテルイの生涯を空前のスケールで描く歴史冒険巨編。かつて不屈の魂をもって東北を守った陸奥の英雄を描くことで、東北復興支援の一環とし、大震災後、復興へ向けて誇り高く生きている「東北の人たちへの応援歌」を目指します。」(NHKHPより)

NHK HPより

西岡琢也(脚本家)「「東北人の勁(つよ)さ」」
脚本依頼が来た時、丁度自作の小惑星探査機の映画が公開中だった。宇宙から一気に千数百年引き摺(ず)り戻された按配(あんばい)だ。遠い昔、中学か高校で習った「坂上田村麻呂」しか知らない世界だった。「阿弖流為」の「弖」の字が三日、読み違えた。原稿にはカタカナでなく、意地で「阿弖流為」と漢字で書き続けた(因みに小生は未だに2B鉛筆で手書きデス)。西部劇だと思った。理不尽な暴力で西へ侵略する開拓者に抗(あらが)う、ネイティブ・アメリカンの物語と似ている。『ソルジャー・ブルー』みたいなニューシネマの西部劇で行けばいい。しかし厄介(やっかい)なのは、今も侵略者・坂上田村麻呂が東北の人たちに信奉されている事だ。この日本的なねじれが愛おしい。日本人の、東北人の勁さかも知れない。


2佐藤峰世(演出)「BS時代劇アテルイ伝」演出にあたり」
古代の東北には「蝦夷(えみし)」と呼ばれた人々が暮らしていた。彼らの文明がどのようなものであったかは、大学の先生方にお聞きしても、明確な答えは返ってこない。彼らは何ら弁明する手段をもたず、沈黙のまま歴史の闇に消えていった敗者である。しかし、私たちは、彼らの独特な「価値観によって支えられ、独自の社会構造と習慣と生活様式を具体化し、それらのありかたが自然や生きものとの関係にも及ぶような、そして食器から装身具・玩具にいたる特有の器具類に反映されるような」ものを、集積し、創造し、映像化しなければならない。そのために、下記の事柄を発想の基点とする。

(1)蝦夷の社会は部族社会。族長を代表とし、血族を中心とした100人程からなる祭祀共同体であり、同時に軍事共同体でもある。共同体には掟(おきて)があり、掟からの逸脱は許されず、神々に支配された社会であった。阿弖流為は、一族の構成員を神々の呪縛から解放し、人間の誇りを獲得するが、神々から罰を受ける。一族には、それぞれの紋章があり、一族は紋章が描かれた族旗と共に行動した。結婚には、労働力の減少・増加という側面もあったが、部族同士の平和的共存を実現する手段でもあった。

(2)蝦夷のアイデンティーは、縄文・続縄文文化の流れを汲む「狩猟・漁労」文化にある。秋の鮭漁。狩猟(鹿・熊・他小動物)。蝦夷の色は、赤と黒。ヤマトの色は白。

(3)ヤマトの文化も受け入れ、複合文化を形成していた。農耕・水田稲作・鉄器の利用・埋葬方法(古墳)など。また、百合根からでんぷん質を摂取していた

(4)祭しは祖霊崇拝・自然崇拝を中心としたシャーマニズムであり、主に女性のシャーマンが神がかりし、神の意思を仲介した。また、一族の構成員が神と共に遊べる楽しい場であった。

(5)アテルイは、自らの文化・文明と、ヤマトの帝(ミカド)を中心とした律令(中央集権)国家の違いを認識した後に、蝦夷連合を組織し、自らのアイデンティーと土地と文化・文明を守るために、ヤマトとの戦争を決意する。ヤマトは、蝦夷の地に城柵を建設し、その周辺にヤマトからの移民を送り込み、蝦夷の土地を奪った。アテルイは、北上してくるヤマトの侵略を、胆沢の地でくいとめる為に、最後まで戦う。その死の三年後、桓武天皇蝦夷征伐中止を宣言することとなる。

(6)アテルイは戦争に敗れる。そして、投降する。ヤマトに虐げられてきた少数者の代表者として、ヤマトの民に語りたいことがあった・・・。戦争により自らの土地とアイデンティーを守ろうとした自分は愚か者であった。愚か者ではあるが、自分はヤマトの民と同じ人間である。同じ人間である以上、理不尽な差別は許さない。そして、里人たちに言い残した言葉あった。「故郷を追われても、いつかこの地に帰れ」
(7)蝦夷は部族同士の戦に備え、ヤマト(大伴氏)との交易で馬を入手し、自ら馬を飼育していた。中には、アテルイのように、騎射の術に秀でた者もいた。
(8)蝦夷の里には、季節ごとの花々が咲いている。