zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

食品安全委員会 市民との意見交換会への感想

食品安全委員会 市民との意見交換会 テーマ:食品の放射能基準生涯100mSvについて
開催:2011年8月2日 2時間 参加者市民約90名 募集は7/29まで先着順 場所:東京食品安全委員会 中会議室(港区赤坂)

おおまかな感想(非参加だがweb上資料閲覧の上で)

委員会は多くの文献を調べており信頼できると感じる。低線量での健康被害を心配する立場から見ても、やはりチェルノブイリでの調査研究が十分でなく、低線量での人体への健康影響を示す信頼できるデータでがないという事だろう。また小児の大人との差の実際のデータないと言う事のようだ。逆に広島等原爆データでも低線量長期被曝になっているは興味深い。従って「低線量による長期の内部被曝による健康影響について」十分な研究調査結果ないというべきだが、「現在の人類の知見では少なくとも100mSv以下ではない」という事しか言えないという事。それしかデータがない、逆に言えば低線量での健康被害は起きていない(観測されていない)と現在の科学では言える、となる。科学的に真面目な結論で限度を生涯とするなど安全側でもあるが、規制値を決める上では十分な仕事をしたとは言えない。むしろ今後報告書が世間に出回る事で、今までの危険を煽る論調(ECRRなど)への静めの役割となるのではないだろうか。

委員名簿

山添康(座長:東北大・薬学)円藤吟史(大阪市立大・医学)川村孝(京大・環境安全)佐藤洋(環境研)津金昌一郎(がん研)手島玲子(医薬食品衛生研)遠山千春(東大・医学)花岡研一(水産大。水産学)林真(食品安全性評価センター)村田勝敬(秋田大・医学)吉田緑(医薬食品衛生研)吉永淳(東大・新領域科学)鰐淵英機(大阪市立大・医学)

意見交換会の様子

1論文調査状況、疫学調査チェルノブイリ研究について委員会側が説明
2説明:チェルノブイリ研究に信頼できる論文少ない、
3説明:100mSv以下では被曝−健康被害の関係性は不明
4参加者質問:TV報道での紹介では初歩的質問が多い様子。、対して委員会側は丁寧に説明するも、理解していない人多い様子、時間が足りないためと推測される。

参加した市民の感想が掲載されたブログ

http://sakuradorf.dtiblog.com/blog-entry-125.html
2参加者ツイート(@3sisters3 石川あや子)

私も子連れ出席しました。申し込みは先着順、記者は前日までに申し込みだったようです。出席者にサラリーマン風の男性が多かったことには驚きましたが…

やらせ的なものは感じませんでしたが、「意見交換会」の設定にも関わらず、結論ありきだったのは事実です。 RT @tanakaryusaku: 食品安全委員会が消費者からの意見を聞く公聴会を開いた。質問に答える学者はやたら「安全」と強調する。時節柄「やらせ」と勘ぐりたくもなる。

→市民との意見交換会であって、共に報告書を作るための議論の場ではない、委員会の経緯を見れば結論を市民がどう受け止めるかを委員会が知る機会であったろう。

食品安全委員会の結論および評価書内容

この意見交換会にいたるまでの食品安全委員会の全9回の検討会の傍聴記録はここ=http://blog.skk-inc.co.jp/(㈱生活環境研究所による傍聴者は素人)。また結論である評価書「食品中に含まれる放射性物質」(案)はここ=http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20110726so1


(判った事メモ)
・評価書は全226ページ。評価書案作成にあたって参考にした文献は3300本で委員が皆でその内容を調べた、その結果100mSv以下で健康被害は明確でないとの結論。
内部被曝だけの健康影響の研究データ少ないため外部被曝を含めた疫学データを参考にした
100mSvをどのように振り分けるかは役所の仕事になる
・(山添座長)小児についても数値を出したいと思い、大量の文献を見た。その中でもっとも低い線量が示されていたのが評価書案に載せている文献(A)だ。この文献にも首をかしげたくなる点があったが、それを打ち消すほどの反証もできなかった。従って、できるだけ安全側にたった判断をしてもらいたいという含みを持たせた。
・小児に関しては、線量の推定などで不明確な点のある文献ではあるが、チェルノブイリ事故時に5歳未満であった小児において、白血病のリスクの増加を報告しているものがある。また、甲状腺がんについては、被ばく時の年齢が低いほどリスクが高かったことを報告している文献がある。→この文献(A)→大人との差を見たものではない、単純に小児に低線量での影響あったとの文献であるため大人との差は明確でなく、子供用の基準値も定められない
・評価に用いた知見は、被ばく線量が年間当たりではなく累積線量で表したものが多かった。また、年間当たりで表しているものについても、累積線量から割り出された値であることが多かった。そのため、本評価においては累積線量で表すことが妥当と判断した。
・(津金氏)追加の累積線量で100mSv以上で健康影響が見られるということの根拠にしている文献三つのうち、二つは累積ではなく瞬間被ばくである。二つ目に挙げた文献は0〜125mSvで固形がんの過剰相対リスクが増加したということだが、これはモデルを使ってリスク評価したものだ。私が見た限り、生涯の累積線量でリスクを見ている文献はあまりなく、悪影響が出ているのは瞬間被ばくのものだった。→委員会の生涯100mSvは非常に安全側の判断と言う事
・汚染された食品からの被ばくは緊急時および現存被ばく状況の参考レベルを使って管理することになる。参考レベルとは、それ以上の被ばくが起こることを計画してはいけない線量を指し、広く行き渡っている状況によって決める。→今はICRPの20〜100mSvである
・(山添座長)広島・長崎での被ばくは、実際は瞬間被ばくではなく、飲料水や生活用水を含め長期の被ばくであった。
・(吉永淳専門委員)100mSvが閾値のように考えられてはいけない

私のメモ(疑問と評価書&記者会見などを斜め見した自己解答)

1広島被爆者への疫学調査は信頼できるのか?その中には黒い雨など低線量での内部被曝のデータはないと思われるが、そうしたデータから判断して問題ないか?→信頼できるとしている、また低線量の長期被曝もある
2チェルノブイリでの健康被害調査状況は、IAEAのものも、ベラルーシなど低線量での多大な被害を訴えているもの、この両方とも信頼できないのか?結局チェルノブイリの経験は科学的には反映できていないと言う事か?→おおむねその様子
3100mSv以上で健康被害出るのデータの出典は何か?広島原爆か、それ以外か?疫学的なものかそれ以外か?
4生涯なのか1年間なのか?調査研究状況はどうなのか?→多くは1イベントあたりだが安全側に生涯としている
5子供(乳児、幼年も含め)の線量−被害のデータの大人との差は、その信頼性も含め研究データではどうなっているのか?→明確でない
6勧告案100mSvについて、外部被曝内部被曝の内訳は今の日本への規制を考える上でどう考えるべきか?被曝可能性も含めモデル化できないのか?→できない
7各食品毎の被曝割り当て(食品毎の規制値)の考え方についても、同様その割り当てはモデル化できないのか?→できない
8今回勧告案は平常時としてか?それとも緊急時か?何を持ってこれを判断し、どの指標(線量など)で時期(緊急時か否か)の判断を切り替えるのか?→緊急時である(従って論理的には将来的にはより低い基準値へと改訂される事になる
9これが平常時の勧告案であれば、100mSvはどのように正当化されるのか?なぜより低い値でないのか?明確な健康障害が出ない範囲で規制すべきではないのか?→緊急時である、根拠はICRPの勧告20〜100mSvの範囲にある
10実際の規制値はこれより下側で様々な他の要因も合わせて決められるものと考えれられるが、その際学術者・知識人の意見として、細部まで基準値設定に踏み込まない案は、責任の法規ではないのか?仮に国が100mSv/年(生涯ではなく)を超える基準値を定めた場合、委員会としてはどう意見を出すのか?→意見は出せない

報道状況

NHK7時のニュースなどで5分程度紹介(長い)、日本テレビNEWS ZERO」では厳しい意見を長く紹介した。
NHKニュース 2011年8月2日)

一生のうちに100ミリシーベルトを超えて被ばくすると健康に影響が出るおそれがあるとする、国の食品安全委員会の報告書について、市民の疑問に答える会合が、2日、東京で開かれ、参加者からは食の安全に不安を訴える声が相次ぎました。
食品安全委員会は先週、食品に含まれる放射性物質の健康影響について、一生を通して累積でおよそ100ミリシーベルトを超えて被ばくすると、がんの発生率が高まるおそれがあるとする報告書をまとめました。この報告書について、2日、一般の人の疑問に答える会合が東京で開かれ、90人が参加しました。この中で「生涯100ミリシーベルトを目安とすると、食品に含まれる放射性物質の量を定めた今の暫定基準値は大丈夫なのか」という質問が出されました。報告書をまとめた、ワーキンググループの座長で東北大学大学院の山添康教授が、「できるだけ被ばく量を減らしていくことが大切で、基準は厚生労働省などで検討していくことになる」と答えました。また、子どもは大人より厳しい基準にすべきという意見が相次ぎましたが、山添教授は「チェルノブイリ原発事故で子どもの甲状腺がんなどが増えるという研究があるが、データに信ぴょう性がなく、具体的な目安を示せなかった」と説明しました。3歳と5歳の子どもがいる母親は「子どもにリスクがあるかもしれないのに、具体的な数値が示されず残念です。子どもと大人が同じ基準というのは不安です」と話していました。食品安全委員会は、今月27日まで意見を募ったうえで、厚生労働省に報告し、そのあと、厚生労働省などで食品に含まれる放射性物質の基準について検討することになります。会合のあと、山添教授は「チェルノブイリ原発の事故では、食品などから取り込まれた放射性物質が3年間は人の体内から消えないというデータがあり、累積の被ばく線量を生涯100ミリシーベルト以内に抑えるためには、今の暫定基準値を厳しくする方向で見直す必要があると思う」と述べました。また、子どもへの影響については、「現時点で科学的に分かっているデータを基に考えると、子どもについても、累積の被ばく線量を生涯で100ミリシーベルト以内に抑えれば、健康の影響はないとみられ、大人と同じ基準で心配ないと思われる」と話しました。

(FNNニュース)

福島第1原発の事故を受けて、内閣府食品安全委員会が示した「生涯で受ける累積線量は100ミリシーベルト(mSv)が限度」とする食品健康影響評価案について、2日、一般の人を交えての意見交換会が開かれた。
意見交換会には、子ども連れの母親など、およそ90人が参加した。
「100ミリ」という数値や、子どもへの影響に関する意見が多く寄せられ、「子どもにはもっと特別な基準を設けてほしい」という要望や、「子どもの通う保育園では、東北や北関東の食べ物が出されているが、本当に大丈夫だろうか」などの質問が相次いだ。
参加者は「よくわからないというか、あまり意味がなかったかな」、「個人的には、それ(100ミリシーベルト)以上に緩い値でもよかったのではないかなと思っています」などと話した。
食品安全委員会は、今後、一般の人などから広く意見を聞いたあとに、食品健康影響評価を取りまとめる予定で、厚労省はその評価をもとに、具体的な食品の規制値についてあらためて検討する方針。