zames_makiのブログ

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グリーン・ゾーン(2010)イラク戦争

→予告編を見ると大野氏の感想どおり映画会社は政治性は言わずアクションと謎解きの映画として売ることに決めたようだ。「衝撃的なラスト」(売り文句)は隠しておいてその解釈は観客に任せるという事。あえて映画の意味を決めずその解釈で論争が起きればそれが映画の宣伝につながる事を期待しているのだろう。ラストが単なる物語内の謎解きに終らずイラク戦争の正当性や意味に関わるものであればたいしたものだし、それが懐疑的なものなら尚正しい、それはアメリカ公開の成績で判るだろう。アメリカ人はたとえそれが真実でもイラク戦争を否定する映画をけして好まないと思われるから。注意すべきなのはアメリカの批評家の映画評はアメリカの戦争に賛成か反対かで大きく左右されるものだという事、批評家が誉めても売れず、逆に批評家が貶しても売れる可能性はある。批評家と大衆全てを抱きこもうとすれば「ハート・ロッカー」のように曖昧な意味づけに終る事になる。

原題:GREEN ZONE 製作:2010年 フランス/アメリカ/スペイン/イギリス
米公開:2010年3月12日 日本公開:2010年5月14日 1時間54分 配給:東宝東和
監督・製作:ポール・グリーングラス 原案:ラジーフ・チャンドラセカラン(「Imperial Life in the Emerald City(2006)」の翻訳『グリーン・ゾーン集英社、2010年2月26日に出版)) 脚本:ブライアン・ヘルゲランド  音楽: ジョン・パウエル
出演:マット・デイモングレッグ・キニアブレンダン・グリーソンエイミー・ライアンジェイソン・アイザックス
…サスペンス・アクション。イラク中心部のアメリカ軍駐留地域“グリーン・ゾーン”を舞台に、大量破壊兵器の所在を探る極秘任務に就いた男の決死の捜査を描く。銃撃戦などのアクション・シークエンスを手持ちカメラで活写した臨場感あふれる映像は圧巻。ロイ・ミラー(マット・デイモン)と彼の部隊は、砂漠地帯に隠された大量破壊兵器の行方を追う極秘任務に就くが、国防総省の要人によって手掛かりを奪われてしまう。国防総省の動きを不審に思った彼は、同じ疑念を抱いていたCIA調査官ブラウン(ブレンダン・グリーソン)と共闘することに。部隊を離れ単独で調査を開始し、執ような妨害工作に苦しみながらも謎の核心に迫っていく。
公式サイト:http://green-zone.jp

中東研究家の感想(大野元裕氏・2010年1月29日)

注:大野氏は2010年7月に行われる参議院選挙で民主党から立候補する事を公表している、大野氏のアメリカの中東での戦争に関する政治的姿勢は詳細不明だが、研究者として事実を抑えるためアメリカに批判的になるものの、土井敏邦氏などと異なり全体としては「アメリカやむなし」とのややアメリカ寄りの姿勢と推測される
http://tikrit.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-9fa0.html

 (前略)私だけのための試写会に行ってきました。配給会社としては、この映画を5月時点でどう売ろうかと考えているようであると同時に、映画のディテール等についても気になったようです。
 (中略)オバマ政権は、ブッシュ政権アフガニスタンで行ったのと同様に、「(イラクでは)選挙が実施されて民主主義が実現し、良い方向に向かっている」と喧伝しながら駐留米兵撤退のモメンタムを作り、11月の中間選挙に向かおうとするのでしょう。これに対してこの映画は、「ちょっと待ってくれ」と冷水を浴びせることになるのでしょう。
 (中略)グリーンゾーン内の論理は占領者の論理で、そこでうごめくのは米国内の官僚の論理であり、権限争いです。それにもかかわらず、グリーンゾーンの論理はイラク全土、イラク人の命に決定的な重要性を持ち、彼らの運命を左右するのです。映画では、グリーンゾーンの論理が暴かれることになりますが、この論理こそ、イラクを泥沼に引き込んだ理由の一つと言えるのかもしれません。この意味で、映画の中で最後に「本当のイラク人の顔」が現れる瞬間は、「あっ」と思わされました。