zames_makiのブログ

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月の光・トラン・ブーラン(1954)松林宗恵

公開年月日1954/09/21 新東宝 92分 ※16mm 
監督:松林宗恵/脚本:岸松雄/原作:速水五郎/撮影:西垣六郎/音楽:飯田信夫
出演:雪村いづみ(ベルダ)小笠原弘(小林伍長)沼田曜一(アリ)三原葉子(メルド)殿山泰司イスカンダル天知茂 細川俊夫
=戦時中、南洋での土人との恋
…夜学教師の小林は街で「トラン・ブーラン」のレコードを聞いて、十余年前の南方に想いを馳せる──。戦時下のマライを舞台にした悲恋もの。雪村いづみが原住民の娘に扮して好演している。
…夜学教師の小林は街でトラン・ブーランのレコードを聞いて、想いを十余年前の南方に馳せた。その頃マライの一集落に小林達の部隊が駐屯し、彼は日語学校の教師を命ぜられた。ベルダはその生徒だったが、両親を日本軍に殺された彼女は深い恨みを持っていた。彼女の兄アリは結婚費用欲しさにゲリラに加わって捕えられたが、小林は彼を釈放し逆スパイとしてゲリラ隊に戻した。然しそれがばれてアリとベルダが危くなった時、出動した駐屯隊にゲリラは全滅させられたが、小林は傷いて倒れた。ベルダの献身的な看護で傷はいえ、彼女はいつしか小林に思慕を寄せるようになった。然し小林はただ彼女の上に国の妹を偲び、妹として愛していたのだ。それにあきたらぬベルダは、アルナンドとサリナンの二人が結婚を申込んでいるけれど、どうしたらいいかと小林に相談した。彼が二人を呼んで訳を話すと、二人には夫々許婚があり、ベルダは小林を好きなのだと答えた。小林はベルダを呼んで、明日の命も知れない自分を慕ってはならぬと説き聞かすため、彼女に村はずれの小沼のほとりで待てと通知した。胸おどらせて待つベルダの許に小林は現れなかった。急に某地へ転進の命令が出たのだ。それを知ったベルダが駆けつけたとき、小林をのせたトラックは見る見る遠ざかり、二人はついに再び会えなかった。わびしい夜学の教壇の上で、今彼はベルダの歌うトラン・ブーランの歌に胸をせめつけられる思いだった。

=戦争で南方でいい思いをした兵士がそれを回想する話。今の日本で昔の戦友に再会した主人公が思い出す、ラストは再び今にもどる。主人公はマライで原住民の子どもに日本語を教える優しい兵。ベルダ(雪村)は時に学校にくる浅黒いマライ人の娘で、彼に淡い恋を抱く。彼女の兄アリ(沼田)はもともと日本軍に反感をもっていたが、結局日本軍のスパイになってしまい苦しむ。etcあっても結局日本兵は彼らの都合である日村を去ってしまう。再び今の日本にもどって回想にひたる主人公。
 浅黒いマライ人の娘が沼のそばで髪をすいたり、歌をうたったりするのが見せ場。片言の日本語と雪村のやや垢抜けた顔立ちがそれらしい。マライ人の反乱のシーンはアクション主体の捕り物シーンだが銃撃戦でとくに死ぬ者はなく日本軍が悪者にならないよう工夫されている。主人公の上官は兄アリをスパイにするか否かでもめるが彼らは日本軍の都合しか考えておらず、その点で嘘はない。しかし日本軍がマライ人民間人を殺したことや、占領政策で苦しめたことなどへの反省はなく、何より戦争でマライ人にひどい迷惑をかけたとの意識はない。
 占領下のアジア人を日本映画が描いた珍しい例。

上映 ラピュタ阿佐ヶ谷

2009年9月20日〜26日 10:30より1回のみ上映 水曜¥1000