zames_makiのブログ

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政権交代へのNHK社説

時論公論政権交代 民主党は民意に応えられるか」(2009年08月31日)

(藤井キャスター)衆議院選挙に圧勝した民主党は、速やかに鳩山新生政権を発足させるための態勢づくりに入りました。歴史的な政権交代を実現させることを選択した民意に、鳩山民主党は応えることができるのでしょうか。城本解説委員がお伝えします。

(城本勝解説委員)戦後最多の308議席自民党総裁は辞任表明。公明党代表は落選。政権選択選挙有権者が示した意思は、政治が根本から変ることを求めるものでした。

自民・公明の与党は、政権交代は日本に革命を起すようなもので、混乱を引き起こすだけだと訴えましたが、有権者は、未知数であっても、新しい政治の可能性の方を選択しました。鳩山民主党は、この民意に応えることができるのか。今夜は、歴史的な政権選択選挙の意味と、新政権の行方を考えます。


この選挙結果を、どう見ればいいのか。ひとことで言って、それだけ「有権者の変化への期待が大きかった」ということだと思います。NHKの出口調査で、「何を重視して投票したか」を聞いたところ、最も多かったのは「マニフェスト政権公約」の35%、次いで「政権交代」33%で合わせて七割近くにのぼっています。

与党側は、これまでの実績を強調し、政権継続を訴えました。しかし、政権公約と政権選択を重視した人が多かったということは、有権者の多くが、これまでの自民党政治に対して厳しい評価を下したことを意味します。解散・総選挙を先送りし続け、政策の中身よりも、選挙の顔に誰がふさわしいかということばかり議論しているうちに、「政権交代是か非か」を争うという選挙の土俵に乗せられてしまったことが自民党の最大の敗因だった思います。


それにしても、民主党は、308議席という大きな期待に、どう応えていくのでしょうか。選挙結果を受けて、鳩山民主党は、速やかに新政権を発足させるために動き出しました。社民党国民新党に連立協議を呼びかける一方、国家戦略局行政刷新会議など新たな機関を含めた新政権の骨格についても検討に入りました。政権移行に伴う混乱を最小限に抑えて、マニフェストで示した公約を着実に実行していくことで、国民の期待に応える姿勢を打ち出す狙いだと思います。
 時間が限られていることも、民主党に体制固めを急がせています。来月には国連総会初め外交日程が控えているため、18日までには、鳩山内閣を発足させておきたいという事情もありますが、来年夏の参議院選挙のことを考えると、できるだけ早く、新たな政策を実行する体制をスタートさせる必要があるためです。
 民主党は、子ども手当てやガソリンの暫定税率の廃止などマニフェストで掲げた政策を来年度から段階的に実施していくとしています。初年度からある程度の実績を出しておかないと、来年夏の参議院選挙で厳しい審判を受ける可能性があります。
 そう考えると、新政権を発足させて、霞が関の官僚たちもコントロールしながら、年内に来年度予算編成を終えるためには、早く新体制を固めておく必要があります。


このため民主党は、鳩山代表と小沢、菅の二人の代行、岡田幹事長ら執行部が、社民党国民新党に連立協議を呼びかける一方で、政権の新たな体制についても検討を始めました。
民主党は、政府には100人規模で国会議員を入れる。総理大臣直属で予算編成や安全保障の基本方針を決める国家戦略局と、行財政改革地方分権を進める行政刷新会議を新たに設置する。それぞれのトップには党幹部を配置して、政治家主導で政策を実行していくという方針です。
与党の了承が得られなければ、政策決定ができず、責任の所在もあいまだと言われた自民党政権の反省から、総理大臣を中心に政治家が基本的な方向性を決めて、与党と官僚組織がそれを支えるという体制に変えるのが狙いです。
しかし当選した308人の半数近くは新人。即戦力の人材は少ないという党幹部もいます。来年夏の参議院選挙の事を考えると、小沢代表代行に続投してもらうべきだという声がある一方で、小沢代行に閣内に入ってもらわないと「権力の二重構造」という批判を受けると心配する声もあります。
構想どおりの人事ができるのか。鳩山代表の最初の試金石になります。


難しいのは、それだけではありません。例えば、予算の組み替えです。いままでの官僚が省庁ごとに積み上げるやり方を根本から改めて、総理大臣官邸と国家戦略局を中心にトップダウンで決めていくといっても、具体的な作業になると官僚のサポートがなければ実行は難しいと思います。民主党は、今年度補正予算の執行を一部中止して、他の予算に回す方針も示していますが、経済情勢によっては新たな景気対策も必要になることも考えられます。
 先ほども触れましたが、来年度からは子ども手当ての一部実施などのために7兆円の新たな財源が必要です。しかし時間が限られている中で、官僚の抵抗を抑えて、思い通りの予算編成を進めるためには、それまでに新体制を軌道に乗せておく必要があります。


有権者マニフェストをもとに、どの党に政権を任せるか選択する。そうした「政権選択選挙」が初めて行われた結果、政権交代が起きました。衆議院選挙に小選挙区制度が導入されて13年になりますが、鳩山、小沢、菅、岡田の四氏をはじめ民主党幹部たちは、いずれも、自民党に対抗できる政党をつくり、マニフェストを武器に政権交代を実現することを共通の目標に行動してきました。二大政党が交互に政権を担当することで、国民の意識の変化に対応し、緊張感のある政治が生まれるという主張からです。その意味では、自民党が政権を握り続けてきた政治のあり方が、今回の選挙で大きく変る可能性が出てきたことは間違いありません。
 ただ、見てきたように、大きな政策転換を実現するためには、それを実行する政治体制をつくることができるかどうかがカギになります。


もう一つ、重要なことは、惨敗を喫した自民党が態勢を立て直すことができるかどうかです。民主党政権が民意の期待に応えられず失敗したときは、今度は自民党中心の政権に交代する。その可能性があってはじめて、政権交代が普通に起きる政治に変わることになります。しかし、自民党が、なぜ敗北したのか、これまでの政治路線のどこに問題があるのかを総括せずに、単に次の選挙の顔に誰がいいのかという総裁選びを繰り返すようなことであれば、再生の道のりは険しいと言わざるを得ません。


選挙中、「なぜここまで支持されるのか分からない」と戸惑う民主党関係者の声を何度も聞きました。有権者の政治を変えたいという意識は、政権交代を目指してきた政治家の予想さえ超えるほど大きいものだったのかもしれません。そうだとすれば、鳩山新政権が、その民意の期待に応えることができなければ、政権交代そのものへの期待も急速に薄れてしまいます。限られた時間の中で、変革を求める民意に追いつくための体制固めができるかどうか。鳩山民主党には、そのことが問われています。