zames_makiのブログ

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NHK ETV特集「ガザ・なぜ悲劇は繰り返されるのか」

=大変素晴らしい内容、NHKの勇気ある番組、米国では反ユダヤ主義としてけして放映できない内容だった。
番組には土井敏邦氏と古居みずえ、臼杵陽氏らが出演したが、発言では土井氏が目だった。それはこの番組が彼の主張を軸にしたものだったし、それが今回のガザ虐殺の真相(我々の観察できる結果)だったからだろう。パレスチナ人がどんなに酷い目にあったかというものは、NHKは既に放映している。イスラエルによる攻撃が、まさに虐殺(イスラエル兵は眼前に見えている母子を命令に基づき殺害している)であったという番組は、4/25のBSドキュメンタリー「子どもたちは見た〜パレスチナ・ガザの悲劇」の古居みずえ氏の報告や5/8の「きょうの世界」で、既に放映しており、ここでは別の面を説明していた。しかもそういう内容をNHK的な規範をまもりつつ、臼杵氏にイスラエルなどの代弁をさせ(臼杵氏は可哀そうだった)、批判を受けぬようやっているのも大したものだ。

 番組では、
1:今回のガザ虐殺が単に殺害だけでなく、パレスチナの子供に深刻な心の傷を残している様子を彼らの日常の中から明らかにし
2:イスラエルの破壊が、人の殺害にとどまらず農業や製造業など戦争となんの関係もない産業の破壊に及んでいる事を明示。イスラエルがガザを「叩き潰そう」としている、即ち根底からの生活破壊をしている事を説明した。(これは、ゆっくりとした全員殺害で、それによってパレスチナ人を完全に屈服させ沈黙か、あるいは自発的退去を促すものだと思われる)(注参照)
3:この事態が、2006年頃のイスラエルのガザ撤退の結果であったこと。撤退が事態を明るい方向ではなく、悪い方向のきざしだった。それまで安い労働力の供給源として利用していたガザを隔離し完全に封鎖する事になった事を説明。
4:ハマスは慈善組織の活動している部分もあり、軍事組織だけではなく、それでパレスチナ人の支持を得ているという説明。
5:イスラエル国民は目先の自分の身の危険しか考えておらず、見ない。パレスチナ人の抵抗(ロケット弾)がなぜ起こるかまったく考えない。今の事態を理解していないというイスラエル人学者の弁での説明。
などであった。是非再放送を望みたい。素晴らしい番組。英語テロップをつけてアメリカで放映すべきだ。
→なお反ユダヤ主義などについてはhttp://d.hatena.ne.jp/zames_maki/20090321#p1他を参照されたい

(ところで番組の最後の方で司会者が言った「パレスチナ側にも努力するべき余地がある」というのは、ハマスファタハに統一を求めるという事だろう。それは最低限の事、勿論必要だ。同胞が全員殺されかねないのに分裂しているパレスチナの指導者はどうかしている。それ以前に彼らはもっと国際社会に訴える(すなわち宣伝し広報する)べきだ。なぜなら彼らは実際国際社会に食わせてもらっている訳だし、彼らを救うのも国際社会しかないのだから。
 こういった観点はアルジャヤジーラなどを見ているアラブ人にも共有されているものと思う。)

(注)イスラエルのガザ攻撃の真の目的

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」を書いた米国の政治学者ミアシャイマー今回のガザ虐殺の目的は、「パレスチナ人を屈服させる事」だと書いている。パレスチナ人を精神的にも敗北させ(物理的には完全に敗北している)、抵抗をやめさせ、パレスチナ全土で完全にイスラエルの意のままの行動を行えるようにする事であるという事だ。それは一層の分断と抑圧による実質的なパレスチナ全土のイスラエル領土化で、そこでのパレスチナ人の自由と権利をまったく認めない人種差別だろう。
(出典:Another War, Another Defeat、雑誌「The American Conservative」January 26, 2009、John J. Mearsheimer (http://www.amconmag.com/article/2009/jan/26/00006/

「実際の目的はイスラエルがどのようにしてガザの100万人以上のパレスチナ人を意のままにするかという、長期的ビジョンと関わっている。・・・イスラエルパレスチナ人との国境をコントロールし、空域も水資源もコントロールしようとしている。そのために欠かせないのはパレスチナ人への集団的懲罰であり、彼らが打ちのめされた民族であり、イスラエルに自分たちの未来を委ねるしかないのだという現実を受け入れさせるようにしたのだ。」
原文:The actual purpose is connected to Israel’s long-term vision of how it intends to live with millions of Palestinians in its midst. ・・・Israel would control the borders around them, movement between them, the air above and the water below them.
The key to achieving this is to inflict massive pain on the Palestinians so that they come to accept the fact that they are a defeated people and that Israel will be largely responsible for controlling their future

NHK ETV特集「ガザ・なぜ悲劇は繰り返されるのか」

放送:2009年5月10日 NHK教育 22:00〜23:30
http://www.nhk.or.jp/etv21c/lineup/index.html
...去年12月、イスラエル軍による攻撃に見舞われたパレスチナ暫定自治区ガザ。空爆と侵攻によって破壊され、多くの犠牲者を出した。3月に入り国際社会はガザの復興支援に乗り出した。しかしガザの復興と和平への道のりは、遠い。
 今から16年前の1993年、オスロ合意が結ばれ、国際社会はパレスチナ和平に期待を寄せた。2005年にはイスラエルがガザの入植地から完全撤退し、パレスチナ人の独立国家建設が期待された。しかしその後、期待とは全く違った経過をたどる。イスラエルによるガザ封鎖、ハマスの台頭、自爆テロ、数度にわたるイスラエル軍の侵攻、そしてハマスパレスチナ主流派・ファタハの対立と武力衝突、そしてハマスによるガザの支配、イスラエルへのロケット攻撃と去年末のイスラエル軍の侵攻・・・パレスチナ和平への期待は何度も生まれ、そしてその夢は蹉跌(さてつ)をきたした。

 なぜ、ガザで悲劇は繰り返されるのか。国際社会の支援は、パレスチナに和平をもたらすことができるのか。ジャーナリスト・土井敏邦氏と古居みずえ氏は、パレスチナの変遷を、民衆の視点からつぶさに見てきた。そしてイスラエルが撤退した直後の1月にもガザに入り、被害の状況、民衆の様子、イスラエルの動向、そして和平と復興の行方を取材している。そこにはこれまであまり知られていない、歴史と現実が横たわっていた。イスラエル撤退後のガザの行く末を考える。