zames_makiのブログ

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イスラエルのガザ進攻は何が原因なのか

(1)広河隆一氏のマスコミへのコメント

 パレスチナの悲劇について大部の記録映画を完成させた広河隆一氏はDAYS JAPANブログで、日本の多くのメディアは今回のイスラエルの攻撃は「ハマス側が先に手を出したから起きた」と伝えているが、それは間違いであり、紛争の真の姿を伝えず、結果的に圧倒的に優勢で虐殺に近い事を行っているイスラエルが正しい行為を行っていると、読者に誤解させる報道を行っていると批判しています。広河隆一氏はこの批判文をメディア各社にFAXで送ったということです。
以下、要点抜粋

イスラエルによるガザ攻撃の原因はハマスが作ったという報道について。
 最初に手を出すのが「パレスチナ側」と描かれています。こうした考えは、朝日新聞だけでなく、ほとんどのメディアに共通しています。イスラエルは自爆攻撃やロケットの攻撃で大変な犠牲を払い、たまりかねて今回の空爆と侵攻に及んだ、となっています。しかし事実はその通りなのでしょうか。


日本のメディアは(パレスチナの攻撃を)「自爆テロ」と呼びますが、「自爆テロ」という言葉は、日本の造語で、英語では「自爆攻撃」「自殺攻撃」と呼びます。攻撃対象が占領地の中のユダヤ人入植地や検問所のイスラエル兵であった場合などは、海外では「テロ」とは呼ばない場合が多い


パレスチナ側がイスラエルに殺害されて、その復讐で自爆攻撃を行った場合が多いのです。だからイスラエル人が一方的にハマスの暴力にさらされてきたという解説のし方は、占領という暴力の中で、大勢のパレスチナ人が殺害されてきた事実関係を調べていない


2次にロケット攻撃の問題です。
 今回のガザ攻撃の理由となったのが、ハマスのロケットである(中略)ロケット弾で、イスラエル側に大変な犠牲が出ているために、今回のガザ攻撃が行われたかのように伝えられている点については、正しいのでしょうか。それほどハマスのロケット弾はイスラエルに多大な犠牲を与えたのでしょうか。


パレスチナ側の犠牲者:2006年1月のガザにおけるハマスの政権支配以降、今日のガザ空爆直前までのイスラエルの攻撃によるガザのパレスチナ人死者数は、446人です(英ガーディアン紙)。
イスラエル側の犠牲者:2006年1月以来、今日のガザ空爆直前までのガザからのロケット弾によるイスラエル人の死者数は、計5人−特筆すべきは、イスラエル空爆までの半年間に、ハマスのロケット弾による死者は1人も出ていないということ


3そもそもなぜこんな問題が起きたのかを、きちんと解説するメディアが非常に少ないことは、残念です。


この間のガザ封鎖がどれほど非人道的なことで、人々はどれほど追い詰められた生活をしていたか、1967年から始まるイスラエルによる占領支配、そしてさらに1948年のイスラエル国家建設とパレスチナ難民発生(アラビア語で「大惨事」を意味するNAKBAという)から問題を説き起こす記事が非常に少ないのにも驚かされます。

ガザの犠牲者たちのことを正しく伝えなければならないメディアが、攻撃する側に追随したと思われても仕方ない報道をし、しかも問題の原因を無視している状態では、情報を受け取る側は、正しい判断ができなくなる


2009年1月12日 DAYS JAPAN編集長 フォトジャーナリスト広河隆一  

(2)中東研究者早尾貴紀氏のコメント

 上記について言えば2009年1月12日開かれた緊急集会でも中東問題の専門家はみなそう言っていましたし、又ネット上で参照できるものなら専門家の一人早尾貴紀氏も同じように書いています。すなわち今ガザで起きていることはイスラエルによるパレスチナ人の虐殺だということです。
http://hayao.at.webry.info/200812/article_9.html

いまガザ地区で起きていること―イスラエル軍が突然の空爆によって、一方的に300人を超すパレスチナ人を虐殺したこと―は、断固として報道されているような「報復の連鎖」などではない
 あたかも、「停戦合意」が切れてハマース側がロケット弾を打ち込んだことが、イスラエルによる「報復攻撃」として大規模空爆を呼び込んだかのような報道のされかたがなされている。ハマースが06年のパレスチナ総選挙に勝利して以来、その民意がイスラエルや国際社会によって尊重されたためしはなく、今年だけを見ても、イスラエル軍空爆は断続的に繰り返され、パレスチナ人の死傷者は後を絶たない。また、物資搬入の制限も常軌を逸しており、兵糧攻めによって、人間としての生活を根本から脅かしてきた。
 こうした点については、パレスチナ情報センターの記事を参照されたい、
ガザ地区の「ホロコースト」」
・・・・・・
 この問題を考えるにあたっての適切な日本語の書籍が見当たらないことに気がついた。
 最近のルポとしては、『インパクション165号』のイスラエル特集に掲載された古居みずえ氏の「現在がナクバだ――封鎖されたガザで何が起きているか」ぐらいか。

(3)ハアレツ紙記事「ガザ全面攻撃は6ヶ月前から準備されていた」

 パレスチナ関係ブログP-navi infoが紹介している記事。全文翻訳されておりここで読める。
イスラエル軍は6ヶ月前から今回の攻撃を準備していたという、それではハマスのロケット弾攻撃は単なる言い訳だという事だろう。

国防省内の複数の情報源によると、エフード・バラク防相が軍に今回の軍事作戦の準備開始を命じたのは6カ月前。つまり、ハマース相手の停戦合意交渉を始めたばかりの時に、すでに全面攻撃の準備に着手していたということである。この時、バラクは、停戦がハマースにとって対イスラエル決戦の準備期間になる可能性はあるとしても、イスラエル軍もまた同様に準備期間が必要だと主張したという。」