zames_makiのブログ

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河合隼雄の国家への擦り寄り

河合隼雄は晩年、国家に擦り寄った。小渕内閣で彼の私的諮問機関、「21世紀の日本懇談会」の座長になった。その報告書(2000年)では「統治としての教育」としてとんでもないことを書いている。
1国家にとって教育とは一つの統治行為であり、国民に対し、「ある程度の認識能力」を要求する権利を持つ
2認識能力とは、君が代斉唱、愛国心が含まれる
3義務教育とは、国家が国民に行う義務ではなく、国家が国民に要求できる権利である、すなわち国民は納税や順法の義務と並び、愛国心など国家の要求する認識能力(考え方・思想)を身に着ける義務を負う
4下記の講演で河合は、(1)道徳と宗教は大事だ=国が教え込むべきだ(2)国がそれをやると反対されるから、私が上手にだましてやらせます、と自分が国民をだますことを自民党国会議員の前で宣言している
朝日新聞岩波書店などのマスコミは、河合にまったくだまされ、河合の言説を宣伝しつづけた
6河合は、国際日本文化センターの所長→文化庁長官→文化勲章授与→さらなる野心→「心のノート」配布をした、国家(特に文部省)に国家主義のカードを切るのが日本では出世の早道になっている
7「心のノート」:富士山+お月見+室生寺+北方4島ののった日本列島の地図→愛国心、となっている


「心のノート」のように脈絡のないものをもって日本の伝統、道徳とする「間違いの観念連合」の例は、1966年10月「期待される人間像」(森戸辰男)に見られる。森戸は、文部大臣を経験、中央教育審議会会長をつとめ、生命への畏怖+宗教的情操+愛国心天皇崇拝は一つだという、むき出しの愚かな観念連合をその報告で述べている。


このような観念連合の弛緩(普通結びつかない考え方が一つになっていること、つまり自然景観として美しい日本を愛す事が愛国心天皇崇拝と同じであるとされること)は、森戸個人の過ちではなく近代日本のもつ精神病理である。生命の根源、民族の生命、精神的な生命、畏敬、悟り、気魄、有機的国家、民族、忠誠、愛国心天皇への敬愛、といった無規定な言葉をキッチュに混ぜていけば、簡単に日本の保守イデオロギーが出来上がる。
(野田正彰、国家が宗教的情操を語り始めるとき、所収「国家と宗教」下巻 法藏館, 2008年)

国家戦略本部での河合隼雄の講演

「21世紀日本の構想」講師 河合隼雄京都大学名誉教授)2001年11月12日
http://www.vectorinc.co.jp/kokkasenryaku/index2.html
 (前略)そういう面白いことをやってきた国ですので、今、西欧、欧米の個人主義的なものを取り入れながら、キリスト教のバックアップを必要としない、日本的個人主義というものは生まれるのではないかと私は思ってますし、そういうことをしなくてはならない。
 そのためには、道徳と宗教がすごく大事になるんじゃないかと思っています。ただ、そのことを、ご存じのように、あの報告書には意図的に書きませんでした。なぜかといいますと、さっき言いましたように、宗教とか道徳のことを政府が言うと、どんなにいいこと言ったって、ジャーナリズムは全部反対するんです。ジャーナリズムが全部反対したら、国民は全部それに同調しますから、言うだけ損みたいなものなんです。いいことを言えば言うほど反対されますから。ほんとなんです。だから、そのことは抜いておこう。抜いておくけども、ぼくらは絶対考えねばならない。
 今、非常に有り難いことに、道徳ということに関するアレルギーは随分減ってきました。今まで道徳と言ったら、わしはいややという人が多かったですが、このごろはいろいろな人に聞いても、それはある程度要るという考え方が何となく出てきまして、今、実は私は、京都で道徳教育振興会か何かの座長をしてまして、文部科学省では心のノートというのを考えてるんですが、それをつくるほうの座長もしてます。つまり、日本人がだんだん、新しい個人主義を目指していく中で、どういう道徳を身につけていくかということをみんなで考えようということを言っても、ジャーナリズムもあんまり反対しないんじゃないかというふうに考えています。
 ただ、これを極端に政府がとか、総理大臣がという言い方をすると、絶対反対されると思いますけど、上手に持っていけばできるのではないか。そういうことを考えるのが我々学者といいますか、そういうものの役割だと思っています
 宗教のほうは非常に難しいんですが、ついでに言っておきますと、宗教というものを高等学校で教えるんだったら、どんな教科書で教えられるかというのをいっぺん試しにつくってみようかなんていうことをいま考えているんです。それも上からつくるんじゃなくて、下のレベル、国民のレベルで、このぐらいのことは知ってないと話にならんぞというのをつくってみようかなということを考えています。
 質問していただいたほうがいいかと思いますので、このぐらいで。