zames_makiのブログ

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人間であるために(1974)35mm

製作:「人間であるために」製作委員会=新映画協会 公開:1974.04.24 100分 白黒
監督・脚本:高木一臣
出演:伊藤雄之助、中野誠也、松山省二、夏桂子、新井春美、塚本信夫、新海百合子、長浜藤夫、福地悟朗、川上夏代、山田美千代、安東結子、謙昭則、フレッド・マセン、三谷昇、草薙幸二郎、佐藤英夫
主題歌:“To Be A Man” レン・H・チャンドラー


(以下、映画チラシより)http://homepage2.nifty.com/taejeon/kaiho/kaiho-34a.htm
 【あらすじ】冬、昭和28年。原爆投下行為の違法を問う原爆裁判、その可能を信じて岡本弁護士(62才、大阪)は黙々と動き始めた。未だ放置されたままの被爆者たち、真の平和を考え、純粋に人類の滅亡を思うあまりの発念である。とくとくと裁判の可能と協力を説いて歩く岡本に対して、反応を冷たく、時には狂人視されることさえあった。それでも信念は微動だにしない。米国の法廷に原爆裁判を提起して、原爆の正体を世界の人類の前にさらけ出さねば……
 そんな彼に唯一の若き協力者が現われた。松井弁護士(32才、東京)である。間もなく、依頼してあった米国の人権協会より受諾の返事が、だが、訴訟費用として一千万円を用意しろと云う。無料奉仕を考えていた岡本にとっては、諦めろと云はれたのと同じことであった。岡本は日本の裁判所に提訴する意を固めた。日本国家にも戦争責任が、原爆投下の国際法違反は理論的立証が可能だし、政府には被爆者を救済する義務があるはずだ。昭和30年4月、被爆者を原告として損害賠償を求める原爆訴訟が東京地裁に提訴されたのである。裁判は当初から難航、国家賠償法講和条約19条の解釈が論争の中心となった。そして2年を経た4月、突然、岡本は脳溢血で他界した。柱を失った原爆裁判、取残された青年弁護士の松井は深い悲しみを乗り越えて裁判完遂の決意を固める……


 【解説】世界で初の原爆裁判は、一人の老弁護士の強固な信念に端を発している。映画は、この実際に起った原爆裁判を縦の線として取り上げる一方、被爆二世、朝鮮陣被爆者、童話作家等の多彩な人物設定を加味した人間ドラマである。製作は映画「若者たち」演出部の福田元彦が担当し、同じく同映画でチーフ助監督を務めた郄木一臣が自ら脚本を書き演出した第一回監督作品である。その他、映画「若者たち」を製作したスタッフが各パートに参加。主題歌「人間であるために」は、映画に賛同したアメリカのフォーク歌手レン・チャンドラーが歌い、また、ポスタースチールには篠山紀信が積極的に参加している。
 出演者は、主人公の岡本弁護士をベテラン伊藤雄之助が精魂こめて演じ、中野誠也、松山省ニ、夏桂子、塚本信夫など映画「若者たち」の出演者が、この高木監督の第一回作品に友情出演している。また、NHKドラマ「北の家族」で健康な演技を買われた新井春美が始めて独立プロ作品に出演している。


 【評】傷ついてもまともに生きる人たちの強さが、見るものの胸にひしひしと迫る。みんなが腰をすえて取りくめば、原爆にさえ人間は勝ち得ることをこの映画は黙示的に教える。久しぶりに卑しさのすこしもない映画をみた。山内 久(シナリオライター

 伊藤雄之助弁護士が狂乱したように、原爆反対を街路で呼ぶところと、ガレキの地に、素裸の子供がとぼとぼと歩くラストシーンが印象深い。斎藤 正治(映画評論家)

 原水爆の意味をみずからの問題として考えている真摯な映画です。若い人たちのその真摯さに敬服します。広島、長崎の問題は、けっして過去に埋もれていく性質のものではなく、ぼくたちの未来を決定する意味をもっています。この映画は、それを見る者に告げています。品田 雄吉(映画評論家)

 「人間であること」から始めている素朴さが、違う価値体系に出会ったように清新だ。既製の作品を野心的に意識せず、仲間うちの私語みたいになっていない若さがいい。長塚 杏子(評論家)

 ヒロシマナガサキの意味をなお今日の問題として問い直すよう、せつせつと訴えた劇映画。(朝日新聞

 被爆者の問題に無関心な人たちへのひとつの入門編として力作である。(毎日新聞

 広島、長崎に残るなまなましい記録写真を大量に使用し、特に忘れられがちな朝鮮人被爆者や原爆二世問題も取り上げている。(読売新聞)

 人間が人間として生きられる世の中をつくるためにも……。ひとりでも多くの人にみてもらいたい。(24才 看護婦)

 原爆などのおそろしさをまざまざとみせられた。もうこんなきちがいじみたこと(戦争)をしてほしくない。(14才 学生 女性)

 戦争の恐ろしさ、原爆の恐ろしさを教壇の上から一生をとおして語り伝えていくつもりです。(30才 教員 男性)

 他の映画にない感じがしました。言葉では云いあらわせませんが、この気持を大切にしてゆきたいと思います。(19才 保母)

 原爆について知らなかったことを恐ろしいと思う。多くの人が繁栄に酔っているときに闘い続けていた人たちがいたことを知り、感動しました。子供達にぜひ見せたいと思う。(44才 主婦)