zames_makiのブログ

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敵機空襲(1943)防空意識高揚プロパガンダ

米軍機による空襲を描く防空教育映画、防空場面は特撮多用力が入っているが、防空式所など架空、劇部分は演出未熟で退屈、
野村浩将渋谷実吉村公三郎が共同で監督した、アメリカ軍の空襲への備えの重要性を説いた国策映画。隣組の活動に参加しない不動産ブローカー(山路)の留守宅が、空襲時に深刻な被害に合うという教訓的なプロットはあるものの、全体として、松竹大船が得意とした市井の人々の描写が多くを占める。
(88分・35mm・白黒)'43(松竹大船)(監)野村浩将、澁谷實、吉村公三郎(脚)齋藤良輔、武井韶平(撮)齋藤正夫、長岡博之、生方敏夫(美)江坂實、本木勇、森幹男(音)深井史郎(出)河村黎吉、田中絹代、山路義人、若水絹子、雨宮一、信千代、葛城文子、徳大寺伸高峰三枝子上原謙飯田蝶子、坂本武、齋藤達雄

感想

空襲への備えを啓蒙するための教育映画。劇映画の形で感情的・感動的に語られるプロパガンダ映画だが劇部分と教育部分が遊離している事、空襲の様子が空想的で当時としても非現実的で、いわゆるプロパガンダ映画と言うよりむき出しの教育映画と言うべきもの。出演者は実績ある俳優だが脚本と演出まずく劇部分は面白くないし、防空意識も高まらないと思われる。一方空襲部分は米国実写フィルムやミニチュア・セットの使用での米国爆撃機による空襲場面、更に都市炎上場面などかなりリアルで力のはいったものだ。だが侵入敵機情報を集め、空襲警報を発する東日本総合防空司令所のごとき司令室はおそらく、架空のものだろう。ひな壇状に机が配され壁面には電光掲示で東日本の状況が表示、侵入敵機の視認状況も個別に電光表示される。総司令官と防空戦闘機司令官、警戒警報発令担当など、いかにも映画的、映像的な構成になっており、実際には存在しない映画用のセットと推察される。
 物語=下町の隣組の各家庭。引っ越ししてきたばかりのA家は老いた母、戦車工場で作図係の高峰三枝子、その兄がいる。兄は民間船で防空監視任務についている船で無線技士をしている。引っ越しを斡旋したブローカーB家は同じとなり組で、家主ブローカー氏は拝金主義者で隣組活動をさぼっている。その妹は高峰三枝子の友人でかつ、無線技士の恋人だ。C隣組長は米屋の河村黎吉でその可愛い娘が田中絹代だ、D気の良いばあさん飯田蝶子のやる下宿屋の下宿人上原謙は高峰美枝子の戦車工場の技師でもある。E隣組には金持ち地主の齋藤達雄もいるが、隣組集会にはお手伝いしかださない非協力ぶり。
 高峰三枝子の友人は兄のブローカーに金を戻させようとするが兄は言う事を聞かない。無線技士が久しぶりに帰宅し友人である上原謙は呼ばれるが仕事が遅くなり、まま下宿へ帰り、たまたまやってきた田中絹代と良い雰囲気、そこへ高峰秀子がお誘いにきて対決する。隣組集会では空襲への備えが説かれ、各家の防空壕とは別に集会所に避難所(室内床下の防空壕)を作る事になり各家庭に男手を出すよう要請される。これに上原謙は出社前だというのに手伝い、ブローカーや地主はこない。飯田蝶子は賑やかに手伝う。上原謙に見合い話が持ち上がり飯田蝶子が世話する。やがて空襲で侵入5機中4機が撃墜されるが無線技士が敵機射撃で戦死する。これでブローカーは空襲などないと無視。更に空襲で今度は本格的に多くの侵入機、防空監視体制や防空指揮所などの様子が描かれ、防空戦闘機が劇津したり、B17に突っ込んで撃墜したりする。隣組でも空襲、料亭で談合していた金持ちとブローカーは防空壕で震える。一方隣組長は消化に奮戦する。だがブローカーの家が焼け、妻と子が隣組長に助けられる、怪我で寝ている隣組長の側をブローカーが申し訳なさそうにすぎ妻子と再会を喜ぶ。見合い話を進める事となり、それを聞いた田中絹代のいじらしさにやっと飯田蝶子らはきずくのだった。
 物語部分はブローカー氏の拝金の様子と、田中絹代上原謙高峰秀子のうぶな三角関係だけで面白味に欠けるし、演出もあまりに間延びしており退屈だ。隣組活動に地主氏は完全非協力で金一封でかたづけようとしたり、家の前の防空水槽の氷を割るそばをブローカー氏がこっそりにげるなど、あまりに悪役的でつまらぬ。逆に隣組長らはあまりにいい人過ぎるとも言える。

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2/25(火) 1:00pm 3/8(土) 2:00pm 3/12(水) 7:00pm