zames_makiのブログ

はてなダイアリーより移行

ミラル(2010)パレスチナ

2010年/仏・イスラエル・伊・インド/英語/112分/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD 配給=ユーロスペースブロードメディア・スタジオ
監督:ジュリアン・シュナーベル 脚本:ルーラ・ジブリール 原作:ルーラ・ジブリール著「MIRAL」
 出演:フリーダ・ピント、ヒアム・アッバスウィレム・デフォー

…1948年、イスラエル建国宣言の1カ月前のエルサレム。その路上にはユダヤ民兵組織によって親を殺された孤児たち55人の痛ましい姿があった。後にそうした孤児たちのために生涯をささげることになるヒンドゥ・ホセイニは、自身の資産をつぎ込み、やがて3000人を超える孤児たちのホームとなるダール・エッティフル(子どもの家)という学校を創設する。学校には幼い時からヒンドゥの与える愛と教育を受け、未知数の可能性を秘めた少女ミラルがいた。東エルサレムに生きるミラルが、占領下のパレスチナで成長していく様を、ジュリアン・シュナーベル監督は繊細な一枚一枚の花弁を扱うように縒り合せていく。やがてミラルが歩む道は、より大きな歴史という物語をも紡いでいくのだった…。

 「“ミラル”は道端に咲く赤い花。きっと誰もが目にしている」というテロップで幕を開けるこの映画は、1973年・イスラエル生まれのルーラ・ジブリールによる自伝的実話「ミラル」に基づく映画化。無限の可能性を秘めたひとりの少女が過酷な現実に翻弄されながらも逞しく生き抜き、ついには輝かしい未来へと羽ばたいていく姿を映し出す。またミラルとヒンドゥの世代を超えた絆に託されたのは、愛と教育こそが平和への道を切り開くというメッセージ。21世紀の今もまだパレスチナにおける平和は実現していないが、作り手たちの自由と希望の切なる祈りがこもったラスト・シーンは、観る者の心を揺さぶってやまない。

1978年、母親を亡くした7歳の少女ミラルがダール・エッティフェルの門をくぐった。やがて美しくも芯の強い17歳に成長したミラルは、子供たちに勉強を教えるために訪れた難民キャンプで、イスラエル軍に家屋が破壊される衝撃的な光景を目の当たりにする。さらに若き活動家ハーニが掲げる理想に共感した彼女は、急速に政治への関心を強め、イスラエルへの敵対心を抱いていく。しかし、それは恩師ヒンドゥや父親ジャマールの願いを裏切る行為だった。暴力には暴力で対抗すべきか、それとも教育によって平和をたぐり寄せようとするヒンドゥの信念を受け継ぐべきか。あまりにも重い選択を迫られたミラルは、はたしていかなる決断を下すのだろうか……。

上映 ユーロスペース

1700円 期間:2011/08/06〜